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三章

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「あら、やだ。なに絶望したような顔をしているの?」

「どうしたのかしら?マユさん。お米はお鍋で炊くだけなんでしょ?なんでそんなに悲嘆しているの?」

ご飯が炊けないと絶望に打ちひしがれていると、ユキさんとサラさんが心配して覗き込んできた。

サラさん。

鍋で炊くだけっていうけど、時間がかかるし、火加減すっごく難しいんだよ。

サラさんがご飯をお鍋で炊いたらお鍋が破壊されるよ、きっと。スキルの影響で。

「・・・お鍋でご飯を炊ける気がしないです。」

「そんなこと?以外と簡単よ。火加減さえ間違えなければ大丈夫よ。」

とってもいい笑顔で笑うユキさん。

だから、その火加減が私には難しいんだって。

「とりあえず、やってみましょう?言うは易く行うは難しって言うじゃない?」

「ユキさん・・・。それ、もしかして追い討ちかけてます?」

「あ、あれ?え、えっと。と、とりあえずやってみましょう!」

思わずジト目でユキさんを見てしまった。

言葉の用法思いっきり間違ってます、ユキさん。

それじゃあ、ご飯を鍋で炊くのは実際にやってみると難しいって意味になっちゃいますよ。

って突っ込みをいれたい。

 

お米を用意して、水でサササッと軽く研ぎます。

それをお鍋にいれて、水を入れて火をつけてぐつぐつ煮込んでいます。

って、ユキさんすっごく雑なんだけど、本当にこれでいいの?

 

ジュジュッ・・・。ジュワジュワッ・・・。

 

お米が炊けてきたのかいい匂いがあたりに漂いだす。

それと同時に、お鍋からあわ立つような音が聞こえてくる。

大丈夫だよね・・・?

ちゃんといい匂いしてきたもんね。

問題ないよね。

真剣な目で鍋を見つめているユキさんを不安そうに窺う私。対するサラさんは鍋を興味深深に見つめている。

「そろそろ水分が無くなってきたようね・・・。じゃあ、蓋を開けてみるわね。」

そう言ってユキさんは鍋の蓋を開けた。って!お米って蒸らさなきゃいけないんじゃなかったっけ!?

 

シュワーーーッ。ボンッ!!!

 

「「「きゃっ!!」」」

鍋の蓋を開けた瞬間、真っ白な煙が辺りを包み込み視界が奪われた。

それと同時に何かが爆発するような音が響き、

「あっついっ!」

「あちっ!」

「あつっ!」

顔や手に、熱いものが降ってきた。

これは、もしかして。もしかしなくとも・・・。

恐る恐る目を開けると、煙が収まってきたのか徐々に視界が鮮明になっていく。

熱を感じた手を目の前にもってくると、そこには米粒が・・・。

さらには床や壁にも大量の米粒が撒き散らされている。

・・・やっぱり。

「あ、あれ?爆発しちゃいました。えへへ・・・。」

ユキさんはそう言って、右手でポリポリと頭をかいている。

サラさんは呆然として辺りを見回していた。

まさかお米が爆発するとは思わなかったのだろう。

私もお米が爆発するなんて思っても見なかったが。

ってか、普通爆発しないよね。

するはずないよね。なんで、爆発したんだろう。

「ユキッ!!どうしたのじゃっ!!」

すると、爆発音を聞いたのか慌てて村長さんがキッチンに飛び込んできた。

村長さんは迷わずユキさんの側にかけより、両手を握っている。

「えへへ・・・。お米を鍋で炊こうと思ったら爆発しちゃったわ。」

「ユキ・・・。あれほど料理はするなと言ったじゃろ。それにお米を炊くならマコトが作ってくれた魔道具があるじゃろ。それで炊いておくれ。」

「あはは。出来ると思ったんだけどなぁ。お鍋でご飯。」

お米に塗れたユキさんは村長さんの言葉に苦笑しながら答えた。

ちなみにこのお米、蒸らしていないから硬い。

すでに鍋の蓋を開けてまわりに飛び散ってしまっているから食べられないけど、爆発しなくてもあきらかな失敗作であることは確実だ。

「って!ユキさん。料理できなかったんですかっ!でも、以前美味しい和食をご馳走してくれたような気が・・・。」

うん。そうそう。初めてユキさんと会った時に美味しい和食を用意してくれたのだ。

しかも、ホカホカだったので出来立てだったんだと思う。

それなのに、村長さんから料理することを禁止されているユキさんっていったい。

「昔は普通に料理できたんだけどね。ある時、【爆発】っていうスキルが生えてきちゃって・・・。それから作った料理が爆発するようになってしまったのよ。」

「それならそうと先に言ってください。そうしたらお米の炊き方教えてくださいなんて言わなかったのに・・・。」

「・・・ユキの料理はどれも中途半端だったがの。」

ボソッと村長さんが呟く。

どうやら昔はユキさんも料理は作れたけれども、可も無く不可も無くといった感じだったらしい。

ってか、【爆発スキル】ってなんでそんなものが生えてきたんだか・・・。役に立ちそうもないスキルだ。

だとしたら、一体この前の美味しい和食はなんだったんだろうか。

ん?

その前に村長さんなんか重要なことを言っていたような気がする。

「お米を炊く魔道具があるんですか?」

サラさんが、村長さんとユキさんに尋ねている。

ああ、そうだ。それ。

お米を炊く魔道具!!

それって炊飯ジャーなのだろうか。

「ええ。料理ができない私のためにってマコトが作ってくれたの。それに、マコトが冷めた料理を温めてくれる魔道具も作ってくれたから、いつでも暖かい料理が食べられるのよ。こないだマユさんに食べていただいた料理も、マコトが作って送ってくれた料理を温めたものだったの。」

ユキさんが、バツが悪そうに説明してくれた。

料理を温めてくれる魔道具ってレンジみたいなものかな?

というか、そんな便利な魔道具があるなら普及しそうなものなんだけれども、サラさんも初めて聞く魔道具らしい。

「その魔道具って気軽に買えるんですか?」

あったら便利な魔道具たちだ。

是非とも欲しい。特にお米を炊く魔道具は絶対欲しい。

そんな気持ちを込めてユキさんを見つめると、ユキさんはツイッと私達から視線を逸らした。

私とサラさんは思わず互いの顔を見つめてしまう。

「材料が集まればマコトが作ってくれると思うわ・・・。」

「材料が集まればって、入手が難しい材料を使用しているんですか?」

「ご飯を炊く魔道具にも温める魔道具にも火蜥蜴の火炎袋が必要になるわ。それと、青竜の鱗が必要なの。温める魔道具にはこれだけなんだけど、ご飯を炊く魔道具にはこれにプラスして青竜の涙と、ヌメリン草が必要なのよ。プーちゃんが協力してくれれば青竜の素材についてはなんとかなるけれど、どれも入手困難なものばかりだわ。」

「「・・・・・・・・・。」」

ユキさんの告げる材料に思わず私とサラさんは固まってしまった。

マコトさん。

どうしてそんな希少な材料でしか魔道具を作らないんですか。

他に代替の材料で魔道具作ったりしないんですかっ!と声を大にしていいたい。

まあ、プーちゃんにお願いすれば、火蜥蜴の火炎袋以外はどうにかなりそうなんだけどね。

「あ、ヌメリン草は大量発生してるから入手するのは簡単ですよ。そこの山にも大量発生してます。」

「えっ!?」

「ええ!?」

「おおっ!!」

私がヌメリン草のことを伝えると、ユキさんもサラさんも村長さんもビックリしたようで、驚きの声をあげていた。

そうか、田舎だからまだ情報が伝わってなかったんだね。

早く伝えればよかった。

「マユさん・・・さては、増やしたわね。」

「えっ・・・。」

ユキさんにジト目で見られる。

いや、確かに増やしたのは私だけれども。不可抗力だよ。うん。

不可抗力。

「と、とりあえず!火蜥蜴の火炎袋さえ手に入ればご飯を炊く魔道具も、温める魔道具も材料がそろうね!!」

うん。ここはさっさと話題を変えるに限る。

 

 

 

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