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王女は婚約者に捨てられる
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「ふぅ、今日はこんなところか。」
体長はおおよそ20m、熊のような見た目をしていたそれが首を落とされた状態で転がっている。
「ん-、そろそろ闇魔法の練度も最高到達点までいったかな。」
「君、まだ魔法が成長するのか?」
「もうそろそろ成長しなくなるだろうね。そしたら次は合成魔法よ!」
高らかに宣言する女の紫の長い髪が風に靡く。その風は彼女を祝福しているようにも、恐れているようにも見えた。
───────────────────────────────────
私─エマ・メロディスはアガラム王国の王女である。幼い頃から可愛がられ、守られ、愛され、育った…と言いたいところだがそうではない。
私には魔法の才能があった。本来ならば10歳で発現するはずの魔力が生まれた時からあった。その魔法は水。
生まれたばかりの私は魔力を制御することが出来ずに、泣くと同時に雨を降らせていたらしい。
これだけでは、神から愛された子と言われ崇められていた。
しかし状況は一変する。
なんと生後二か月で土魔法が使えるようになっていたのだ。
それだけでは神童であった。のだが...。
1歳になる頃には、炎・水・土・風・光・闇というこの世にある全ての魔法が使えるようになってしまった。
流石に国民らも恐れて、王宮内では魔物の子だと言われるようになった。
もちろんそんな子供を外に出すわけにもいかず、私は6歳になるまで外に出たことがなかった。
その間に何をしていたかというと、魔法に関する本をひたすらに読んだ。
都合が良いことに、私には魔術への興味心が人一倍あった。
そのおかげで魔法が沢山使えることは本当に嬉しかった。
周りに何を言われようとも私が私の能力を気に入っていたのだ。
王宮にある魔法に関する本を全て読破した後には、この知識を使って実戦を積みたいと考えるようになっていった。
そうして私は父である国王に直談判をした。
「お父様、私は自分の魔法を強くしたいのです。」
「何を馬鹿なことを...。それよりもお前に縁談が来ているぞ。」
私のお願いは軽くスルーされてしまった。
当時の私は縁談などに興味が無くて、さっさと断ってしまおうと考えていた。
しかし…
「初めまして、マルコ・ジャルトンと申します。」
「え、は、はじめまして...。」
私は一瞬で一目惚れしてしまった。
そこからはマルコ様に嫌われないように、魔法に興味が無くなり恋する乙女のようにマルコ様に尽くしてきた。
しかしそれは表向きの私だ。
実際に一目惚れしたし、尽くした。か弱い女性を演じた。
けれど私の魔法への関心は止まることを知らなかった。
私は夜な夜な無断で王宮を抜け出して、近くにある森の奥へ行き、ひたすらに魔物退治をした。
日々魔法の練度が上がっていくのを感じて高揚した。
──このマルコ様に尽くし、魔法を極める日々は15歳の誕生日に突然終わりを告げる。
「エマ、君にはがっかりだ。まさか自分の魔法を強くしていたなんて。野蛮な人だとは知らなかった。」
「どうして、知って…」
「わたくしが教えたのよ。お姉様が危ないと思って...。」
すすり泣く私の妹─ライカ・メロディスの肩をマルコ様は抱きしめる。
その光景だけで私は何もかも理解してしまった。
私より5歳下のライカは私のことが嫌いだった。
理由は一切わからない。
親から愛されていたのは彼女だったし、国民から愛されていたのも彼女だった。
噂では、彼女が国を背負うとまで言われるほどだった。
そんな子がどうして私を恨むのかは知る由もない。
分かるのは誰にもバレていなかったはずの実戦を知っていて、マルコ様にチクったこと。
「君とは婚約することはできない。僕はライカと結婚することにした。」
「お姉様ごめんなさいね。でもわたくし、マルコ様と幸せになるわ。」
まるで味方面をしているが、彼を奪ったのは十中八九あの妹である。
しかし、私に非がありすぎるため何も言うことが出来ずに眠りにつくことしかできなかった。
───────────────────────────────────
その翌日、私は王宮を追放された。
おおよそ妹が『私が怖い』と両親に言ったのだろう。
あっという間に王宮を追い出され、私は今下町の路地裏に腰を下ろしている。
「雨が降って来たな...。」
さて、これからどうしようか。
体長はおおよそ20m、熊のような見た目をしていたそれが首を落とされた状態で転がっている。
「ん-、そろそろ闇魔法の練度も最高到達点までいったかな。」
「君、まだ魔法が成長するのか?」
「もうそろそろ成長しなくなるだろうね。そしたら次は合成魔法よ!」
高らかに宣言する女の紫の長い髪が風に靡く。その風は彼女を祝福しているようにも、恐れているようにも見えた。
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私─エマ・メロディスはアガラム王国の王女である。幼い頃から可愛がられ、守られ、愛され、育った…と言いたいところだがそうではない。
私には魔法の才能があった。本来ならば10歳で発現するはずの魔力が生まれた時からあった。その魔法は水。
生まれたばかりの私は魔力を制御することが出来ずに、泣くと同時に雨を降らせていたらしい。
これだけでは、神から愛された子と言われ崇められていた。
しかし状況は一変する。
なんと生後二か月で土魔法が使えるようになっていたのだ。
それだけでは神童であった。のだが...。
1歳になる頃には、炎・水・土・風・光・闇というこの世にある全ての魔法が使えるようになってしまった。
流石に国民らも恐れて、王宮内では魔物の子だと言われるようになった。
もちろんそんな子供を外に出すわけにもいかず、私は6歳になるまで外に出たことがなかった。
その間に何をしていたかというと、魔法に関する本をひたすらに読んだ。
都合が良いことに、私には魔術への興味心が人一倍あった。
そのおかげで魔法が沢山使えることは本当に嬉しかった。
周りに何を言われようとも私が私の能力を気に入っていたのだ。
王宮にある魔法に関する本を全て読破した後には、この知識を使って実戦を積みたいと考えるようになっていった。
そうして私は父である国王に直談判をした。
「お父様、私は自分の魔法を強くしたいのです。」
「何を馬鹿なことを...。それよりもお前に縁談が来ているぞ。」
私のお願いは軽くスルーされてしまった。
当時の私は縁談などに興味が無くて、さっさと断ってしまおうと考えていた。
しかし…
「初めまして、マルコ・ジャルトンと申します。」
「え、は、はじめまして...。」
私は一瞬で一目惚れしてしまった。
そこからはマルコ様に嫌われないように、魔法に興味が無くなり恋する乙女のようにマルコ様に尽くしてきた。
しかしそれは表向きの私だ。
実際に一目惚れしたし、尽くした。か弱い女性を演じた。
けれど私の魔法への関心は止まることを知らなかった。
私は夜な夜な無断で王宮を抜け出して、近くにある森の奥へ行き、ひたすらに魔物退治をした。
日々魔法の練度が上がっていくのを感じて高揚した。
──このマルコ様に尽くし、魔法を極める日々は15歳の誕生日に突然終わりを告げる。
「エマ、君にはがっかりだ。まさか自分の魔法を強くしていたなんて。野蛮な人だとは知らなかった。」
「どうして、知って…」
「わたくしが教えたのよ。お姉様が危ないと思って...。」
すすり泣く私の妹─ライカ・メロディスの肩をマルコ様は抱きしめる。
その光景だけで私は何もかも理解してしまった。
私より5歳下のライカは私のことが嫌いだった。
理由は一切わからない。
親から愛されていたのは彼女だったし、国民から愛されていたのも彼女だった。
噂では、彼女が国を背負うとまで言われるほどだった。
そんな子がどうして私を恨むのかは知る由もない。
分かるのは誰にもバレていなかったはずの実戦を知っていて、マルコ様にチクったこと。
「君とは婚約することはできない。僕はライカと結婚することにした。」
「お姉様ごめんなさいね。でもわたくし、マルコ様と幸せになるわ。」
まるで味方面をしているが、彼を奪ったのは十中八九あの妹である。
しかし、私に非がありすぎるため何も言うことが出来ずに眠りにつくことしかできなかった。
───────────────────────────────────
その翌日、私は王宮を追放された。
おおよそ妹が『私が怖い』と両親に言ったのだろう。
あっという間に王宮を追い出され、私は今下町の路地裏に腰を下ろしている。
「雨が降って来たな...。」
さて、これからどうしようか。
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