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五章

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「はははっ。今度の魔王様は随分と行動的ですね。」

マコトさんがそう言ってにこやかに笑う。

いや、マオマオも結構行動的だったと思うけど。というか、魔王であるホンニャンよりもタイチャンの怒りの方が怖いんだよね。ほんとうに。

「むぅ。だから、魔王様じゃなくってホンニャンって呼びなさいっ!」

「はいはい。わかりました。ホンニャン様。」

「わかればよろしい。」

マコトさんがホンニャンのことを魔王様と呼ぶのが気に喰わないらしいホンニャンは、マコトさんに名前で呼ぶように告げた。

マコトさんもホンニャンに合わせて名前を呼ぶと、ホンニャンは嬉しそうににっこりと笑った。

うぅ。ホンニャン。可愛いよぉ。

でも、タイチャンが怖いよぉ。

もう今頃きっとホンニャンが魔王城にいないって大騒ぎになっているはずだ。そうして、私がいないことに気づいていてもおかしくない。そこから導き出されるのは、私がホンニャンを攫って逃げた可能性だ。

大変だ。

見つかったらホンニャンに怒鳴られる。っていうか、もしかして半殺しの目にあう?

「ほ、ホンニャン。タイチャンが心配しているといけないから帰りましょう。ね?ね?マコトさん、ホンニャンだけ魔王城に送り届けてくれませんか?」

最悪ホンニャンだけ返せば、タイチャンの目をごまかせるかもしれない。

まだそんなに時間が経ってないし。もしかしたら、まだホンニャンが魔王城からいなくなったってことに気づいていないかもしれない。可能性は限りなく0パーセントに近いけれど。0じゃない。きっと、0.1パーセントくらいはあるはずだ。たぶん。

「いやよ。だって、マユ。パパに会うためにここに来たのでしょう?それに、お姉ちゃんにも会いたいもの。ここでやりたいことがいっぱいあるの。だから、帰らないわ。」

ホンニャンはそう言ってプイッと横を向いてしまう。マコトさんは困ったように笑っている。

「いや。でも、ほら。タイチャンが心配してここまで追いかけてきちゃったら大変だから。ね?タイチャンの許可を得てからまた来ましょう。ね?」

ホンニャンと目線を合わせてお願いするが、ホンニャンはすぐに視線をそらしてしまう。

「いやよ。こうでもしないと、タイチャンは魔王城から出る許可なんて出してくれないじゃない。それはマユも知っているでしょう?」

やっぱりホンニャンは頷いてはくれませんでした。私はガックリと肩を落とした。

「・・・タイチャンには私から言うから。大丈夫よ。マユだったら魔王城から追放されるくらいで済むから安心なさい。」

と、ホンニャンは私を安心させるように微笑んだ。

ホンニャンは私の半分の年齢もまだ生きていないのに、なんて心強いんだろう。

ってか、私がダメダメの意気地なしなのか。

ホンニャンみたいに気を強く持たないとダメだなぁ。

・・・ん?・・・あれ?

「え?魔王城から・・・追放?」

ホンニャンっ!?それ結構な大事だからっ!!

いや、魔王城から追放されても住む場所あるからいいけどね。もし、そうなっちゃったらホンニャンに会えなくなってしまうではないか。それは大問題だ。

「そう。タイチャンは貴女の命までは取らないから安心しなさい。」

「で、でもっ!追放になったらホンニャンに会えなくなってしまいますっ。」

「そうね。私もマユに会えなくなるのは悲しいわ。でも、マーニャたちは魔王城から追放されることはないから問題ないわ。」

そう言ってホンニャンは私を安心させるかのようににっこりと笑った。

 

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