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つい……
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「はぁ……」
なんだか疲れた。ジキウスのおかげで国外追放の件の背景が分かったけど、高圧的で強引なところが困る。
今日はアリスに美味しい紅茶を入れてもらって癒されよう。それならどこかでお茶菓子を買って帰ろうかな。
私は街へ寄り道をして、見つけたカフェでお菓子を購入した。
街から家へ向かって歩いていたら、道に迷った。
「あ、れ……?」
お店が立ち並ぶ街並みは終わり、いつの間にか湖のほとりに出ていた。人気はなく、道を尋ねられそうな家やお店ももちろんなかった。
一旦学園に戻ってからいつもの帰り道を行くよりも直接家を目指した方が早いなんて、楽しようとした自分が馬鹿だった……街になんて数えるくらいしか行ったことないし、自分の地理的センスを買い被り過ぎた。
「とりあえず、来た道を戻ってみるか……」
「お前……俺を笑いに来たのか!」
その声、嫌な予感がする。恐る恐る声の方を向くと、湖畔の木の陰にレイが立っていた。眉を吊り上げて私を睨みつけている。
「いや、ここに来たのはたまたまで……」
「嘘つけ! 俺の後をつけてきたに決まってる! そうじゃなかったらこんな人気のない場所に来るのはおかしい!」
そう言われても、道に迷っただけなんだよなぁ……
レイはふっと息を吐いて、自嘲気味に笑った。
「笑いたいなら笑えばいいさ。千載一遇のチャンスを潰した俺に、帰る場所なんてない。父さんも母さんも、兄さん達も、きっと俺に失望してる。出来損ないの三男なんて、生まれてこなきゃよかったんだって……!」
そう言ってレイは目元をぬぐった。
「何もそこまで言わなくたって……」
「お前に何が分かる!」
「分かるよ」
レイ・ランス、14歳。飛び級で学園に入学したため、エマ達と同じ1年生。8つ年上のロム、5つ年上のシルを兄に持つ。ロムとシルも過去に飛び級で学園に在籍しており、首席で卒業した。近い将来、王政で重要な役職を与えられると噂されている。レイも優秀ではあるが、兄達ほどの飛びぬけた才能はなく、劣等感を抱えて育った。
段々と思い出してきた。君の半生は見てきたからよく知っているよ(ゲームのシナリオで)。
「そうか、お前も名家の重圧を受けて生きてきたんだもんな……」
レイは納得したように言った。
「でも、俺に帰る場所がない事は変わらない。分かるだろ? 出来損ないには生きる価値がないって。兄さん達が失望した顔なんて、見たくないんだよ……」
「お兄さん達は君を出来損ないだなんて思ってないよ。今回の件もお父さんやお兄さんから指示された訳じゃないでしょ?」
「え……?」
レイは目を丸く見開いた。
ゲームでもレイがランス家再興のために裏工作をするシナリオがあった。レイ編のシナリオにエマは出てこないから裏工作の内容も今回とは違うけど、指示されて実行したレイが作戦に失敗して絶望するところは同じだ。恐らくそれ以外も。
「指示してきた父方のおじさんは、競合するリーステン家を没落させる作戦を実行するために君を洗脳していたんだ。この作戦を実行しなければ家は没落するって何度も刷り込んで君を実行に向かわせた。成功すれば自分の手柄、失敗すれば君の責任にするつもりだったんだ。今回の件はおじさんが勝手にやったことで、お兄さん達は何も知らなかった。きっと今頃、事態を知って君を心配しているよ」
「そんな……だって……」
「お兄さん達は君を過酷な政治競争に巻き込みたくなくて、離れさせようとしていたんだよ。お兄さん達に仕事の話を聞いてもはぐらかされた覚えあるでしょ? 君は自分が出来損ないだから話してくれないんだと思ったかもしれないけど、お兄さん達は話を聞いた君が巻き込まれるのを防ぐためにあえて言わなかったんだよ。お互いに本心を言わないせいでここまでこじれちゃったんだけど」
レイは驚いたように私を見つめていた。
あ……これは余計なことまで言い過ぎたかも。
「いや、あの、これはあくまで私の想像というか……」
「すごい……そんな風に考えたことなかった」
本来のシナリオであれば、作戦に失敗して落ち込んだレイを主人公のリアナが慰めてあげて、レイは家に帰る決心をする。それでお兄さん達と話し合って誤解が解けたレイは、支えてくれた主人公に恋心が芽生えるという流れだ。
これって、もしかして私がレイのことを攻略しちゃってるんじゃない? いや、まさかね……
「さっきの話は忘れて! 私、帰るから!」
「待って!」
そう言ってレイに袖を掴まれた。
「今回のこと、本当に悪かった。まだちゃんと謝ってなかったから」
そう言って真っ直ぐに私を見つめる瞳には、はっきりとしたレイの意思が感じられた。
「いくら家のためだとしても、相手を陥れるようなやり方はするべきじゃなかった。次は自分自身の能力で周りに認められて、ランス家の位を高められるように努力する」
今までが洗脳されていたんだから、この言葉がレイの本当の気持ちなんだろう。
「許してほしいなんて言わないけど、誠意を尽くすから側に居させてほしい。だってエマは……」
そう言って私の手を両手で握る。そしてキラキラした笑顔を見せた。
唐突に思い出した。このシナリオのラストで出てくるスチルと同じ構図。ということはこの後に続く台詞は……!
