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第3章 「聖教国 - 学園編-」
第21話 千年巫女
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すっかりクラスの人間から畏れられ、教室で我らは完全に孤立状態だ。
「そういえば、もうすぐ学園祭と言うものが執り行われるようですね」
アモンの配下であるリリスがそう言った。彼女は非常に真面目で常に情報収拾を怠らない。アモンが、あれだけ好き勝手にやっても魔王としてやっていけるのは彼女の力が大きいだろう。力と知、非常に相性が良い。
「学園祭?具体的に何をするんだよ?」
アモンがリリスに問いかけると、事前に調べた情報を次々に教えてくれた。まず、学園祭は年に一回執り行われる学園内の祭りであり、己の力を見せつける闘技大会や、知力、美術力を活かし学生が製作した作品を展示する展覧会もあるらしい。
「へぇ、闘技大会か。面白そうじゃねえか。なあ山本?」
「ああ、上の4学年のS組の連中が気になるしな。そいつらも参加するんだろ?」
「はい、どうやら学年や組による制限はなく、志願者全ての総当たり戦らしいです。」
「妾も久しぶりに暴れたいのぅ。」
どうやら、我ら4人はの参加は確定のようだ。一つ楽しみが出来たな。うんうん。
しばらくすると教室に担任であるダギルが入ってきた。
「さあ、席につけ。まず、話すことがある。例の…山本たちと戦って大怪我をした奴らだが。とりあえず、命に別状はない。しかし、この教室に戻れるのは当分先になるそうだ。そして、そのことで山本、アモン、玉藻前、リリス、お前らは巫女様から話があるそうだ。この後すぐに向かうようにしろ。以上だ。」
巫女だと?神に仕える人間か、昔から神は気に入らん…まあ、せっかくだ。今回は話だけなら聞いてやろうか。
「さて、その巫女とやらの場所に行くか。」
ーーーー
ーーー
ーー
ー
巫女のいる部屋の前に着いた。大きな白い扉に、厳重な警備。想像していたのと全く違うな。巫女と言うからにてっきり、もっと古風な感じの場所にいるかと思ったわ。
「巫女様はすでに中でそなたらを待っている。無礼のないようにな。」
警備の人間からそう忠告を受けると、すぐに扉が開けられた。中は以外にも殺風景だ、しかも薄暗い。部屋の中央には大きな風呂のようなものがあり、水が張られている。そのそばに一人の老婆がいた。
「よくきたね。さあ、こちらにおいでな。」
そう言われ、我ら4人は老婆のそばに寄った。
「単刀直入に言うよ。あんたら…人間じゃないね…」
驚きだ。初めて我らの正体を見破るものが現れた。
「まず、あんただ…魔族の王、魔王じゃないかい?」
老婆はアモンの方を向きながらそう話す。
「ああ?まずはお前から答えろ。名前も、何も聞いてないぞ」
「そうか、そうであったな…申し訳ない。私は、ローズ。千年巫女と呼ばれるものだ。その名の通り、千年は生きておるよ。」
「人間にしては長生きだな。」
「まあね…半分人間じゃないからね…とまあ、この話はここまでだよ。アモン、あんたは魔王だね?」
「ちっ…面倒臭いな。そうだな、間違いない。俺は魔王だ。そっちのリリスも魔族で俺の配下だ。」
「やはり…まさかこの学園に魔王が入学してくるとはね…」
そんな会話をしていると、千年巫女はこちらに視線を移した。
「問題は、あんただ…山本。あんたらは、どこからきた?」
素直に答えるべきか?もし、我らに敵対しようとしたら即座に殺せば良いか。
「異世界からだ。日本という国からやってきた。我は、妖怪の王、同じく魔王である。」
「がはは、そうだ。山本も魔王だ。そして、この俺よりもはるかに強い。」
「魔王が二人も…まさか、こんな事態になるなんてね…長い間生きてきたが初めてさ。あんたらはこの学園になにをしにきた…?」
「そうだな、一つは勇者という存在をより知ること、もう一つは、暇つぶしだ。お前たちには悪いが、この学園は滅させてもらう。正直、毎回勇者が攻めてきたのでは鬱陶しいのでな。」
線年巫女はその言葉を聞くと、視線を地面に移しうなだれた。
「…どうしたもんか…まさか魔王の方から攻めてくるとはな…幸い、すぐにどうかするわけではないか。」
すると突然外が騒がしくなった。人の声や、爆発音らしき音が聞こえてくる。
「…どうやら、良からぬものが入ってきたようだ。」
「先に言っておくが、我らは知らんぞ。」
「わかっておる…今日はこれで終わりじゃ、都合の良い話だとはわかっておるが、どうか。勇者たちを滅さないでやってくれんか」
「それは無理だな、我らは敵に対して一切の容赦はしない。」
「そうか…」
「さて、話も終わったことだ、外の様子でも見に行くか」
ーーーー
ーーー
ーー
ー
外に出ると、人々がわらわらと慌てている様子だった。そこに通りがかった男子学生を引き止め、話を聞いた。
「何が起きた?」
「ま、魔物だ!魔物があわられた…!」
「魔物だと?」
アモンに小声で何か知らないか聞いてみる。一応、魔王なのでな。
(アモン…お前たちの仕業か?)
