婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

番外編

８

「では、マーニャたちが出てくる前にうなぎを捌くところまでやってしまいましょうか。ユキ、手伝ってくれるかな？」

「ええ。良いわよ。じゃあ、マユさん。台所に行きましょう。」

「あ、はい。」

　ユキさんは大人しく座っていたが、マコトさんにお願いされて立ち上がった。そして、私の手をひいて台所に案内してくれた。
　実は以前、私はマコトさんの家で迷子になったことがある。しかも家の中で迷子になったというのに全然違う場所にでてしまったという曰く付きだ。しかも、一回まだまだしも何回も繰り返してしまったのだ。
　それからというもの、私はマコトさんの家の中を一人で歩くことを禁止されている。こうして、誰かに手を取ってもらわないとマコトさんの家の中を歩いてはいけないことになっているのだ。
　でも、たまにくらい迷子にならないとイザナギ様が寂しがっていそうだけれども。

「あ、よかった。今日は無事に台所までたどり着けましたね。」

「は、はは……。」

　台所では先に来ていたマコトさんがうなぎを捌く準備をして待っていた。
　木で出来たまな板と、小さめの包丁を持っている。あれは、なんていう包丁だろうか？普通の包丁とは形状がことなっている。
　刃の先端が三角になっており、鋭い形状をしている包丁だ。

「あの、その包丁は……？」

「ああ、これですか。これはうなぎ犬といいます。」

「え？うなぎ……犬？それ、犬なんですか？」

　マコトさんが教えてくれた包丁の名前に私は素直に驚いた。だって、包丁なのに犬なのだ。なぜ、犬なのだろうか。

「……冗談です。ちょっとくらい冗談に乗ってくれてもいいじゃないですか。」

「はいはい。マユさんとは世代が違うから通じませんよ。これはね、うなぎ裂きって言うんですよ。これは関東型のうなぎ裂きよ。関東型の他にも名古屋型や京都型などがあるわ。少しずつ形状が違うのよ。」

「ああ、そうですか。うなぎ裂きっていうんですね。へぇ。初めて見ました。」

「普通は使わないからね。」

　マコトさんの代わりにユキさんが包丁について教えてくれた。

「気を取り直して……。まずは、こうしますっ！！えいっ！！」

　そう言うとマコトさんは釘とハンマーを取り出した。
　
　なんでうなぎを捌くのに釘とハンマーがいるのっ！！？

　訳がわからず思わず目を広げてマコトさんの奇行を見つめる。
　すると、マコトさんは、うなぎの頭にハンマーでガンガンと釘を打ち付け始めた。

「ええええっ！！？マコトさんってば、な、なんの恨みがうなぎにあるんですかっ！！？」

　マコトさんの意味不明な行動に思わず私は叫び声をあげてしまった。