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第15話●遭遇

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「プリニー、この馬車凄く乗り心地がいいわね。新型なの?」

レテが急に気がついたみたいに言う。

トラウデは馬車に乗るのは初めてみたいなので違和感がないようだ。

この頃の馬車は車輪は木製で枠状に組まれたフレームに取り付けられている。

客室はフレームにつけられた太い皮の板で吊り下げられている。

一応サスペンションのつもりなんだろうけど左右に揺れるばかりで上下振動は緩和しきれていない。

長距離の移動はなかなかの苦行なのだ。

「いえ、以前から使っている物ですけど、確かに全然揺れませんね?」

何かに気がついたみたいにレテがギドの顔を見る。

「ははーん。ギドね。何をしたの?」

「ああ,ええと。」

「馬車を地面から10cm程浮ぶ様にした?だから揺れない?お馬さんも楽ちんで喜んでいる?何言ってんの?今度うちの馬車にもしてくれる?」

まだ何も言ってないのに。

広大な麦畑の間を通り抜けて森の中を通る。
森に入ると前後を守る冒険者達の緊張感が増すのが感じられる。

盗賊や魔物が出て来ることがあるからね。

ほらね。

カックンと馬車が止まる。
馬車の周囲に弓矢がパタパタと落ちる。
矢は馬車には届かない。
魔法障壁が張ってあるからね。
このまま無視して通り抜けても大丈夫なんだけど冒険者達がバラバラと馬車から降りていく。

「ギド、あんたも出るの?」

レテとトラウデも恐る恐る降りて来る。

「商人と貴族の子供だ。こいつぁいいぜ。」

嬉しそうにしている男の前に転移して立つ。

「な,なんだ急に。」

「おじさんは盗賊なの?」

「ギドがしゃべった!」

レテがびっくりしている。

「どこからどう見ても盗賊だろうが、ガハハ。」

「盗賊は死罪または犯罪奴隷。現場での処刑も認められています。」

ギドが淡々と宣言する。

「何言ってんだおめえ。」

とその盗賊の頭らしい男が言うのと同時に街道の両端に20個ぐらいの穴が並んで掘られた。

そこにたこ焼きの具の様に盗賊達がすこすこと入れられたかと思うと首だけ出して埋められてしまった。

「出せー。」「覚えてろー。」
とか威勢のいい事を言っているけどそのうちに「助けてー。」「なんでもするー。」とか言い出す。

でもあなたがたに襲われた商人達が命乞いした時に助けたことなんてないでしょ?

とりあえず埋めておけば魔物のおやつになったり、通りがかりの人が奴隷として売ってくれるかもしれないね。

涙目になって喚いているおじさんに質問する。

「おじさん達のアジトはどこなのかな?」

「そんな事教えるわけないだろ。」

って言うけどあーんって口を開けさせてニョロニョロする虫を食べさせてあげようとしたらペラペラしゃべった。

ふーん、この虫がなんなのか知っているんだ。

この虫を食べると不死身になるんだ。
ただし身動きは出来ない。
意識があるままこの虫のエサとしてお腹の中から食べられちゃうんだ。
怖いだろ。

本物だったらね。

これはただのミミズ。
それでも食べるの嫌だけど。

街道から外れて森の中に入って行くと低い丘があって洞窟があった。

見つかってしまったみたいで矢がピュンピュン飛んでくる。
障壁にあたって跳ね返るだけだけど。

弓を射っていた盗賊はレテが氷の矢でどんどん始末してしまう。
百発百中だ。

盗賊達は観念したのか洞窟の入り口に集まって盾を立てて槍や剣を構えている。

洞窟の中から女の人や子供が引き出されて来る。

「武器を捨てないとこいつらを殺すぞ。」

とか言っている。

そんな事に効果があると思っているんだ。

盗賊のすぐそばに行って盾に触れると盾は粉々になった。

女の人に突きつけていた剣も同じで砂の様に崩れた。

徐々に盗賊達にパニックが広がって行く。

地面に人数分の穴が開けられる。

洞窟の中にはかなりの盗品と貨幣があった。

法律的にはこれは盗賊を退治した僕達の物。
いいお小遣い稼ぎになった。

人質だった人達はすでに家族や村を失っていた。
この先の街の教会に連れて行く事にした。

一連の事が終って周りを見ると冒険者や商人がポカンとしている。

「何にもしないうちに盗賊を全滅させてしまうなんてこの子は一体なんなの?」

レテが自慢そうに言う。

「オールドマスターウィザード様よ。」

「それはドーナツの一種なのか?」







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