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四章
4ー76
しおりを挟むプーちゃんの発言に、お通夜のような雰囲気が辺りを包み込む。
マーニャたちも仲良くなった魔王様が死ぬと聞いて、不安気な表情をしていた。
「・・・プーちゃん。それならば生きているうちに魔王様に会わなくっちゃ。勝負なんてしなくていいから。魔王様に会いに行こう。女王様も、魔王様に会いに行きましょう。」
魔王様がもうすぐ死んでしまうのであれば、会いに行った方がいい。
特に女王様はもうずっと魔王様には会っていないようだし。
プーちゃんはいつ魔王様に会ったのかわからないけれども、少しでも長くいたいと思うだろう。
魔王様だってきっと最期まで一緒にいたいはずだ。
『・・・わかったのだ。』
「ええ。・・・行くわ。」
プーちゃんも女王様も表情は暗いが確かに頷いてくれた。
しかし、プーちゃんはなんで魔王様の死期が近いことがわかったのだろうか。
☆☆☆
「魔王様。どうやら人間がこちらに近づいてきているようです。」
「ふぉんなよにゃかにかふぇ?ふぁいチャンよぉ。にんふぇんはすふぇににぇてぇるしぇかんしゃえ?にゃんかぁのまちふぁいふぇはにゃいのはふぇ?(こんな夜中にかえ?タイチャンよ。人間はすでに寝ている時間じゃ。なんかの間違いじゃないのかえ?)」
「いえ。こちらに近づいてくる気配があります。」
草木も眠る丑三つ時。
魔王城の一室で今から眠りにつこうとしていた魔王だが、タイチャンによってその眠りは奪われることになった。
ちなみに寝るところだったので入れ歯を外しているため、しゃべると口の端から空気が漏れてしまうため魔王の言葉は聞き取り辛い。
だが、そこは魔王の腹心の部下のタイチャンである。
魔王が言おうとすることはなんとなくわかる。たぶん。
タイチャンの言う事には人間が魔王城に近づいてきているというのだ。
魔王はそのあまりの突拍子もないタイチャンの言葉に目を極限まで見開いた。
ポロリッ。
ポロリッ。
あまりにも目を見開いてしまったゆえに、魔王の左右の目から義眼がぽろりとこぼれ落ちた。
「「まおーさま。眠いですのぉー。」」
魔王の左右の目から零れ落ちたミギーとヒダリーが眠い目を擦り魔王に訴える。
実は魔族は夜行性ではない。
元は夜行性だったのだが、魔王の政策の一つとして人間との共存を目指して人間と生活リズムを極力あわせることにしていたのだ。
そのため、今はすでに就寝している時間である。
「敵襲です。魔王様。このような時間に魔王城に来るものは敵しかいません。」
「大変だっ!人間が門まで来てるぜ!!」
タイチャンの言葉に被せるように、魔王の居室に一人の魔族が飛び込んできた。
「チーチャン!気づくのが遅いっ!なぜもっと早く気づかないのですかっ!」
タイチャンは飛び込んできた魔族・・・チーチャンに向かって怒声を浴びせた。
「あーもう。タイチャンはうるさいな。小姑かよ。仕方ねえだろ。俺は寝てたんだから。」
「寝てたっ!?寝てたですってっ!!チーチャンは今日、夜番でしょう!!」
「って!!」
ポカっとタイチャンがチーチャンの頭を叩く。
そう。
チーチャンは魔王城の夜番だったのです。
夜番は魔王城の夜の見張り番のことで、夜中に敵や賊が侵入してくるのを防ぐ役割をしている。
一人だけではなく数人で夜番を持ち回りしているのである。
その夜番であるチーチャンが人間が来ていることに気づくのが遅れた。
これは忌々しき事態である。
タイチャンにチーチャンが怒られるのも無理はないのだ。
「ふぉふぉちゃない。ふぁいちゃん、ちぃちゃん。ふぉのよぅにゃしきゃんにきふぁのふぉわふぇふぁあるにょかもしふぇんにゅえ、にんふぇんふぉむふぁえひれりゅのしゃ。(仕方ない。タイチャンにチーチャン。このような時間に来たのも訳があるのかもしれぬゆえ、人間を迎え入れるのじゃ。)」
「魔王様!そ、そんな悠長なこと言ってる場合ですかっ!?」
「ん?あー魔王様入れ歯外してんだな。ごめん。俺、何言ってっかまったくわかんねぇや。タイチャン通訳してくれ。」
残念ながら、チーチャンは魔王の言うことがわからなかったようだ。そのため魔王が何を言っているのかわかっていそうなタイチャンに訊ねた。
「魔王様は人間を迎え撃つようにとおっしゃっています。」
タイチャンは魔王の言葉をそう解釈していた。
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