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しおりを挟む「ふぐぅ……。そなた……なかなかやるではないか。妾にむかってコカトリスの卵を投げつけてくるなど……。」
少しだけ苦しげなクイーンコカトリスの声が聞こえてくる。
オレはゆっくり首を傾げた。だって、オレはクイーンコカトリスに向かってコカトリスの卵を投げつけてなどいないからだ。ただ、オレは、こっちに向かってくるクイーンコカトリスから逃げようと、近くに転がっていたコカトリスの卵を顔の前まで持ち上げただけ、なんだけど。
「そなたの攻撃はなかなかのものであった……。」
クイーンコカトリスはどろりとしたコカトリスの卵に顔面を汚されながらも、ゆったりとした口調でオレに話しかけてくる。
ってか、オレに話しかけてくる前に、その顔にかかったコカトリスの卵白と卵黄をぬぐってくれ。なんで平然としているんだ。って突っ込みたい。けど、突っ込めない雰囲気がそこにはある。
「えっと……。」
「リューニャ、コカトリスの卵を持ち上げた、だけ。だよね?」
「あ……ああ。オレにもそう見えたが……。」
「以外とクイーンコカトリスって強くないのか?」
「自分から卵に突っ込んでいったように見えたが……。」
「自爆、だよな?あれ。違うか?」
どうやらクイーンコカトリスとオレの戦いを見ていた者たちはクイーンコカトリスの言動に動揺しているようだ。ざわざわとしたざわめきと困惑したような声がオレの耳に聞こえてくる。そして、それはもちろんクイーンコカトリスも同様で……。
「……そなたら、妾に向かって意見があるようじゃな?ならば、妾の前に来て妾に向かって言うが言い。いくらでも相手になってやろうではないか。」
「「「「「「ひぃぃぃぃ……!!」」」」」」
クイーンコカトリスがゆったりとした口調で見物客に脅しをかける。クイーンコカトリスの顔は卵で汚れているため、怖さが半減しているのだが、なぜだか皆クイーンコカトリスに向かって怯えた表情を浮かべた。
「まあ、よい。そなた、リューニャと言ったかえ?」
「は、はい。料理人見習いのリューニャと言います。」
「うむ。そなたに決めたのじゃ。婿どの、妾の名はカトリリスと言う。」
クイーンコカトリスは満足気に微笑んだ。そしておもむろに自己紹介を始めた。
っていうか、オレに決めたって何を?
っていうか、婿どのって何?
クイーンコカトリスの言葉の意味がまったく理解できなくて、頭の中を特大の疑問符が駆け巡る。
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