(ああ?俺たちは何もしていないぞ。その魔物とやらの姿を見れば何か分かるかもしれねえが。)
「その魔物はどこにいるんですか?」
アモンと話しているとリリスが先に魔物の居場所を聞いていた。
「向こうだ…!き、きたぁあ!!!」
男子学生の視線の先には全身が液体で出来ている巨大な龍がいた。蛇のような細長い体をしているタイプの龍だった。
「アモン、あれはお前の仲間か?」
「いや…違うな。少なくても俺の配下の者ではねえな。」
水の龍がこちらに気がつくと勢いよく接近してきた。
「グガガアアアアアアアアアッ!!」
咆哮とともに口から水を吐き出す。ただの水ではない、超高圧水によりウォーターカッターのようなものであった。
水が当たったところは鋭い刃で切れ込みをいれたような跡が残る。
「ヒョアアアアアアア!!」
後方から水の龍とは別の咆哮が鳴り響いた。山本たちが振り向くとそこには、火の鳥がいた。全身が炎で出来ており、それが巨大な鳥の姿を形成している。
「次から次へと忙しいな。」
「グガガアアアアアアッ!」
「ヒョアアアアアアアアッ!!!」
すると、どうしたことか水の龍、火の鳥は互いを見つけるやいなや争い始めた。日本の怪獣映画みたいだな。
「てっきり仲間かと思っていたが、そうではないのか」
そして、二匹の巨大な魔物の争いは周りに被害を出していく。少し興味が出たことだし、我らが対処をしようかと(戦いたいだけであるが)思っていたところ、続々と勇者どもが現れた。
「邪魔だ、どけ。一年から三年の学生はさっさと避難しろ。ここは我ら最上級学年が対処する。」
「おー、なんだあれ?魔物なのか?」
「どちらにせよ、この国に害をなした存在です。殺す以外に選択肢はありません。」
最上級学年、つまり4年生のS組ということか。どのくらいの実力があるのか、ついでに見させてもらうことにしよう。
「まずは、俺が動きを止める。その隙に一斉攻撃だ。」「あいよ」「了解。」
指示を出した男の手がバチバチと電気のようなものを放ち発光しだした。すると、その手から光の鎖のようなものが現れた。それは蛇のような動きをしながら二体の魔物の体に纏わりつき、身動きを取れなくする。
動きが制限されたのを確認した二人の勇者は己の聖剣に聖属性の魔力を込める。魔物にとって、それは猛毒であり、最大の弱点属性である。そして、魔物の体を切り裂いた。
「グギャアアアアアァアアッ!!」「ヒョウワァアアアッ!!」
おお、真っ二つだ。やるな。
切り裂かれた二体の魔物はただの水と炎となり、やがて消滅した。
戦闘が終わると、先ほどの勇者たちがこちらに近づいてきた。
「お前たち、まだいたのか。」
「ん、1年のしかもC組か…いわゆる退学候補生だな。一番辞めていくやつが多いんだよな。」
「悪いことは言いません。勇者にはならずに、別の道を探すべきかと。」
「ああ?勇者ごときが舐めた口を聞きやがって、口の聞き方には気をつけろよ?」
アモンが噛み付いていく。あいつの性格上、この場で勇者どもを皆殺しにしていてもおかしくはなかったが、そこは我慢したようで感心した。
「…所詮はC組。自分たちの立場すら分かっていないのだろうな。」
「ん?おい、こいつら今噂のあれじゃね?確か…地獄組?だっけか?」
「その噂なら私の耳にも入ってきました。学園始まって以来の問題児たち…と。」
問題児って言っても、ただ模擬試合をしただけなんだがな。それに地獄組と誰が名付けたのか知らないが、言い得て妙だな。
「地獄組か、C組の中では確かに上位に来る実力かもしれないが、上には上がいることをよく知っておくことだ。ああ、自己紹介がまだだったな。4年S組のエリックだ。」
「同じく4年S組、ジーク。」
「先の二人と同じく、エミル。」
なるほど、こいつらがこの学園トップクラスの実力の持ち主か。短い付き合いになりそうだが、名ぐらいは教えてやるか。
「我は山本五郎左衛門、そこにいる大男がアモン、その後ろのが玉藻前とリリスだ。」
名乗り終えるとエリックが目を細め口を開いた。
「アモン…?どこかで聞いたことのある名前だな…」
「アモン…アモン…あ、そういえば今の魔王の名前が確かアモンだと聞いたことがるぞ」
「ええ、前の魔王は先の大戦で死に、新たな魔王として現れたのがアモン。」
お、これはバレるか?やはり偽名を使うべきだったか。
「ふん、アモンか。お前の両親はとんでもない名前をつけたものだな。」
うん、アモン本人なんだがな。
「さて、俺たちは戻るが。お前らは闘技大会にでるのか?もしでるのなら、よろしくな。」
これは、挑戦状を叩きつけられたと思っていいよな?
