5 / 170
4
しおりを挟む
きらびやかな部屋の中央に人だかりができていた。
私は何事かと、人だかりの中に足を踏み入れ、中央にいる人物に目を向けてハッとした。
「君には見損なったよ。レイチェル。まさか異世界からの迷い人であるマコトを陰でいじめているとは・・・。」
皇太子殿下エドワード様が困ったように告げた。その顔はいつもの優しげな顔ではなく、本当に怒っている時に見せる無表情だった。
「そのようなことは決してしておりません。信じていただけないのでしょうか?」
「しらを切る気か?証拠も証人もいるのに?」
あれは・・・私?
私にそっくりな人が皇太子殿下とその側近の4人に囲まれている。
その状態を私は何故か離れた位置で見ていた。
これはいったいどういうことなんだろうか。
私の気持ちをおざなりにして場面は進行していく。
「エドワード殿下。どうして私のことを信じてくださらないのですか?私は皇太子殿下の婚約者ですわよね?」
「善人な他者を陥れるような人は私の妃にはふさわしくない。」
「そんなっ!マコト様が悪いのですわ!必要以上にエドワード様に近づくからいけないのですわっ!」
目の前にいる私は髪を振り乱しながら叫んでいた。
「醜い言い訳は聞きたくないよ。そんな君でも元は僕の婚約者だったんだ。潔く罪をみとめるといい。」
それに答えるエドワード様の声は固く、目の前にいる私をさけずんだ目で見つめていた。それは、回りを囲む4人も同じだ。
「レイチェル、君との婚約は破棄をさせてもらった。君は異世界からの迷い人であるマコトを苦しめた罪で1ヶ月後に処刑することになったよ。それまでは地下牢ですごしてもらう。」
「そんなっ!!なぜ私が!!処刑だなんて酷すぎますわっ!」
「君はそれだけの罪をおかしたんだ。楽に死ねないと思うといい。・・・連れていけ。」
私は淑女の姿勢を忘れてその場にしゃがみこみ泣き叫んでいた。
そんな私を冷めた目でみつめていたエドワード様はまわりにいる騎士に牢に連れていくように指示をした。
騎士たちは喚く私を無理矢理立ち上がらせると、ずるずると引っ張るように牢に連れていった。
「・・・なにかしら、これは。マコトって誰かしら?」
異世界からの迷い人のことは知っている。この国に恩恵をもたらす異世界から突然やってきた人たちのことを指し示している。
数十年に一度の割合でやってくる異世界からの迷い人は実に様々な益を国にもたらしてくれた。
それ故、異世界からの迷い人は国から手厚く保護されている。
その迷い人を私が虐げたと?
どういうこと?
それにしてもこの場面、はじめて見たはずなのにどこか見覚えがあるような・・・。
いつ、どこで・・・?
「・・・イ・・・レイ!」
トントンと軽く肩を叩かれて、誰かに名前を呼ばれる。
「起きて、レイ!」
ゆっくりと目を開けると目の前にはエドワード様がいた。
「ひっ・・・。」
思わず怯えたような声がでてしまう。先程まで見ていたエドワード様の冷めた眼差しを思い出してしまったのだ。
「大丈夫かい?レイ?」
エドワード様は心配そうに私を見つめてくる。私の手をとり、やさしく唇を寄せる。
「とてもうなされていたよ?怖い夢でも見た?」
今ここにいるエドワード様はとても優しい眼差しで私を見ている。とても暖かい瞳。
では、先程のエドワード様は・・・?
「夢・・・を見ていたのかしら?」
夢にしてはやけにリアルだったような気がしたが。あれはいったい・・・。
「ずっと、魘されていた。とても怖い夢をみていたんだね。大丈夫だよ、レイ。私がそばにいるからね。」
そう言ってやさしく私を抱き締めてくるエドワード様。
とても暖かい体温で気持ちがいい。強張っていた身体が徐々に癒されていく。
「とても怖い夢を見たのです。エディが私から離れていく夢でした。そうしてエディが異世界からの迷い人のマコト様の手を取る夢を見たのです。」
あれは、夢。
とてもリアルだったけれど夢だった。
その内容をエドワード様に告げると、ハッとしたようにエドワード様の身体が固くなった。
「私は君に異世界からの迷い人の名前を言ったことがあったかい?」
「え?」
今回来たと言う異世界からの迷い人の名前はマコト様というの?
あれは・・・本当に夢だったの?
私は何事かと、人だかりの中に足を踏み入れ、中央にいる人物に目を向けてハッとした。
「君には見損なったよ。レイチェル。まさか異世界からの迷い人であるマコトを陰でいじめているとは・・・。」
皇太子殿下エドワード様が困ったように告げた。その顔はいつもの優しげな顔ではなく、本当に怒っている時に見せる無表情だった。
「そのようなことは決してしておりません。信じていただけないのでしょうか?」
「しらを切る気か?証拠も証人もいるのに?」
あれは・・・私?
私にそっくりな人が皇太子殿下とその側近の4人に囲まれている。
その状態を私は何故か離れた位置で見ていた。
これはいったいどういうことなんだろうか。
私の気持ちをおざなりにして場面は進行していく。
「エドワード殿下。どうして私のことを信じてくださらないのですか?私は皇太子殿下の婚約者ですわよね?」
「善人な他者を陥れるような人は私の妃にはふさわしくない。」
「そんなっ!マコト様が悪いのですわ!必要以上にエドワード様に近づくからいけないのですわっ!」
目の前にいる私は髪を振り乱しながら叫んでいた。
「醜い言い訳は聞きたくないよ。そんな君でも元は僕の婚約者だったんだ。潔く罪をみとめるといい。」
それに答えるエドワード様の声は固く、目の前にいる私をさけずんだ目で見つめていた。それは、回りを囲む4人も同じだ。
「レイチェル、君との婚約は破棄をさせてもらった。君は異世界からの迷い人であるマコトを苦しめた罪で1ヶ月後に処刑することになったよ。それまでは地下牢ですごしてもらう。」
「そんなっ!!なぜ私が!!処刑だなんて酷すぎますわっ!」
「君はそれだけの罪をおかしたんだ。楽に死ねないと思うといい。・・・連れていけ。」
私は淑女の姿勢を忘れてその場にしゃがみこみ泣き叫んでいた。
そんな私を冷めた目でみつめていたエドワード様はまわりにいる騎士に牢に連れていくように指示をした。
騎士たちは喚く私を無理矢理立ち上がらせると、ずるずると引っ張るように牢に連れていった。
「・・・なにかしら、これは。マコトって誰かしら?」
異世界からの迷い人のことは知っている。この国に恩恵をもたらす異世界から突然やってきた人たちのことを指し示している。
数十年に一度の割合でやってくる異世界からの迷い人は実に様々な益を国にもたらしてくれた。
それ故、異世界からの迷い人は国から手厚く保護されている。
その迷い人を私が虐げたと?
どういうこと?
それにしてもこの場面、はじめて見たはずなのにどこか見覚えがあるような・・・。
いつ、どこで・・・?
「・・・イ・・・レイ!」
トントンと軽く肩を叩かれて、誰かに名前を呼ばれる。
「起きて、レイ!」
ゆっくりと目を開けると目の前にはエドワード様がいた。
「ひっ・・・。」
思わず怯えたような声がでてしまう。先程まで見ていたエドワード様の冷めた眼差しを思い出してしまったのだ。
「大丈夫かい?レイ?」
エドワード様は心配そうに私を見つめてくる。私の手をとり、やさしく唇を寄せる。
「とてもうなされていたよ?怖い夢でも見た?」
今ここにいるエドワード様はとても優しい眼差しで私を見ている。とても暖かい瞳。
では、先程のエドワード様は・・・?
「夢・・・を見ていたのかしら?」
夢にしてはやけにリアルだったような気がしたが。あれはいったい・・・。
「ずっと、魘されていた。とても怖い夢をみていたんだね。大丈夫だよ、レイ。私がそばにいるからね。」
そう言ってやさしく私を抱き締めてくるエドワード様。
とても暖かい体温で気持ちがいい。強張っていた身体が徐々に癒されていく。
「とても怖い夢を見たのです。エディが私から離れていく夢でした。そうしてエディが異世界からの迷い人のマコト様の手を取る夢を見たのです。」
あれは、夢。
とてもリアルだったけれど夢だった。
その内容をエドワード様に告げると、ハッとしたようにエドワード様の身体が固くなった。
「私は君に異世界からの迷い人の名前を言ったことがあったかい?」
「え?」
今回来たと言う異世界からの迷い人の名前はマコト様というの?
あれは・・・本当に夢だったの?
141
お気に入りに追加
7,867
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる