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第10話 全裸になってさようなら!?

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俺はログアウトされた画面を呆然と見つめていた。

頭の中は大混乱している。

どうしてルビアはあんなこと(四天王抹殺)をした?
それ以前になぜ勝手に行動した?
どうして運営の戦闘ドローンは俺を狙った?
そしてルビアが俺を助けた理由は?

まだまだわからないことだらけであった。

俺は気を取り直して再ログイン。
すると…

「あなたは TAKIDAN ONLINE にて重大なルール違反を犯した為、現時点を持って永久追放となりました」

「は!?」

俺は腰が砕けた。

「どうしてだよ! 確かに報告しないのは悪かったけど資産回収どころかいきなりBANするなんて!」

確かに俺は重課金勢なので運営も貴重なお客様(金蔓)を簡単に切らないだろうとタカを括っていた。
それにしてもこの唐突な… しかも永久追放なんてあまりにも酷いじゃないか!

いや待て待て。
こういう時こそ冷静な判断が必要だ。

俺は自分にそう言い聞かせながら震えが止まらない手で別アカウントからのログインを試した。

この別アカウントはゲームを始めた頃に作ったもので、お試し体験用の仮アカウントだった。
仮アカウントなのでチュートリアルしかプレイできない代わりに、個人情報には全く紐ついていない為、今でもログイン自体は可能なはずだ。
このアカウントでログインできたとしてもルビアや俺の資産が戻るわけではないが、ゲームの現状くらいはわかるだろう。

震える手でログインを試したところ、今度は何事もなかったかのようにログイン成功。

*夢と希望と冒険いっぱいのファンタジー世界へようこそ!*

体験者向けオープニング画面がこれほど皮肉に見えたのは初めてだった。
急いでゲーム内新着ニュースコーナーを見ると、とんでもないニュースのオンパレードになっていた。

*新着ニュース一覧*

「魔族四天王がプログラムレベルで破壊され、全員復旧不可能」

「魔王城は未知のプログラム攻撃により炎上中、大魔王にも被害拡大の恐れ」

「犯人は半年前にカタストロフ級兵装を没収されたプレーヤーAと断定、動機は逆恨みによる犯行」

「事件発生時の魔王城にてプレーヤーA と魔王ルビアが目撃される」

「プレーヤーA は I T 業種に携わっており、その技量を悪用し魔王ルビアをハッキングして攻撃に利用」

「現時点で魔王ルビアは再び行方不明。原因はプレーヤーAのハッキング操作による隠匿と思われる」

「運営は本件の重大性に鑑み、今後法的手段に訴える構え」


俺は真っ青になっていた。
血の気が引くという感覚を初めて味わった気がする。

嘘だろ、こんなの!?
なんでいつの間に俺が悪のハッカーにされてんだよ!?
嘘だ!嘘だこんなの!!
いやどうしてこうなった!?

もう俺の頭は限界だった。
これじゃ半年前と同じ、いやそれ以上に最悪だ。
パンツ一丁どころじゃない。
全裸になってさようならだ!!

うっかり魔王ルビアを手に入れて着せ替え遊びでヘラヘラ喜んでいたらあっという間に凄い地獄だ。
いや現実に訴えられるとか地獄以上じゃないか。

俺が築いてきた TAKIDAN の世界、俺だけの居場所、その為に注いだ俺の全身全霊(とお金)。
それらが吹っ飛んだだけじゃなく、俺、マジの罪人になっちまうよ。
そうなったら社会から抹殺されたも同然に…!!

なんでこんなことになってんだ!?
愚かで最低最悪なのはせめてゲームの中だけにしてくれよ?

「ははは… 」

力無く笑った後、俺はフラフラと立ち上がった。
そして玄関へと向かった。

もうとにかく今はこの部屋にいたくない。
せめて… せめて外の空気を吸いたい。

そして少しでも落ち着いて考えたい。

狭い玄関でサンダルを適当に履いた。
なんか左右別々のサンダルを履いてしまったがもうどうでもよかった。

施錠を外し薄汚れた玄関ドアを開けて外に踏み出す。
ここは賃貸アパートの二階なので見晴らしがちょっとだけ良い。
そして夕陽が眩しい。

俺はそのまま、夕日に照らされてキラキラ光っている錆びかかった金属階段に向かった。
そこが一番見晴らしが良いから…

ダァああああああああ!!!

左右別々のサンダルを中途半端に履いた俺の足はもつれて身体ごと宙に浮かんだ。
いやこれは浮かんだのではない。
見事に二階から落下している最中なのだ。

風景がスローモーションとなり走馬灯のように映像が脳裏に浮かぶ。

「あぁ、人間は生命の危機を感じると脳の処理速度が高速化して周囲の状況は逆に遅延している様に感じる傍ら、過去の経験データから危機を脱出するヒントを取り出そうと脳のデータベースに猛烈に高速アクセスを行うという現象があると聞いたが、今まさに自分に発生しているこの走馬灯現象のことを指していたのか(超早口)」

そしてなぜか走馬灯の最後の映像は魔王ルビアのゆっくりと揺れる胸だった。

「あぁ なんて素晴らしい物理計算の賜物なんだ」

次の瞬間、鈍い衝撃音と共に走馬灯の再生は唐突に終了した。
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