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第9話 帝国
しおりを挟む「はぁっ。あんた、なんて事すんのよ。」
グローヴズ城の謁見の間の大扉を蹴り開けてご来訪です。
この城そんなにやわなセキュリティしてたっけ。
エリミリア様はお怒りです。
お美しい顔が怒りで凛々しくなっておいでです。
侍女の方々がふうふう言っているのでついて来るのが大変だったのでしょう。
「いきなり王家を滅ぼしましたって、後どうすんのよ。」
僕は玉座をエリミリア様に譲り謁見の間で膝まづいている。
「もう、いっそエリミリア様が王様やればいいんじゃないかな。」
ビュッと言って聖杖が飛んでくる。
謹んで受け止める。
怖ーっ。
まともに当たったら死んじゃうからね。
「何言ってんのよ、イヤに決まってるでしょ。面倒くさい。あんたがやる?」
面倒くさいからイヤってまあ僕もイヤだけど
「イヤです。あーっ。勇者はどうかな。」
そっと聖杖をお返しする。
「あーはははっ。あんなバカに出来る訳ないでしょう。でも、王家を滅ぼしたのはあの子のせいにした方が都合がいいわね。悪い王家は勇者が許さないってサマになるし。」
なんかご機嫌が良くなられたご様子で。
「新しい王家を立ち上げて政務をとらせてっと。あんたは腐った貴族を片っ端から駆除していればいいわ。」
言うだけ言って風の様に去っていった。
エリミリア様が扉の向こうに消えるのを待って謁見の間に寝転ぶ。
あーっ疲れた。
転がった僕の周りをネズミ達が走りまわっている。
こいつらエリミリア様が来た途端に人化を解いて、サーっと家具の影に隠れちゃうんだから。
謁見の間の高い天井からパタパタと黒いコウモリが降りてくる。
「アディッサ、帝国の件かい?」
コウモリはポンっと人化して寝転んでいる僕のお腹の上に着地する。
「ぐえっ。何か進展した?」
お腹の上に座ったアディッサは僕の顔を覗き込む様にしてから話し始める。
3匹のネズミ達も人化する。
「表立っては動けないので商人を使って鉱山に圧力をかけているわ。無理な発注をしておいて膨大な違約金をふっかけたり、奴隷にしたり。」
ふーん。それだとまだ商売の範疇を超えないな。
無理な発注を受けるからじゃんとか言われそう。
「貴族からの発注だから断れないって追い詰めるのよ。」
「帝国の貴族が魔国に影響力があるの?」
「どこの貴族だろうと、平民にとっては貴族よ!」
アディッサは不満そうに僕を見る。
「全然乗り気じゃないって感じ、どうしたのよ。腑抜けたの?」
「そう言う訳じゃないけど。」
「ペトロニウス様が来なくても、私はやるわ。暗冥の王 闇の魔法師ペトロニウス・グローヴズ様の名にかけて。」
「あ、待って。」
と言う静止も聞かずにポンっと人化を解いてパタパタとアディッサは飛んで行ってしまう。
「仕方ないな。」
力なく立ち上がる僕をチェリ、ツッピ、テトが不思議そうに見ている。
「暗冥の王腑抜けた、血見てゲロ吐いたぐらいでヘタレた。」
そう言って人化を解いた3匹のネズミもさーっと走ってどこかに行ってしまった。
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