上 下
37 / 50

教会その後 ーアレクー

しおりを挟む
馬車から降りてきた時ルカは随分機嫌良さそうだと思ったんだが違ったのか。
てっきり謝罪がうまく行ったのだとばかり思っていた。

その馬車に今は俺とエリザベス嬢とで乗っている。
エリザベス嬢の足首には包帯。ひねった足はシスターに手当てをしてもらった。

(まるで絵画を目にしているようだな。)
エリザベス嬢を前にそんな事を思う。
しかしこの美しさを表現できる画家はいないだろう。
ルカにも圧倒的王者のオーラを感じるが、また別方向でエリザベス嬢にも圧倒的なオーラを感じる。まあ少し前まで未来の国母だったのだ。ここで俺と膝を突き合わせて馬車に乗っている事がの方が非現実的と言える。

俺は改めて深く謝罪した。
あの一連のセリフは昨日娼館に飲みに行って娼婦絡みのトラブルに巻き込まれた、その時娼婦を庇ったルカに向かって酔っ払いが言った言葉だ。
そいつはよその領地の貴族だったがお茶会のトラブルを知っていてエリザベス嬢のことも罵倒したのだ。
その時言われた言葉とアメリア様に何度も釘を刺された言葉。めちゃくちゃに繋いだくせにちゃんと意味が通った言葉になってしまっていた。
優秀なのか馬鹿なのか。

今日の場面は客観的に見ても教皇がエリザベス嬢をお支えしてるようにしか見えなかった。

ルカはリズ嬢に抱く感情は苦手意識だと思っている。
初めての感情にパニックになったんだろうな。
それ嫉妬だよ。

ルカはあんな事は思っていない、そうエリザベス嬢に言いたいがどう伝えればいいのか。
ルカは初恋に気付かず戸惑っているのです?24歳だぞ‥

「誤解を招く行動だったことは分かっています。私が悪いのです。下手な説明をしてしまってルシアーノ様を怒らせてしまいました。なのでルシアーノ様もつい言いすぎてしまったのでしょう。私は本気にはしておりません。ですので‥」
そこまで言うとそのあとが続かない様子だった。エリザベス嬢の唇からは息だけが漏れた。
エリザベス嬢は少し困ったように微笑むと黙り込んでしまった。

思わず目を背けてしまう。
17歳の御令嬢が筆頭公爵家として王族命令を全うしようとしている。
そしてこんな事は些事だと。

胸が痛くなった。
許してくれている寛容さにいたたまれなくなった。

ルカ、本当お前何やってるんだよ。

でも俺も甘かった。
この日のことを詳しくアメリア様に報告しなかった。
すれば厳しいアメリア様のことだ。
あんな娼婦に浴びせるような暴言を公爵令嬢にはいたルカを許さないだろう。
もちろんこちらの瑕疵として公爵家と何らかの話をつけるに違いない。
そうなればエリザベス嬢を王都に帰す算段がつく可能性も高い。

初めての恋に戸惑っている幼馴染を応援したかった。
エリザベス嬢の寛容さにあぐらをかくような行為だとわかっていた。

でもいい歳して初恋を経験するとここまで拗らせるとは思わなかったんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜

白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。 たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。 そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…? 傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。 *少しでも気に入ってくださった方、登録やいいね等してくださるととっても嬉しいです♪*

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

【完結】婚約破棄!! 

❄️冬は つとめて
恋愛
国王主催の卒業生の祝賀会で、この国の王太子が婚約破棄の暴挙に出た。会場内で繰り広げられる婚約破棄の場に、王と王妃が現れようとしていた。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

元王妃は時間をさかのぼったため、今度は愛してもらえる様に、(殿下は論外)頑張るらしい。

あはははは
恋愛
本日わたくし、ユリア アーベントロートは、処刑されるそうです。 願わくは、来世は愛されて生きてみたいですね。 王妃になるために生まれ、王妃になるための血を吐くような教育にも耐えた、ユリアの真意はなんであっただろう。 わあああぁ  人々の歓声が上がる。そして王は言った。 「皆の者、悪女 ユリア アーベントロートは、処刑された!」 誰も知らない。知っていても誰も理解しない。しようとしない。彼女、ユリアの最後の言葉を。 「わたくしはただ、愛されたかっただけなのです。愛されたいと、思うことは、罪なのですか?愛されているのを見て、うらやましいと思うことは、いけないのですか?」 彼女が求めていたのは、権力でも地位でもなかった。彼女が本当に欲しかったのは、愛だった。

傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ

悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。 残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。 そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。 だがーー 月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。 やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。 それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。

〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。

藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。 但し、条件付きで。 「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」 彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。 だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全7話で完結になります。

【完結】あなただけがスペアではなくなったから~ある王太子の婚約破棄騒動の顛末~

春風由実
恋愛
「兄上がやらかした──」  その第二王子殿下のお言葉を聞いて、私はもう彼とは過ごせないことを悟りました。  これまで私たちは共にスペアとして学び、そして共にあり続ける未来を描いてきましたけれど。  それは今日で終わり。  彼だけがスペアではなくなってしまったから。 ※短編です。完結まで作成済み。 ※実験的に一話を短くまとめサクサクと気楽に読めるようにしてみました。逆に読みにくかったら申し訳ない。 ※おまけの別視点話は普通の長さです。

処理中です...