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「信じられないのなら勝負しましょうか?でも、オレは冒険者にはなりません。だから、力試しというのはどうでしょうか?一流の冒険者ならコカトリスの卵を割ることなんて朝飯前、ですよね?」

戦闘能力で勝負をするというのであれば、オレは冒険者にならなければならない。だが、コカトリスの卵を割るだけなら冒険者じゃなくてもいいはずだ。

「コカトリスの卵だとぉ!?そんなものどこにあるっていうんだよ!なあ、マスター、ここにはコカトリスの卵などないだろう?」

ユージンはそう言ってオレ達の様子を伺っていたギルドマスターに声をかけた。

あれ?コカトリスの卵ってギルドにないのか?依頼とかでもコカトリスの卵の採取依頼くらいあるだろうに。ああ、依頼品だから渡せないってことなんだろうか。

「・・・・・・今は、ないな。どうだ、コカトリスの卵を取ってくるのであれば冒険者じゃなくても問題ない。コカトリスの卵を割るという勝負ではなく、コカトリスの卵を用意することから初めてはどうだろうか?シラネが言うくらいなんだから、このリューニャという男はコカトリスの卵くらい簡単に用意することができるんだろう?」

「そうね。私がリューニャに会ったのもコカトリスの巣だったわ。リューニャはコカトリスの卵を採取しに来たついでにローゼリアに置いて行かれた私を助けてくれたんだもの。リューニャだったらコカトリスの卵を取ってくるくらいなんてことないわ。」

ギルドマスターとシラネ様は親しい間柄なのだろうか。なんだか随分打ち解けているような気がする。まあ、冒険者とギルドマスターということだからそれなりには親しいのだとは思うけれど。

「・・・・・・わざわざコカトリスの巣まで採りに行かなくてもオレの家にありますよ。今、持ってきます。」

「ほぉ。家にあるのか。ユージンの分もあるのか?」

「ええ。昨日たくさん運びましたから。」

ギルドマスターはニヤッと笑って楽しげに聞いてくる。オレは、それになんてことはないと返答する。すると、ユージンの顔色が青く染まったような気がした。

「・・・・・・ばかな。料理人見習いが、コカトリスの卵を複数個も所持しているだとぉ。」

ユージンは先ほどまでの威勢はどこへやら、少し腰が引けているように見えた。

「じゃあ、オレ家に一度帰りますね。どこでやりましょうか?ギルドの一室をお借りすることは可能でしょうか?」

オレはギルドマスターに一言声をかけた。

するとギルドマスターは豪快に笑った。

「はっはっはっ。闘技場は冒険者じゃなければ使っては行けない。これは何故だというと冒険者と一般人が戦闘を行うことで一般人が怪我をすることを避けるためもある。だが、今回はコカトリスの卵を割るだけだ。ギルドの闘技場を使っても何ら問題はないだろう。どうせなら、観客は多い方がいいだろう。今日だと急すぎて人が集まらないかもしれないからな。準備期間も含めて、明後日というのはどうかね?」

「ええ。オレは構いませんよ。」

どうせなら見物人が多い方がいいとギルドマスターが言う。なぜ、そんなことを言うのかはわからないが、ギルドの闘技場を借りるのだし、頷いておいても問題はないだろう。それに、コカトリスの卵を割るところを見られて困るわけでもない。なんたってただ卵を割るだけなのだ。何の問題もない。

「ユージンもそれでいいな?」

「・・・・・・あ、ああ。」

ユージンは力なく頷いた。
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