537 / 584
五章
5ー44
しおりを挟む「え?転移、できないの……?」
プーちゃんが転移できないだなんてどういうことなんだろうか。
転移できないのは、プーちゃんが生まれ変わりの列に並んでいたことと関係があるのだろうか。
イザナギ様の話だと、この列に並んでいるのは死んだ精霊だと言っていたし。もしかして、プーちゃんは死んでいるから現世であるマコトさんの家に転移することができないのだろうか。
「……できないのだ。」
プーちゃんは転移が出来ないことに……、もといホンニャンの元へ行けないことに落ち込んでガックリと肩を落とした。
「プーちゃん、ここにいるってことは死んじゃったの?だから、マコトさんの家に転移できないんじゃ……。」
「死んでないのだっ!」
私が、プーちゃんが死んでいるためにマコトさんの家に戻れないんじゃないかと告げると、プーちゃんは口調を荒くして抗議する。
「え?死んだんじゃないの?てっきり、ここに並んでいるからプーちゃんは死んでしまったものだと思ったわ。なら、どうしてここにいるの?」
死んだ精霊が生まれ変わるのを待つために、この長い行列に並んでいるのだとイザナギ様から聞いていた。だから、てっきりプーちゃんも死んだのだと思ったのだけれども、違ったらしい。
なら、なぜプーちゃんは精霊が生まれ変わるための列に並んでいるというのだろうか。
「……家族というものを知りたいのだ。」
プーちゃんは少し躊躇した後に、聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声で呟いた。
「え?家族?ホンニャンはプーちゃんの家族でしょう?マーニャたちや私だってプーちゃんの家族同然だと私は思っているわ。違うの?」
プーちゃんは家族を求めていたの?だから、生まれ変わろうとした?生まれ変わったら親や兄弟がいるから?
というか、精霊に親っているのか?
タマちゃんだって、スーちゃんだって、ピーちゃんだって、親はいなかったはず。私は精霊の家族を見たことがない。私が見た精霊は皆、卵から産まれてきたのだ。その卵のそばに精霊の親らしき存在はなかった。
生まれ変わったとしても、家族という存在があるのかどうか不明だ。
「我は血の繋がった家族が欲しいのだっ!」
「……ホンニャンはプーちゃんと血の繋がった家族でしょ。違うの?」
プーちゃんの血の繋がった家族にはホンニャンがいる。ホンニャンは今は亡き魔王様とプーちゃんの実の子のはずだ。
今更血の繋がった家族が欲しいとはどういうことだろうか。ここで、ホンニャンのこと否定したらただじゃおかないわ。
「ホンニャンは血の繋がった我の娘なのだっ!可愛い可愛い娘なのだっ!!」
「じゃあ、別に生まれ変わらなくてもいいじゃない。ホンニャンの側にいてあげなよ。ホンニャンも寂しがっているし。」
どうやらプーちゃんはホンニャンのことは大切なようだ。
なら、なおのこと、ホンニャンを置いてプーちゃんが生まれ変わろうとしている理由がわからない。
「マオマオとホンニャンの姿を見て思ったのだ。母親という存在はなんなのだろうかと。ホンニャンは生まれて間もなくマオマオと死別した。なら我がホンニャンの母親も努めなければと思たのだ。でも、我には母親がいない。我はどうマオマオに接したらいいのかわからないのだ。だから、我は生まれ変わって母親という存在をこの身で感じ取りたいのだっ!」
プーちゃんはそう言って力説した。
うん。ツッコミどころ満載な内容である。
一つ一つ突っ込んでみようか。
「なんで今なの?ホンニャンに母親が必要で、プーちゃんが母親代わりをつとめたいって言うなら、なんでホンニャンが産まれてから何年も経った今なの?なんで今までホンニャンの側にいてあげなかったの?何をしてたの?」
「……。母親を知る方法を探していたのだ。それから精霊たちに話を聞いて生まれ変わりのことを思いついたのだ。それが今からかれこれ10年以上前。知ってからすぐに列に並んだのだが、もう10年以上も時が経ってしまったのだ。」
ポツリポツリと事情を語りだすプーちゃんに私は頭を抱えた。10年以上もこの列に並んでいたとは……どれだけ気が長いんだ。プーちゃんは。それに、そんな長い間並んでいるんだったらさっさとホンニャンのところに戻ればよかったものを。
母親役なんて誰かが教えてくれただろう。というか、プーちゃんなりに親としてホンニャンと接してあげればいいだけだったのに。なんで、ここまで拗れたんだ?
20
お気に入りに追加
2,573
あなたにおすすめの小説
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~
うみ
ファンタジー
「魔法のリンゴあります! いかがですか!」
探索者ギルドで満面の笑みを浮かべ、元気よく魔法のリンゴを売る幼い少女チハル。
探索者たちから可愛がられ、魔法のリンゴは毎日完売御礼!
単に彼女が愛らしいから売り切れているわけではなく、魔法のリンゴはなかなかのものなのだ。
そんな彼女には「夜」の仕事もあった。それは、迷宮で迷子になった探索者をこっそり助け出すこと。
小さな彼女には秘密があった。
彼女の奏でる「魔曲」を聞いたモンスターは借りてきた猫のように大人しくなる。
魔曲の力で彼女は安全に探索者を救い出すことができるのだ。
そんな彼女の夢は「魔晶石」を集め、幻獣を喚び一緒に暮らすこと。
たくさんのもふもふ幻獣と暮らすことを夢見て今日もチハルは「魔法のリンゴ」を売りに行く。
実は彼女は人間ではなく――その正体は。
チハルを中心としたほのぼの、柔らかなおはなしをどうぞお楽しみください。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜
山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。
息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。
壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。
茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。
そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。
明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。
しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。
仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。
そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる