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「なぜ、ライラがレイチェル様を気にするんですか?」

マコト様はよくわからないという顔をして首を傾げている。
それも、そうだろう。私とレイチェルの接点はないのだから。
マコト様からすれば、初めてレイチェルと会っただろうと思われる私が、レイチェルのことを気にかけるのが不思議なのだろう。

「気にかけたらいけないのかしら?」

「いえ、初対面の貴女が気にかけているのが不思議なんです。何を企んでいるのですか?」

ああ、企みと捉えられてしまうのね。だから、こんなにマコト様は厳しい視線を向けてくるのね。

「なにも企んでなんかいませんわ。ただ、気になっただけ。」

別にレイチェルをどうこうしようだなんて思ってはいない。
だって、私にはレイチェルとしての記憶があるのだから。そんな彼女を傷つけようだなんて少しも思っていない。

「・・・そうですか。」

「ええ。そうよ。で?教えてくれないのかしら?」

マコト様は難しい顔をしながら考え込んでいる。私に話してもいいか悩んでいるのだろうか。

「彼女のことが心配なのよ。だって、子を産んだばかりなのでしょう?それなのに、意識不明だなんて・・・かわいそうで・・・。」

泣き落としをしてみせれば、マコト様は眉間にシワを寄せながらこちらを見てくる。考えあぐねているのだろうか。

「・・・レイチェル様は無事です。だから、エドワード様に取り入ろうたって無駄ですよ。考え直してください。それに、いくらエドワード様が貴女のことを好きになったとしても、貴女の出自ではエドワード様と結婚することはできませんし、皇太子妃になることもできません。諦めてください。」

「あら。誰もエドワード様に取り入ろうだなんて思ってはおりませんわ。」

そう。エドワード様に取り入ろうだなんて思っていない。エドワード様を暗殺しなければならないかもしれないけれども。

「そうですか。そういうことにしておきましょう。さて、貴女の家ですが、こちらになります。」

話をしているうちに帝都にあるという物件の一つにたどり着いていたようだ。
その家はこじんまりとした一軒家だった。めずらしくも二階建ての建物ではなく一階建ての建物だ。
建設されてから年数がだいぶ経っているように見受けられるが、定期的に管理がされているのか小綺麗なイメージを受けた。
庭には花壇があり、花を育てることもできそうだ。今はなにも植えられておらず、草が生えている。

「古そうな家ね。」

「ええ。100年程前に建てられた家です。定期的に清掃をしているので、家は痛んでおりません。すぐにでも住むことが可能ですよ。」

「そう。もう一つの家は?」

建物自体は古いが手入れの行き届いている家はとても住みやすそうだった。どのくらいここに軟禁されるのかはわからないが、この家でも問題はない。
問題はないのだが、念のためもう一軒も見てみることにした。

「もう一軒はここから少し歩きます。」

そう言ってマコト様が案内しいてくれたのは、高級な住宅街の中の一軒だった。
そこは私もよく知っている家だった。
3階建てのお屋敷。その1階の北にある部屋の一角。そこは私にとってとても馴染みのある場所だった。
でも、そうしてここが・・・?私を試しているのかしら?

「どうして、このような高級住宅街にある家を紹介するのかしら?」
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