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「き、きみ・・・・・・。クイーンコカトリスの卵なんて食べようとしたら国が滅びるぞ。だから、やめるんだ。絶対に諦めるんだ。というか、なんでクイーンコカトリスの卵なんて持ってるんだよ。おかしいだろう。クイーンコカトリスに遭遇することだって稀なのに、クイーンコカトリスの卵なんてどうやって入手したんだ?いや、そもそもクイーンコカトリスが人間に自分の産んだ卵なんて渡すはずがない。それこそ、その人間は生きてはいられないだろう。どうして、きみはそんな大変なものを持っているんだ。あまつさえ食べようなどと・・・・・・。」

先日ギルドに来たときには気がつかなかったが、どうやらこのギルドマスターはよくしゃべるようだ。オレが口を挟む暇もなく、次々とギルドマスターの口から言葉が飛び出してくる。
ええと、オレはなんて答えればいいんだ?
っていうか、ギルドマスターの話が長すぎてなんて聞かれたかあんまりよく覚えてないんだけど。

「えっと・・・・・・。オレ、料理人見習いなんで、食材はどれもどんな味なのか気になってしまって・・・・・・。クイーンコカトリスの卵っていう貴重なものだったら、どんな味がするのか気になるじゃないですか。」

とりあえず、なんで食べようとしたかってところを答えてみる。確か、訊かれたよな?
あれ?訊かれてない?

「・・・・・・料理人見習いって国が滅ぶかもしれないのにそんなクイーンコカトリスの卵を食べようとかそんな危険を犯すのか?」

ギルドマスターが胡乱げな目でオレを見つめてくる。

「あー。クイーンコカトリスの卵を食べることで、国が滅ぶだなんて気づかなかったんですよ。だから、つい。」

「はあ。まあ、いい。それよりどうしてクイーンコカトリスの卵を持ってるんだ?そして、なぜ君は無事なんだ?」

ギルドマスターは呆れたようにため息をついた。だが、それ以上食べようとしたことについて訊かれなかったということはオレの説明で納得してくれたんだろう。

「いや、オレが持ってたというかここにいるトリスが、クイーンコカトリスから卵を預かってたらしいんです。オレも今日までオレの家にクイーンコカトリスの卵があるだなんてまったく知らなくて・・・・・・。」

オレはそう言って、オレの一歩後ろに立っているトリスをギルドマスターに紹介した。ギルドマスターはトリスの方に視線を向ける。

「初めて見る顔だが・・・・・・君は冒険者なのかね?」

トリスのつま先から頭のてっぺんまで見て、ギルドマスターはトリスに訊ねた。
トリスはギルドマスターの視線に不敵な笑みを浮かべている。

「冒険者なんぞではないのじゃ。妾はそなたらのいうコカトリスじゃ。」

「「「・・・・・・コカトリスっ!!!?しかも、色つきだとっ!!」」」

トリスは優美に微笑んでその姿を獰猛なコカトリスの姿に変化させた。
とたんに臨戦態勢をとるギルドの人たち。よく訓練されているようだ。

「うむうむ。実に良い反応じゃ。しかしそんなに警戒するでない。妾はおぬしらに危害を加えるつもりはない。妾はリューニャが望まぬことはせぬのじゃ。」

「・・・・・・それは、リューニャ殿が望めば我々に危害を加えるということかね?」

「そうじゃ。じゃが、リューニャはそのようなことは望まぬじゃろうなぁ。」

ギルドマスターがブルブルと震えながらトリスに質問を投げかける。っていうか、オレ、ギルドマスターたちに危害なんて加えるつもりないし。痛いの嫌じゃん。血を見るのも苦手だし。

「・・・・・・わかった。みんな、ここにいる色つきのコカトリスは我々を襲ってはこないようだ。武器をしまいたまえ。」

ギルドマスターがそう言うと、ギルドにいた面々はゆっくりとした動作で武器をしまい始めた。それでも、警戒は解けきらないのか、怯えの色が見える目でオレたちを見ていた。

「あー。ところで、ユージンさんはもう来ていますか?今日、でしたよね?コカトリスの卵をどっちが速く割れるか競うことになっているのは。」

オレは緊迫した雰囲気を振り払うかのように務めて明るい声で切り出した。
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