1 / 46
チュートリアル
この子の顔、推しのらむねちゃんにそっくりすぎる!
しおりを挟む
「はぁ…疲れた…」
やっとの思いで帰宅した私はソファに倒れ込んだ。
社会人1年目。志望していた大手菓子メーカーの営業職に就けたものの、全国転勤族。新生活は地元から800キロも離れたこの場所で始まった。慣れない仕事に新しい人間関係。話し相手になってくれる両親も友達もいない。毎日朝早くに出勤して、真っ暗なこのワンルームに帰ってくる。心も体も擦り切れるみたいだ。
そんな生活の中でも私の支えとなるものが1つだけある。
私はスマホアプリを起動させた。
『アイドルバトル フレッシュガールズ!』
女の子の可愛らしい声が鳴る。
ロードが終わるとホーム画面には銀髪ハーフツインテールの女の子が現れた。
『お疲れ様。らむねはもう眠くなってきちゃったよ。』
「らむちゃん…!今日も可愛いっ…!」
そう。私の支えはアイドル育成リズムゲーム『アイドルバトル フレッシュガールズ』の推しキャラ、小鳥遊らむねちゃん(通称:らむちゃん)を愛でること。
「今週一週間、仕事頑張ったから、10連ガチャ引いちゃうもんね!えいっ!」
ボタンを押すと、画面に10枚の扉が映し出された。9枚は白色の扉、1枚は金色の扉。
「金色!これはSSランクカードが出るかも…!」
白色はAランクのノーマルカード、金色はSランクかSSランクのレアカードが出る。
白色の扉が次々と開き、様々なキャラクターのノーマルカードが映し出される。残すは金色の扉、一枚のみ。
「こい!らむちゃんのSSランク!」
金色の扉だけは演出が少し違う。ゆっくりと扉が開き、キャラクターの自室が一瞬映る。
「ベッドの上に乳酸菌のぬいぐるみ…らむちゃんの部屋だ!」
高鳴る気持ちを抑え、カードが映し出されるその瞬間を待つ。カードが映し出された…
「くっ…らむちゃんのSSランクカード…でも持ってるやつ!」
悔しさを噛み締める。私はアプリを閉じた。
「はぁ、楽しかった…さて、とっととシャワー浴びて今日の仕事の復習でもしますか!」
これが私の日常。推しキャラに癒してもらうことで日々の仕事もちょっと寂しい新生活も頑張っていける。
推しはいつでもそばにいてくれるけど、決して触れ合うことのできない存在。そう思っていた。
今日は土曜日。金曜日は夜更かしする分、土曜日は思う存分寝て、起きたら湯船に入る。平日はシャワーで済ましちゃうけど、休日くらいはゆっくり湯船に浸かりたい。
「ふぅ。温まったー…」
頭にタオルを巻き、グレーのスウェットに着替える。二十代前半の女子って、もこもこのルームウェアとか着るのかな…。あー、やめやめ。誰に見せるわけでもないし、同じお金なら推しに貢いだ方が心も満たされるってもんよ。…こんな考えだから何年も彼氏できないのか。
冷凍庫からバニラアイスを取り出し、それを持ってベッドに寝転がる。そして枕元に投げてあったスマホを手繰り寄せ、アプリを起動させる。
『らむねはこれからダンスの練習だ!一緒に頑張ろ!』
そこでアイスを一口。
「くぅぅー…!」
ぽかぽかの体に冷たいアイス。そして大好きなゲーム。まさに休日の贅沢だ。
その時、玄関のチャイムが鳴った。なんか頼んだっけかな?
「はーい!」
ドアを開けるとそこには男の子の姿があった。
「初めまして。隣の部屋に引っ越してきた倉橋斗真です。よろしくお願いします。」
「え…」
思わず声が出た。だって…この子の顔、推しのらむねちゃんにそっくりすぎる!
「あの…?」
男の子が不思議そうな顔をしてる。
「あ…はい!こちらこそよろしくお願いします!」
扉を閉めてからも興奮が冷めない。そんな、あのスーパー美少女のらむねちゃんとそっくりな人が現実に存在するなんて…しかも男子!
あー…あの子はあんなに可愛らしいお顔で今までどうやって生きてきたんだろ。そんな子が隣の部屋に引っ越してくるなんて、愛ゆえの奇跡か。
「髪型とかをいじれば完璧なのにな…」
…それだ!あの子にらむねちゃんのコスプレをしてもらえば、リアルらむねちゃんが誕生するのでは?らむねちゃんのコスプレセットは一式揃っている。あの子は線が細いみたいだったし、身長もそれほど高くないからきっと着られるだろう。
「あの子と仲良くなってコスプレしてもらう。私の手でらむねちゃんを現実世界に生み出すんだ…!」
興奮状態だった私はそう決意した。
やっとの思いで帰宅した私はソファに倒れ込んだ。
社会人1年目。志望していた大手菓子メーカーの営業職に就けたものの、全国転勤族。新生活は地元から800キロも離れたこの場所で始まった。慣れない仕事に新しい人間関係。話し相手になってくれる両親も友達もいない。毎日朝早くに出勤して、真っ暗なこのワンルームに帰ってくる。心も体も擦り切れるみたいだ。
そんな生活の中でも私の支えとなるものが1つだけある。
私はスマホアプリを起動させた。
『アイドルバトル フレッシュガールズ!』
女の子の可愛らしい声が鳴る。
ロードが終わるとホーム画面には銀髪ハーフツインテールの女の子が現れた。
『お疲れ様。らむねはもう眠くなってきちゃったよ。』
「らむちゃん…!今日も可愛いっ…!」
そう。私の支えはアイドル育成リズムゲーム『アイドルバトル フレッシュガールズ』の推しキャラ、小鳥遊らむねちゃん(通称:らむちゃん)を愛でること。
「今週一週間、仕事頑張ったから、10連ガチャ引いちゃうもんね!えいっ!」
ボタンを押すと、画面に10枚の扉が映し出された。9枚は白色の扉、1枚は金色の扉。
「金色!これはSSランクカードが出るかも…!」
白色はAランクのノーマルカード、金色はSランクかSSランクのレアカードが出る。
白色の扉が次々と開き、様々なキャラクターのノーマルカードが映し出される。残すは金色の扉、一枚のみ。
「こい!らむちゃんのSSランク!」
金色の扉だけは演出が少し違う。ゆっくりと扉が開き、キャラクターの自室が一瞬映る。
「ベッドの上に乳酸菌のぬいぐるみ…らむちゃんの部屋だ!」
高鳴る気持ちを抑え、カードが映し出されるその瞬間を待つ。カードが映し出された…
「くっ…らむちゃんのSSランクカード…でも持ってるやつ!」
悔しさを噛み締める。私はアプリを閉じた。
「はぁ、楽しかった…さて、とっととシャワー浴びて今日の仕事の復習でもしますか!」
これが私の日常。推しキャラに癒してもらうことで日々の仕事もちょっと寂しい新生活も頑張っていける。
推しはいつでもそばにいてくれるけど、決して触れ合うことのできない存在。そう思っていた。
今日は土曜日。金曜日は夜更かしする分、土曜日は思う存分寝て、起きたら湯船に入る。平日はシャワーで済ましちゃうけど、休日くらいはゆっくり湯船に浸かりたい。
「ふぅ。温まったー…」
頭にタオルを巻き、グレーのスウェットに着替える。二十代前半の女子って、もこもこのルームウェアとか着るのかな…。あー、やめやめ。誰に見せるわけでもないし、同じお金なら推しに貢いだ方が心も満たされるってもんよ。…こんな考えだから何年も彼氏できないのか。
冷凍庫からバニラアイスを取り出し、それを持ってベッドに寝転がる。そして枕元に投げてあったスマホを手繰り寄せ、アプリを起動させる。
『らむねはこれからダンスの練習だ!一緒に頑張ろ!』
そこでアイスを一口。
「くぅぅー…!」
ぽかぽかの体に冷たいアイス。そして大好きなゲーム。まさに休日の贅沢だ。
その時、玄関のチャイムが鳴った。なんか頼んだっけかな?
「はーい!」
ドアを開けるとそこには男の子の姿があった。
「初めまして。隣の部屋に引っ越してきた倉橋斗真です。よろしくお願いします。」
「え…」
思わず声が出た。だって…この子の顔、推しのらむねちゃんにそっくりすぎる!
「あの…?」
男の子が不思議そうな顔をしてる。
「あ…はい!こちらこそよろしくお願いします!」
扉を閉めてからも興奮が冷めない。そんな、あのスーパー美少女のらむねちゃんとそっくりな人が現実に存在するなんて…しかも男子!
あー…あの子はあんなに可愛らしいお顔で今までどうやって生きてきたんだろ。そんな子が隣の部屋に引っ越してくるなんて、愛ゆえの奇跡か。
「髪型とかをいじれば完璧なのにな…」
…それだ!あの子にらむねちゃんのコスプレをしてもらえば、リアルらむねちゃんが誕生するのでは?らむねちゃんのコスプレセットは一式揃っている。あの子は線が細いみたいだったし、身長もそれほど高くないからきっと着られるだろう。
「あの子と仲良くなってコスプレしてもらう。私の手でらむねちゃんを現実世界に生み出すんだ…!」
興奮状態だった私はそう決意した。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
この度、青帝陛下の番になりまして
四馬㋟
恋愛
蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。
ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する
黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。
だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。
どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど??
ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に──
家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。
何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。
しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。
友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。
ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。
表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、
©2020黄札
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる