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四章
4ー6
しおりを挟む森の木陰亭は大通りから二本ほど外れた小道にあった。
ひっそりとした佇まいであるが木のぬくもりが感じられるような店構えだった。
森の木陰亭は食事をメインにしているのか、店の前に木で作られたメニュー板が置かれていた。
「こんにちはー。」
「こんにちは。」
マリアと一緒に中に入ってみると数人のお客さんが木でできたテーブル席についていた。
「・・・。」
お客と思われる人たちは一度こちらをちらりと見たが、またすぐに食事に戻ってしまった。
構わず中に入ってみるがお店の人が一向に出てくる気配がない。
どうしたものかとマリアと顔を見合わせていると座っていた一人の男性がこちらに声をかけてきた。
「嬢ちゃんたちこの店は初めてか?」
「は、はい。」
「屋台を営んでいる方にこちらを勧められてきたんです。」
寡黙そうな男性はにぃっと目を細めた。
「そうかそうか。外にあるメニューは見たか?」
「はい。」
私とマリアは男性の言葉に頷いた。
メニューは見た。
メインが一種類に前菜が二種類にスープが一種類だった。
飲み物は特に記載されていなかった。
「この店では外にあるメニューに書かれたものしか出てこないんだ。だから注文はしなくても座って待っていれば料理が出てくる。」
「飲み物はどうすればいいんですか?」
「ああ。水は出てくるぞ。それ以外が飲みたかったら持参だな、持参。」
どうやら空いている席に座って待っていれば料理が自動的に運ばれてくるらしい。
食事をしにきたんじゃないんだけどな。とマリアと顔を見合わせる。
ただ、お店の中には店員さんと思わしき人は見当たらなかった。
お店の奥の方まで探しにいくのは気が引けるので、マリアと私は席に座って待つことにした。
「なんか変わったお店だね。」
「そうね。このタイプのお店は初めてだわ。」
「でも、とっても居心地のいい空間だね。」
「そうね。お店の中に充満する木の香りが安らぎをもたらしてくれるような気がするわ。」
空いている席に座ってマリアとおしゃべりを楽しむ。
もちろん話題はこのお店のことだ。
どのくらい経っただろうか、マリアと話しているとガラガラガラという何かを引きずる音と、トコトコという可愛らしい足音が聞こえてきた。
そうして私たちのテーブルの前で足跡がピタッと止まった。
私とマリアは話すのをやめて足音がした方を向いた。
そこには、カートの上にのった湯気の出ている食事が二人分あった。
見た目からすると外にあったメニューと一緒だ。
これは、私たちの食事だろうか。
しかし、このカートは勝手にここまで来たのだろうか。
いや、直前まで足音がしていたはずだ。
「下だよ。お嬢ちゃんたち。」
キョロキョロと視線を漂わせていると先ほどの男性が教えてくれた。
「・・・下?」
下ってなんだろうと思いつつも、カートの下に視線を移した。
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