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 オレは女性に攻撃をしかけている魔物を視界に入れた。それは赤いコカトリスだった。

 色つきだ。きっとオレが以前みかけた色つきのコカトリスに間違えない。

 赤い色のコカトリスは通常よりも攻撃力に秀でている。これなら、低レベルの冒険者なら一撃であの世行きだ。

 目の前の女性はその攻撃を何回を受けているようなのでそれなりの高レベルの冒険者だと思われる。しかし、女性には色つきのコカトリスを倒すだけの攻撃力が備わっていない。


 オレは迷わずコカトリスの前に姿を現した。そうして、女性からオレへとコカトリスの注意を向けさせる。

「オレが相手だ。・・・あんたは逃げろ。」


 女性は突如沸いて出たオレに驚いて目を見張る。だが、逃げる気配はない。あまりの恐怖に腰を抜かしてしまっているのだろうか。

 だが、コカトリスも待っていてはくれなかった。視界にオレを認識すると、オレに向かって攻撃をしかけてくる。

 オレは女性から離れるようにコカトリスを誘導していく。すべての攻撃を避けながら。


「オレがこいつを引きつけるから、あんたはさっさと逃げろ。オレはこいつから逃げることはできても、倒すことはできない。だから、早く逃げろ。」


 オレは決して強くない。だって、料理人見習いだから。ただ、オレは相手の弱点をつくことが得意なだけだ。そして、逃げ足も普通の人よりは早いだけなのだ。

「あ・・・。あ・・・。」


 女性はオレの言葉を聞いて、一歩一歩後ずさる。そうして、岩場の影に隠れた。

 どうやら洞窟の外まで出るだけの体力がないらしい。仕方ない。あれだけ高度な回復魔法を連発していたのだ。きっと魔力の回復薬も切れてしまったのだろう。

 

 仕方ない。コカトリスを撒くか。


 コカトリスを撒くのはかなり大変だ。こいつ妙に気配に敏感だからなぁ。しかも、オレ以外の人間がいるし。あの女性は気配を消すのが得意そうには見えない。そうなると、あの女性からコカトリスを遠くまで引き離さなければならない。


 オレはコカトリスに向かって高くピィィィィッと口笛を鳴らした。

 コカトリスの目の色が黒から赤に染まる。これは、コカトリスの警戒心が高まった時におこる。つまり、コカトリスは今、オレに対して警戒心を更に高めたあ状態だ。これならば、コカトリスはオレ以外の存在を気にもとめないだろう。


「こっちだ。」


オレは低く呟くと、洞窟のさらに奥に進んでいく。もちろん、コカトリスはオレの後を追ってくる。嘴で攻撃をしかけながら。

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