「暗闇から連れ出してくれた、俺の太陽だから!」
脳内で好感度が上がるSEが流れた。
なんだか疲れた。ジキウスのおかげで国外追放の件の背景が分かったけど、高圧的で強引なところが困る。
今日はアリスに美味しい紅茶を入れてもらって癒されよう。それならどこかでお茶菓子を買って帰ろうかな。
私は街へ寄り道をして、見つけたカフェでお菓子を購入した。
街から家へ向かって歩いていたら、道に迷った。
「あ、れ……?」
お店が立ち並ぶ街並みは終わり、いつの間にか湖のほとりに出ていた。人気はなく、道を尋ねられそうな家やお店ももちろんなかった。
一旦学園に戻ってからいつもの帰り道を行くよりも直接家を目指した方が早いなんて、楽しようとした自分が馬鹿だった……街になんて数えるくらいしか行ったことないし、自分の地理的センスを買い被り過ぎた。
「とりあえず、来た道を戻ってみるか……」
「お前……俺を笑いに来たのか!」
その声、嫌な予感がする。恐る恐る声の方を向くと、湖畔の木の陰にレイが立っていた。眉を吊り上げて私を睨みつけている。
「いや、ここに来たのはたまたまで……」
「嘘つけ! 俺の後をつけてきたに決まってる! そうじゃなかったらこんな人気のない場所に来るのはおかしい!」
そう言われても、道に迷っただけなんだよなぁ……
レイはふっと息を吐いて、自嘲気味に笑った。
「笑いたいなら笑えばいいさ。千載一遇のチャンスを潰した俺に、帰る場所なんてない。父さんも母さんも、兄さん達も、きっと俺に失望してる。出来損ないの三男なんて、生まれてこなきゃよかったんだって……!」
そう言ってレイは目元をぬぐった。
「何もそこまで言わなくたって……」
「お前に何が分かる!」
「分かるよ」
レイ・ランス、14歳。飛び級で学園に入学したため、エマ達と同じ1年生。8つ年上のロム、5つ年上のシルを兄に持つ。ロムとシルも過去に飛び級で学園に在籍しており、首席で卒業した。近い将来、王政で重要な役職を与えられると噂されている。レイも優秀ではあるが、兄達ほどの飛びぬけた才能はなく、劣等感を抱えて育った。
段々と思い出してきた。君の半生は見てきたからよく知っているよ(ゲームのシナリオで)。
「そうか、お前も名家の重圧を受けて生きてきたんだもんな……」
レイは納得したように言った。
「でも、俺に帰る場所がない事は変わらない。分かるだろ? 出来損ないには生きる価値がないって。兄さん達が失望した顔なんて、見たくないんだよ……」
「お兄さん達は君を出来損ないだなんて思ってないよ。今回の件もお父さんやお兄さんから指示された訳じゃないでしょ?」
「え……?」
レイは目を丸く見開いた。
ゲームでもレイがランス家再興のために裏工作をするシナリオがあった。レイ編のシナリオにエマは出てこないから裏工作の内容も今回とは違うけど、指示されて実行したレイが作戦に失敗して絶望するところは同じだ。恐らくそれ以外も。
「指示してきた父方のおじさんは、競合するリーステン家を没落させる作戦を実行するために君を洗脳していたんだ。この作戦を実行しなければ家は没落するって何度も刷り込んで君を実行に向かわせた。成功すれば自分の手柄、失敗すれば君の責任にするつもりだったんだ。今回の件はおじさんが勝手にやったことで、お兄さん達は何も知らなかった。きっと今頃、事態を知って君を心配しているよ」
「そんな……だって……」
「お兄さん達は君を過酷な政治競争に巻き込みたくなくて、離れさせようとしていたんだよ。お兄さん達に仕事の話を聞いてもはぐらかされた覚えあるでしょ? 君は自分が出来損ないだから話してくれないんだと思ったかもしれないけど、お兄さん達は話を聞いた君が巻き込まれるのを防ぐためにあえて言わなかったんだよ。お互いに本心を言わないせいでここまでこじれちゃったんだけど」
レイは驚いたように私を見つめていた。
あ……これは余計なことまで言い過ぎたかも。
「いや、あの、これはあくまで私の想像というか……」
「すごい……そんな風に考えたことなかった」
本来のシナリオであれば、作戦に失敗して落ち込んだレイを主人公のリアナが慰めてあげて、レイは家に帰る決心をする。それでお兄さん達と話し合って誤解が解けたレイは、支えてくれた主人公に恋心が芽生えるという流れだ。
これって、もしかして私がレイのことを攻略しちゃってるんじゃない? いや、まさかね……
「さっきの話は忘れて! 私、帰るから!」
「待って!」
そう言ってレイに袖を掴まれた。
「今回のこと、本当に悪かった。まだちゃんと謝ってなかったから」
そう言って真っ直ぐに私を見つめる瞳には、はっきりとしたレイの意思が感じられた。
「いくら家のためだとしても、相手を陥れるようなやり方はするべきじゃなかった。次は自分自身の能力で周りに認められて、ランス家の位を高められるように努力する」
今までが洗脳されていたんだから、この言葉がレイの本当の気持ちなんだろう。
「許してほしいなんて言わないけど、誠意を尽くすから側に居させてほしい。だってエマは……」
そう言って私の手を両手で握る。そしてキラキラした笑顔を見せた。
唐突に思い出した。このシナリオのラストで出てくるスチルと同じ構図。ということはこの後に続く台詞は……!
「暗闇から連れ出してくれた、俺の太陽だから!」
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