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三章
3ー116
しおりを挟む「ひゃうっ!さっむーいっ!!」
「寒いですねぇ~。」
シロとクロの力を借りて転移してみれば、転移した先は極寒の地でした。
しかも、太陽も出ておらず厚い雲に覆われているので薄暗い。
ちなみにシロとクロは寒いと言って、マーニャたちと一緒にタマちゃんの空間の中に引っ込みました。
タマちゃんの空間は一定の温度で、快適な温度に保たれているそうです。羨ましい。
「こんな時は、ホカホカ君の出番ですっ!!」
マコトさんは高らかに宣言して、鞄の中から10cm四方の薄く白い魔道具を取り出してきた。
って、見た目まんま使い捨てカイロじゃん。
「貼ったところがポカポカ温かくなるんですね・・・。」
「ええ。よくご存知で。これを貼るとあったかくなりますよ。」
ホカホカ君もいいんだけど、正直薄着だから寒いんだよね。
コートとか欲しかった。
マコトさんは私にホカホカ君を手渡してくれたので、早速貼ってみることにした。
「え?あれ?暖かい。」
「でしょ。貼ると体が温かくなるんです。」
想像していたのは使い捨てカイロと同じ効果。すなわち貼ったところだけポカポカ暖かくなるというもの。
しかし、このホカホカ君は貼ったところだけではなく、身体全身がポカポカ暖かくなった。
魔道具ってすごい。
今までマコトさんの魔道具が使い物にならないだなんて思ったりしてすみません。
炊飯器もどきやレンジもどきはすごいと思ってたけど、まさか想像を絶する効果の使い捨てカイロを作ってしまうなんてすごいっ!
「魔道具ってすごいんですね。」
感心したように告げると、
「魔道具じゃなくって僕がすごいんですよ。」
と、マコトさんがドヤ顔をした。
「それにしても、思っていた状態と違いますね。」
「ええ。聞いていたのは草も生えない地だとか。」
そうなのだ。
皇帝陛下から聞いていた話だと呪われた大地は草も生えないところだとか。
だが、実際に来て見たらどうだろうか。
草が生えているのだ。
背丈はあまりなく、生えたばかりと言っていいかもしれないけど確かに生えている。
それに所々耕した後があり、小さいながらも野菜か何かの芽が出ていた。
しかも、しおれているわけではなく、ピンッと葉が張っており元気そうに見える。
皇太子殿下の努力が実ったのだろうか。
これなら、何も心配することはないような気がする。
「でも、虫がいないみたいですね。」
「そうですね、それに近くに川もなければ水場もありません。どこから水を運んで来たのでしょうか。」
虫も水もない。
それなのに植物はなぜこんなに元気に生きているのだろうか。
虫がいなければ、花から花へと花粉を運ぶことができない。
そのため、作物は実がなりづらい。
このまま成長しても人の手で受粉させなければ作物に実はつかないだろう。
それは途方もない作業だ。
だから虫が必要なのだ。
特にミツバチが一番理想的だ。
しかし、気候が寒い所為なのかミツバチどころか虫が全くいない。
さらには、植物が生長するために必要な水も近くにはない。
幸い今は地面がほんのり濡れているから数日前に雨でも降ったのだろうか。
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