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しおりを挟む私は皇太子妃になりたいの・・・?
違う。
エドワード様が皇太子だから、隣に並ぶために皇太子妃になりたくて、皇太子妃になるための勉強を頑張ってきた。
そう、頑張ったのだ。
エドワード様の隣に並び立てるように。
悪意の蔓延る苦手な社交も精一杯頑張ったのに・・・。
「レイチェルお願いだから、泣かないで。」
思わず泣いてしまった私の頭を、ユキ様の暖かい手が優しく撫でて慰めてくれる。
暖かい人の体温がとても心地よく感じて、さらに涙が溢れてくる。
「人前で泣いてはならないと教わったのに。」
「それは、皇太子妃になるため?」
ポツリと漏れ出た言葉に、すぐさまユキ様が反応してくる。
私はそれに、小さく頷いた。
皇太子妃は、他者に侮られないためにも常に胸を張っていなければならない。
いつも気丈でなければならない。
そう教えられてきた。
「エドワード様の隣に立ちたかったの。エドワード様が好きだったから。」
「頑張ったんだね。レイチェルは。エドワードなんかのために頑張ったんだね。 」
よしよしと頭を優しく撫でてくれるユキ様の暖かい体温に安心して、また涙が溢れてきた。
ここでなら、泣いてもいいの・・・?
もう、ずっと泣くのを我慢してきた。
どんなに辛くても苦しくても誰も泣くことを許してはくれなかった。
でも、ユキ様は泣いてもいいと言ってくれる。
「頑張ったの・・・。エドワード様に認められたくて・・・。でも、最近のエドワード様は私と目も合わせてくれない。部屋も別々になってしまった・・・。」
「そう。辛かったね。ねえ、レイチェルは皇太子妃に向いていないのよ。ここにいて皇太子妃になったらもっと辛くなるわ。私と一緒に逃げましょう!」
ユキ様にすがりたくなる。ユキ様の手をとって、逃げ出したくなってしまう。
私はそれほどまでに弱い人間なのだ。
私は、皇太子妃に向いていない。
それは、自分でも思っていた。
教えてもらったとおりに皇太子妃らしく振る舞う。それがとても辛かった。
いつも笑顔で前向きで胸を張って堂々と過ごす。
たったそれだけのことが私には辛かった。
ただ、エドワード様のことを思えばその辛さも我慢できた。
でも、エドワード様に嫌われてしまったのならば、辛い思いをして頑張る必要があるのだろうか。不安になってしまう。
「ユキ様・・・私は・・・。」
「へぇ・・・。レイチェルってば私から逃げたかったの?」
「えっ?」
突然、ユキ様以外の人の声が聞こえてきて驚いて肩が跳ねた。
この不機嫌そうな声は、エドワード様・・・?
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