386 / 584
三章
3ー153
しおりを挟む『ま、マーニャ様ぁ~~~~~!!!』
マーニャが顔を出してプーちゃんの名前を呼ぶとプーちゃんがものすごい勢いでマーニャに絡みついた。
文字通り竜の巨体でマーニャをグルグルに絡めている。
『く、苦しいのー。』
『す、すまぬっ!ついっ。マーニャ様、ごめんなさいなのだ。』
『むぅ。プーちゃん気を付けてなのー。』
プーちゃんに締め上げられてマーニャは少しご機嫌斜めである。
「プーちゃん、落ち着いた?なにがあったの?」
マーニャを見たことで冷静さを取り戻したプーちゃんに尋ねる。
ちなみにマーニャはプーちゃんの頭の上に乗って毛づくろいをしている。
マーニャは高いところが好きらしい。
プーちゃんから離れないところを見ると、マーニャもプーちゃんのことが心配なんだろう。たぶん。きっと。
『うむ。ミルトレアが呪われた大地についたとたん急に消えたのだ。どろんっと。』
「うんうん。それで?」
どうやらミルトレアちゃんは消えたらしい。
人間業じゃないよね。確かに。
でも、もしかして転移の魔法が使えたとか?
でもでも、プーちゃんがこんなに怖がるくらいだから他にも何かあったのだろう。
そう思って続きを促す。
『それだけだが?』
「へ?」
「は?」
「ほ?」
プーちゃんの返答に思わず聞き返してしまう私とマリアとマコトさん。
いや、だって。ほら。
聞き返したくなるじゃん。
プーちゃんがあれほど怖がっているんだから。
「えっとぉ・・・ミルトレアちゃんがいきなり消えたから怖かったってこと・・・?」
にわかに信じられない思いでプーちゃんに確認をとる。
すると、プーちゃんは仰々しく頷いた。
『うむ。気配もなく消えたのだ・・・。怖かった。あれは人間ではないぞ・・・。』
その時のことを思い出したのか、ブルッとプーちゃんが震えた。
その振動でプーちゃんの頭の上に居たマーニャがバランスを崩した。
『にゃっ!!』
『痛っ!!』
バランスを崩したことに驚いたマーニャは、バランスを取るためにプーちゃんの頭に爪を立てる。
プーちゃんは、マーニャの爪が痛くて声を上げた。
ってか、猫の爪なのに硬い竜の鱗を貫くの・・・?
普通爪なんて刺さらないよね。
ツーっとプーちゃんの額に赤い筋ができる。
どうやらマーニャの爪で怪我をしてしまったようだ。
マコトさんはプーちゃんの血を見て、爛々と目を輝かせた。
そうして、鞄をごそごそとあさると何やらでっかい絆創膏を取り出した。
その絆創膏はマーニャくらいのサイズがあった。
それをプーちゃんの額にペタッと貼っている。
「おお。マコトさん流石手早いですね。プーちゃんの手当てをしてくれてありがとうございます。でも、猫の爪でついた傷くらいプーちゃんなら放っておいても治るのでは?」
手早い処置に関心していると、マコトさんがにっこりと笑って首を横に振った。
「あれ魔道具なんです。竜の血は貴重なので魔道具で吸い取っておかなければと思いまして。ふふふっ。これであんな魔道具やこんな魔道具が作成できるかもしれません。ふふふふふふっ。」
関心して損した。
どうやらマコトさんは自分の探求心を満たすためにプーちゃんに絆創膏もとい魔道具を貼り付けたらしい。
マコトさんらしいというかなんというか。
って、話がそれた。
ミルトレアちゃんのことだよ。ミルトレアちゃんの!
「それで、ミルトレアちゃんは今どこに?」
『知らぬ。すぅっと消えたのでな。あれは今思い出しても怖いかったのだ。まるで幽霊のようだった。・・・はっ!幽霊っ!!いやーーーーーーーーっ!!!』
「ちょっと待て。プーちゃん竜なのに幽霊怖いのっ!?」
ミルトレアちゃんが幽霊かもということに思いいたってプーちゃんは悲鳴を上げる。
青竜なのに幽霊が怖いって初めてきいたんだけど。
というか、永い年月を生きているプーちゃんにとって幽霊はそんなにレアな存在じゃないと思うんだけど。
ってか、プーちゃん強いんだから幽霊なんて屁でもないはずだよね?
『幽霊?幽霊ってなにー?ここでふわふわ浮いてるのがそうなのー?』
幽霊を怖がっているプーちゃんとは対照的にマーニャは面白そうにプーちゃんの後ろをジッと見つめている。
私には何も見えないんだけど、そこに幽霊がいるのだろうか。
『なっ!!そんなところにも幽霊がっ!!?』
プーちゃんはマーニャの言葉に反応して後ろを振り向いてカチンッと固まった。
どうやら本当に幽霊がいるようだ。
「え?マーニャ見えるの?幽霊?」
『うん。見えるよー。たくさんいるのー。ほら、ここにも、あそこにも、あっちにもー。いっぱいなのー。』
『・・・え?え?え?・・・うぎゃあああああああああああ!!!!!!』
マーニャが何もない空間をジッと見つめている。
それが何か所もある。
どうやらそこに幽霊がいるようだ。私には見えないけれど。
プーちゃんにはその幽霊が見えるらしい。
マーニャが示す方向を向いていちいち悲鳴を上げている。
うん。見えないって素晴らしい。
それにしても、こんなにも幽霊がいるのに今まで幽霊だと気づかなかったプーちゃんって・・・。
「ミルトレアちゃんに逃げられちゃったわね。勘がいいのね。」
「・・・そうだね。でも、なんでプーちゃんと一緒に呪われた大地に行ってから消えたんだろう。」
「そうね。不思議だわ。明日にでも呪われた大地に行ってみましょう。」
唯一まともなマリアと相談をする。
ミルトレアちゃんがいないことには原因の究明もできないしね。
しっかし、これだけ人数がいてまともな人間がマリアだけだなんて・・・なんだかちょっとどうなんだ?
類は友を呼ぶっていうけど、プーちゃんの周りにはほんと・・・って私も類になるのっ!!
え?いや、でもそれでいったらマリアもだよね。うん。
・・・うん?
思わず思考がそれた瞬間にマリアがギロリとこちらを睨んだ。
ああ、そうだ。
マリアさんってば人の心が読めるんでした・・・。
なんか今日も色々前途多難です。
明日はなにか良いことがあるといいな。
こうして私たちの夜は更けていったのでした。
――――――――――――――
長らくお休みしてしまってすみませんでしたm(_ _)m本日より更新再開いたします。またよろしくお願いいたします。
21
お気に入りに追加
2,570
あなたにおすすめの小説
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる