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王都では ーアウリス王子ー
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「お前は一体どう言うつもりだったのだ?アウリス」
王の執務室に呼ばれたアウリス王子が王の前に立っている。
「ですから申し上げたではないですか。ただの余興ですよ。父上はご存知ないかもしれませんが、今下位貴族や市井では悪役令嬢断罪ものと呼ばれるジャンルの劇や小説が大流行りなのです。生徒も皆わかっていますよ。」
じっと王子を見据えて
「その悪役令嬢というのはエリザベス嬢のことか?」
と王が言うと
グッと王子は口ごもる。
「エリザベス嬢は北の辺境に行く事となったよ。もちろん近日中に。供もつけずにな。」
「どうして!?あれはただの余興です!婚約破棄など考えてはいません!」
弾かれたように大きな声を出す王子を王は見据えたままだ。
そしてゆっくりと口を開いた。
「どうして?本当にわからないか?アウリスよ」
王の自分を見据える眼差しに耐えられなくなったように視線を逸らしてしまった。
「婚約は正式に破棄された。」
ハッとしたようにアウリスは王を見る。
「そしてお前の立太子もなくなったよ、アウリス」
「!!」
アウリスは冷水を浴びせかけられた気分だった。
じわじわと頭が冷えていく。
王はすっかり夢から覚めた王子の様子を確認し頷くと改まったようにいう。
「アウリス第一王子、処分が決まるまで離宮での謹慎を言い渡す。何か言いたいことがあるなら聞こう。」
「‥ジョージィはどうなりますか」
「王家の婚約に横槍を入れたのだ。男爵家ともども処分が決まるまで謹慎だ。だがおそらく男爵家は取り潰しになるだろうな」
「ですからあれは‥本当に余興で‥‥」
すがるように王子はつぶやく。
王は大きくため息まじりに
「余興だと言うならエリザベス嬢にも話しておくべきだった。
王家主催のパーティでやるべきではなかった。軽々しく王族命令など言うべきではなかった」
そこまで言うと王はふと目に愉しげな色を浮かべる。
「それにしてもなるほど断罪劇というのは本当に流行っているらしいな。
たった一日で貴族社会はもちろん、市井にまで王子が公爵令嬢を演劇と同じように断罪し婚約破棄をしたという噂が面白おかしく広まっているらしいぞ。」
王子は青ざめた顔をさらに白くさせた。
そんな王子の顔を見て王は小さくため息をつく。
「余興で済む時期はとっくに過ぎた。」
パーティが終わるまでなら、あるいは。
いや、無理か。
ふと浮かんだ考えを振り払うかのように王はゆっくりかぶりをふる。
王は小さく息を吐くと「離宮でしっかりと頭を冷やすがいい。」と静かに告げた。
「承知しました」
すっかり俯いてしまった王子が絞り出すように答えた。
王の執務室に呼ばれたアウリス王子が王の前に立っている。
「ですから申し上げたではないですか。ただの余興ですよ。父上はご存知ないかもしれませんが、今下位貴族や市井では悪役令嬢断罪ものと呼ばれるジャンルの劇や小説が大流行りなのです。生徒も皆わかっていますよ。」
じっと王子を見据えて
「その悪役令嬢というのはエリザベス嬢のことか?」
と王が言うと
グッと王子は口ごもる。
「エリザベス嬢は北の辺境に行く事となったよ。もちろん近日中に。供もつけずにな。」
「どうして!?あれはただの余興です!婚約破棄など考えてはいません!」
弾かれたように大きな声を出す王子を王は見据えたままだ。
そしてゆっくりと口を開いた。
「どうして?本当にわからないか?アウリスよ」
王の自分を見据える眼差しに耐えられなくなったように視線を逸らしてしまった。
「婚約は正式に破棄された。」
ハッとしたようにアウリスは王を見る。
「そしてお前の立太子もなくなったよ、アウリス」
「!!」
アウリスは冷水を浴びせかけられた気分だった。
じわじわと頭が冷えていく。
王はすっかり夢から覚めた王子の様子を確認し頷くと改まったようにいう。
「アウリス第一王子、処分が決まるまで離宮での謹慎を言い渡す。何か言いたいことがあるなら聞こう。」
「‥ジョージィはどうなりますか」
「王家の婚約に横槍を入れたのだ。男爵家ともども処分が決まるまで謹慎だ。だがおそらく男爵家は取り潰しになるだろうな」
「ですからあれは‥本当に余興で‥‥」
すがるように王子はつぶやく。
王は大きくため息まじりに
「余興だと言うならエリザベス嬢にも話しておくべきだった。
王家主催のパーティでやるべきではなかった。軽々しく王族命令など言うべきではなかった」
そこまで言うと王はふと目に愉しげな色を浮かべる。
「それにしてもなるほど断罪劇というのは本当に流行っているらしいな。
たった一日で貴族社会はもちろん、市井にまで王子が公爵令嬢を演劇と同じように断罪し婚約破棄をしたという噂が面白おかしく広まっているらしいぞ。」
王子は青ざめた顔をさらに白くさせた。
そんな王子の顔を見て王は小さくため息をつく。
「余興で済む時期はとっくに過ぎた。」
パーティが終わるまでなら、あるいは。
いや、無理か。
ふと浮かんだ考えを振り払うかのように王はゆっくりかぶりをふる。
王は小さく息を吐くと「離宮でしっかりと頭を冷やすがいい。」と静かに告げた。
「承知しました」
すっかり俯いてしまった王子が絞り出すように答えた。
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