見習い料理人はテキトー料理で今日も人々を魅了する

葉柚

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「……シラネ様。プリン好きだったよね?」

「え?リューニャどうしたの?何を急に……。なんでプリン?」

「ぴぃ?ぴぃ?」

 泣き止んだシラネ様を見つめながらプリンを食べないかと問いかける。

 シラネ様の真っ赤な目がとても痛々しい。

 シラネ様は真っ赤な目でオレを見上げながら、不思議そうに首を傾げた。

 パーティーを組もうという話がなんでいきなりプリンに繋がるのか不思議に思っているようだ。確かに、何の脈絡もないからシラネ様が不思議がるのもおかしなことではない。

 オレには泣いている女の子を慰める術など持っていない。だけど、ここにはいくつものコカトリスの卵がある。バッファモーのミルクだってギルドにあるだろう。まあ、採れたてのバッファモーのミルクはないとは思うから、多少風味が落ちるのは仕方のないことだろう。

 オレにできるのは料理だけ。オレには料理しかできない。

 女の子は甘いデザートが好きだと聞くし、シラネ様もプリンを食べたら気持ちが浮上するかもしれない。

 そう思っての提案だった。

 でも、シラネ様はプリンを拒否するような表情には見えない。逆にどこかプリンを期待しているように目が煌めいたような気がする。……気のせいかもしれないけど。

「うん、今からプリン作るからね。ここにはオレたちが運んできたコカトリスの卵がいっぱいあるからね。みんなにプリンを振舞おうと思って。」

 そう言ってオレはシラネ様に向かってにっこりと微笑んだ。それから、オレはギルドマスターに視線を移す。

「すみません。ギルドの厨房をお借りできませんか?」

「あ、ああ……。」

 ギルドマスターはオレが急にプリンを作ると言い出したことに驚いているのか言葉少なに頷いた。

「それから、バッファモーのミルクと砂糖が欲しいんですけど……。」

「あ、ああ……。砂糖なら厨房にあるから使ってくれ……。だが、バッファモーのミルクなんて高価なもん何に使うんだ?」

「ありがとうございます。これからコカトリスの卵を使ったプリンを作るのに、バッファモーのミルクが必要なんです。普通のミルクだとちょっと味がいまいちなので。」

「はあっ!!?コカトリスの卵をプリンにだとっ!!しかも、バッファモーのミルクもかよ!あり得ないだろ。それ。プリンなんてそこらで買えるだろうが。わざわざ高価なコカトリスの卵とバッファモーのミルクを使わなくてもいいだろうに。そのプリン、一口いくらになると思ってやがんだ。コカトリスの卵だけで一ヶ月は楽に生活できるだぞ。バッファモーのミルクだってコップ10杯分もあれば、一ヶ月楽に生活できるぞ。あんた、金銭感覚大丈夫か?」

 なんだかギルドマスターに怒られてしまった。

 そう言えば、オレバッファモーのミルクの市場価格とか知らなかった。コップ10杯で一ヶ月楽に生活できるだけの収入になるのか……。意外と高いんだな。

 バッファモーからミルクもらうのなんてすごく簡単なのに。きっと子供でも入手できるぞ。オレだって、6歳からバッファモーのミルクもらって飲んでたし。

「そんなに高いんですねぇ。知りませんでした。でも、もうシラネ様にプリンを作るって言ってしまいましたから。」

「……はぁ。わかったよ。で、バッファモーのミルクはどのくらい必要なんだ。」

「えぇと、みなさんも食べますよね?プリン?こんなにコカトリスの卵があるので皆さんが食べるだけはご用意できると思いますよ。」

 さて、プリンを作ると言ってしまったけどどのくらいつくろうか。コカトリスの卵はまだあるし、ここに集まってくれている冒険者が一口ずつ食べるだけは用意できるだろう。あとは、ギルドの厨房がどれくらいの広さかによるけれど。

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