「ああ、我らも出るつもりだ。退屈しない戦いがしたいものだ。」
「口だけは立派だな…まあいい。さらばだ。」
こうして、エリックたちは帰っていた。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
「巫女様…あの二匹の魔物は…?」
千年巫女の部屋には数人の学園幹部たちが集まっていた。
「あれは…魔物ではない。」
「というと…?」
「この学園の地下に”アレ”を封印していることは知っているな…その封印を守る守護精霊が暴走したのだ。原因は、あの魔王…あいつらから溢れ出す魔力が守護精霊の体内に流れ込んだ。魔王の一部が入ったことで互いに外敵だと判断し、今回のようなことになった…また同じことが起きるだろう…一刻も早くあの魔王を外に出すか、殺さねばならない…」
「しかし…一人だけならまだしも、魔王が二人もいるのです…どうすれば…」
「…彼奴の力を借りるしかないだろうね」
「まさか、”禁忌の勇者”ですか…?」
「ああ、そうさ…学園の歴史上、最強の勇者…悪とみなしたものは神だろうと殺すもの…」
「目には目を、歯には歯を。問題児には問題児を…ですか。」
「どちらかが死ねばよし…ある程度、力を削ってくれれば、後は勇者を総動員させれば対処できるだろうからね…」
「そういえば、もうすぐ学園祭と言うものが執り行われるようですね」
アモンの配下であるリリスがそう言った。彼女は非常に真面目で常に情報収拾を怠らない。アモンが、あれだけ好き勝手にやっても魔王としてやっていけるのは彼女の力が大きいだろう。力と知、非常に相性が良い。
「学園祭?具体的に何をするんだよ?」
アモンがリリスに問いかけると、事前に調べた情報を次々に教えてくれた。まず、学園祭は年に一回執り行われる学園内の祭りであり、己の力を見せつける闘技大会や、知力、美術力を活かし学生が製作した作品を展示する展覧会もあるらしい。
「へぇ、闘技大会か。面白そうじゃねえか。なあ山本?」
「ああ、上の4学年のS組の連中が気になるしな。そいつらも参加するんだろ?」
「はい、どうやら学年や組による制限はなく、志願者全ての総当たり戦らしいです。」
「妾も久しぶりに暴れたいのぅ。」
どうやら、我ら4人はの参加は確定のようだ。一つ楽しみが出来たな。うんうん。
しばらくすると教室に担任であるダギルが入ってきた。
「さあ、席につけ。まず、話すことがある。例の…山本たちと戦って大怪我をした奴らだが。とりあえず、命に別状はない。しかし、この教室に戻れるのは当分先になるそうだ。そして、そのことで山本、アモン、玉藻前、リリス、お前らは巫女様から話があるそうだ。この後すぐに向かうようにしろ。以上だ。」
巫女だと?神に仕える人間か、昔から神は気に入らん…まあ、せっかくだ。今回は話だけなら聞いてやろうか。
「さて、その巫女とやらの場所に行くか。」
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巫女のいる部屋の前に着いた。大きな白い扉に、厳重な警備。想像していたのと全く違うな。巫女と言うからにてっきり、もっと古風な感じの場所にいるかと思ったわ。
「巫女様はすでに中でそなたらを待っている。無礼のないようにな。」
警備の人間からそう忠告を受けると、すぐに扉が開けられた。中は以外にも殺風景だ、しかも薄暗い。部屋の中央には大きな風呂のようなものがあり、水が張られている。そのそばに一人の老婆がいた。
「よくきたね。さあ、こちらにおいでな。」
そう言われ、我ら4人は老婆のそばに寄った。
「単刀直入に言うよ。あんたら…人間じゃないね…」
驚きだ。初めて我らの正体を見破るものが現れた。
「まず、あんただ…魔族の王、魔王じゃないかい?」
老婆はアモンの方を向きながらそう話す。
「ああ?まずはお前から答えろ。名前も、何も聞いてないぞ」
「そうか、そうであったな…申し訳ない。私は、ローズ。千年巫女と呼ばれるものだ。その名の通り、千年は生きておるよ。」
「人間にしては長生きだな。」
「まあね…半分人間じゃないからね…とまあ、この話はここまでだよ。アモン、あんたは魔王だね?」
「ちっ…面倒臭いな。そうだな、間違いない。俺は魔王だ。そっちのリリスも魔族で俺の配下だ。」
「やはり…まさかこの学園に魔王が入学してくるとはね…」
そんな会話をしていると、千年巫女はこちらに視線を移した。
「問題は、あんただ…山本。あんたらは、どこからきた?」
素直に答えるべきか?もし、我らに敵対しようとしたら即座に殺せば良いか。
「異世界からだ。日本という国からやってきた。我は、妖怪の王、同じく魔王である。」
「がはは、そうだ。山本も魔王だ。そして、この俺よりもはるかに強い。」
「魔王が二人も…まさか、こんな事態になるなんてね…長い間生きてきたが初めてさ。あんたらはこの学園になにをしにきた…?」
「そうだな、一つは勇者という存在をより知ること、もう一つは、暇つぶしだ。お前たちには悪いが、この学園は滅させてもらう。正直、毎回勇者が攻めてきたのでは鬱陶しいのでな。」
線年巫女はその言葉を聞くと、視線を地面に移しうなだれた。
「…どうしたもんか…まさか魔王の方から攻めてくるとはな…幸い、すぐにどうかするわけではないか。」
すると突然外が騒がしくなった。人の声や、爆発音らしき音が聞こえてくる。
「…どうやら、良からぬものが入ってきたようだ。」
「先に言っておくが、我らは知らんぞ。」
「わかっておる…今日はこれで終わりじゃ、都合の良い話だとはわかっておるが、どうか。勇者たちを滅さないでやってくれんか」
「それは無理だな、我らは敵に対して一切の容赦はしない。」
「そうか…」
「さて、話も終わったことだ、外の様子でも見に行くか」
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外に出ると、人々がわらわらと慌てている様子だった。そこに通りがかった男子学生を引き止め、話を聞いた。
「何が起きた?」
「ま、魔物だ!魔物があわられた…!」
「魔物だと?」
アモンに小声で何か知らないか聞いてみる。一応、魔王なのでな。
(アモン…お前たちの仕業か?)
(ああ?俺たちは何もしていないぞ。その魔物とやらの姿を見れば何か分かるかもしれねえが。)
「その魔物はどこにいるんですか?」
アモンと話しているとリリスが先に魔物の居場所を聞いていた。
「向こうだ…!き、きたぁあ!!!」
男子学生の視線の先には全身が液体で出来ている巨大な龍がいた。蛇のような細長い体をしているタイプの龍だった。
「アモン、あれはお前の仲間か?」
「いや…違うな。少なくても俺の配下の者ではねえな。」
水の龍がこちらに気がつくと勢いよく接近してきた。
「グガガアアアアアアアアアッ!!」
咆哮とともに口から水を吐き出す。ただの水ではない、超高圧水によりウォーターカッターのようなものであった。
水が当たったところは鋭い刃で切れ込みをいれたような跡が残る。
「ヒョアアアアアアア!!」
後方から水の龍とは別の咆哮が鳴り響いた。山本たちが振り向くとそこには、火の鳥がいた。全身が炎で出来ており、それが巨大な鳥の姿を形成している。
「次から次へと忙しいな。」
「グガガアアアアアアッ!」
「ヒョアアアアアアアアッ!!!」
すると、どうしたことか水の龍、火の鳥は互いを見つけるやいなや争い始めた。日本の怪獣映画みたいだな。
「てっきり仲間かと思っていたが、そうではないのか」
そして、二匹の巨大な魔物の争いは周りに被害を出していく。少し興味が出たことだし、我らが対処をしようかと(戦いたいだけであるが)思っていたところ、続々と勇者どもが現れた。
「邪魔だ、どけ。一年から三年の学生はさっさと避難しろ。ここは我ら最上級学年が対処する。」
「おー、なんだあれ?魔物なのか?」
「どちらにせよ、この国に害をなした存在です。殺す以外に選択肢はありません。」
最上級学年、つまり4年生のS組ということか。どのくらいの実力があるのか、ついでに見させてもらうことにしよう。
「まずは、俺が動きを止める。その隙に一斉攻撃だ。」「あいよ」「了解。」
指示を出した男の手がバチバチと電気のようなものを放ち発光しだした。すると、その手から光の鎖のようなものが現れた。それは蛇のような動きをしながら二体の魔物の体に纏わりつき、身動きを取れなくする。
動きが制限されたのを確認した二人の勇者は己の聖剣に聖属性の魔力を込める。魔物にとって、それは猛毒であり、最大の弱点属性である。そして、魔物の体を切り裂いた。
「グギャアアアアアァアアッ!!」「ヒョウワァアアアッ!!」
おお、真っ二つだ。やるな。
切り裂かれた二体の魔物はただの水と炎となり、やがて消滅した。
戦闘が終わると、先ほどの勇者たちがこちらに近づいてきた。
「お前たち、まだいたのか。」
「ん、1年のしかもC組か…いわゆる退学候補生だな。一番辞めていくやつが多いんだよな。」
「悪いことは言いません。勇者にはならずに、別の道を探すべきかと。」
「ああ?勇者ごときが舐めた口を聞きやがって、口の聞き方には気をつけろよ?」
アモンが噛み付いていく。あいつの性格上、この場で勇者どもを皆殺しにしていてもおかしくはなかったが、そこは我慢したようで感心した。
「…所詮はC組。自分たちの立場すら分かっていないのだろうな。」
「ん?おい、こいつら今噂のあれじゃね?確か…地獄組?だっけか?」
「その噂なら私の耳にも入ってきました。学園始まって以来の問題児たち…と。」
問題児って言っても、ただ模擬試合をしただけなんだがな。それに地獄組と誰が名付けたのか知らないが、言い得て妙だな。
「地獄組か、C組の中では確かに上位に来る実力かもしれないが、上には上がいることをよく知っておくことだ。ああ、自己紹介がまだだったな。4年S組のエリックだ。」
「同じく4年S組、ジーク。」
「先の二人と同じく、エミル。」
なるほど、こいつらがこの学園トップクラスの実力の持ち主か。短い付き合いになりそうだが、名ぐらいは教えてやるか。
「我は山本五郎左衛門、そこにいる大男がアモン、その後ろのが玉藻前とリリスだ。」
名乗り終えるとエリックが目を細め口を開いた。
「アモン…?どこかで聞いたことのある名前だな…」
「アモン…アモン…あ、そういえば今の魔王の名前が確かアモンだと聞いたことがるぞ」
「ええ、前の魔王は先の大戦で死に、新たな魔王として現れたのがアモン。」
お、これはバレるか?やはり偽名を使うべきだったか。
「ふん、アモンか。お前の両親はとんでもない名前をつけたものだな。」
うん、アモン本人なんだがな。
「さて、俺たちは戻るが。お前らは闘技大会にでるのか?もしでるのなら、よろしくな。」
これは、挑戦状を叩きつけられたと思っていいよな?
「ああ、我らも出るつもりだ。退屈しない戦いがしたいものだ。」
「口だけは立派だな…まあいい。さらばだ。」
こうして、エリックたちは帰っていた。
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千年巫女の部屋には数人の学園幹部たちが集まっていた。
「あれは…魔物ではない。」
「というと…?」
「この学園の地下に”アレ”を封印していることは知っているな…その封印を守る守護精霊が暴走したのだ。原因は、あの魔王…あいつらから溢れ出す魔力が守護精霊の体内に流れ込んだ。魔王の一部が入ったことで互いに外敵だと判断し、今回のようなことになった…また同じことが起きるだろう…一刻も早くあの魔王を外に出すか、殺さねばならない…」
「しかし…一人だけならまだしも、魔王が二人もいるのです…どうすれば…」
「…彼奴の力を借りるしかないだろうね」
「まさか、”禁忌の勇者”ですか…?」
「ああ、そうさ…学園の歴史上、最強の勇者…悪とみなしたものは神だろうと殺すもの…」
「目には目を、歯には歯を。問題児には問題児を…ですか。」
「どちらかが死ねばよし…ある程度、力を削ってくれれば、後は勇者を総動員させれば対処できるだろうからね…」
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