511 / 584
五章
5ー18
しおりを挟む「はははっ。今度の魔王様は随分と行動的ですね。」
マコトさんがそう言ってにこやかに笑う。
いや、マオマオも結構行動的だったと思うけど。というか、魔王であるホンニャンよりもタイチャンの怒りの方が怖いんだよね。ほんとうに。
「むぅ。だから、魔王様じゃなくってホンニャンって呼びなさいっ!」
「はいはい。わかりました。ホンニャン様。」
「わかればよろしい。」
マコトさんがホンニャンのことを魔王様と呼ぶのが気に喰わないらしいホンニャンは、マコトさんに名前で呼ぶように告げた。
マコトさんもホンニャンに合わせて名前を呼ぶと、ホンニャンは嬉しそうににっこりと笑った。
うぅ。ホンニャン。可愛いよぉ。
でも、タイチャンが怖いよぉ。
もう今頃きっとホンニャンが魔王城にいないって大騒ぎになっているはずだ。そうして、私がいないことに気づいていてもおかしくない。そこから導き出されるのは、私がホンニャンを攫って逃げた可能性だ。
大変だ。
見つかったらホンニャンに怒鳴られる。っていうか、もしかして半殺しの目にあう?
「ほ、ホンニャン。タイチャンが心配しているといけないから帰りましょう。ね?ね?マコトさん、ホンニャンだけ魔王城に送り届けてくれませんか?」
最悪ホンニャンだけ返せば、タイチャンの目をごまかせるかもしれない。
まだそんなに時間が経ってないし。もしかしたら、まだホンニャンが魔王城からいなくなったってことに気づいていないかもしれない。可能性は限りなく0パーセントに近いけれど。0じゃない。きっと、0.1パーセントくらいはあるはずだ。たぶん。
「いやよ。だって、マユ。パパに会うためにここに来たのでしょう?それに、お姉ちゃんにも会いたいもの。ここでやりたいことがいっぱいあるの。だから、帰らないわ。」
ホンニャンはそう言ってプイッと横を向いてしまう。マコトさんは困ったように笑っている。
「いや。でも、ほら。タイチャンが心配してここまで追いかけてきちゃったら大変だから。ね?タイチャンの許可を得てからまた来ましょう。ね?」
ホンニャンと目線を合わせてお願いするが、ホンニャンはすぐに視線をそらしてしまう。
「いやよ。こうでもしないと、タイチャンは魔王城から出る許可なんて出してくれないじゃない。それはマユも知っているでしょう?」
やっぱりホンニャンは頷いてはくれませんでした。私はガックリと肩を落とした。
「・・・タイチャンには私から言うから。大丈夫よ。マユだったら魔王城から追放されるくらいで済むから安心なさい。」
と、ホンニャンは私を安心させるように微笑んだ。
ホンニャンは私の半分の年齢もまだ生きていないのに、なんて心強いんだろう。
ってか、私がダメダメの意気地なしなのか。
ホンニャンみたいに気を強く持たないとダメだなぁ。
・・・ん?・・・あれ?
「え?魔王城から・・・追放?」
ホンニャンっ!?それ結構な大事だからっ!!
いや、魔王城から追放されても住む場所あるからいいけどね。もし、そうなっちゃったらホンニャンに会えなくなってしまうではないか。それは大問題だ。
「そう。タイチャンは貴女の命までは取らないから安心しなさい。」
「で、でもっ!追放になったらホンニャンに会えなくなってしまいますっ。」
「そうね。私もマユに会えなくなるのは悲しいわ。でも、マーニャたちは魔王城から追放されることはないから問題ないわ。」
そう言ってホンニャンは私を安心させるかのようににっこりと笑った。
10
お気に入りに追加
2,573
あなたにおすすめの小説
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜
山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。
息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。
壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。
茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。
そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。
明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。
しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。
仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。
そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる