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三章

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「失礼ですが、パールバティー様。その乳液は歩くこともままなりません。使い道が・・・。」

「ふふふ。何を言っているの?マユさん。物は使い道次第なのよ。一見役に立たなそうなものでも、角度を変えて見てみれば有用なものに変わるわ。」

「は・・・はあ。」

パールバティー様はそうおっしゃるが、私には乳液をどう使えばいいのかわからない。
どう役に立つのだろう。
歩くこともままならないというのに。
それに、仮に歩けたとしても、身体が滑って良いことなんてあるのだろうか。

「思い浮かばないようね。まあ、いいわ。じゃあヒントをあげる。その乳液、青竜に飲ませてみるといいわ。」

「え?プーちゃんに?」

パールバティー様はにっこり笑っていうが、なんでプーちゃん?
意味がわからない。
プーちゃんに飲ませてみれば意味がわかるのかな?でも、効果持続時間がわからないんだよねぇ。
時間経過で効果が解除されればいいんだけど。
そこがわからないから、気軽に乳液を飲むこともままならないんだよねぇ。

「ではまたね、マユさん。私はそろそろ帰るわ。ここでの用事もすんだしね。」

パールバティー様はそう言って、乳液を10本ほど手に取った。

「これは貰っていくわね。褒美は何がいいかしら?」

褒美は・・・。って、あれ?なにかパールバティー様にお願いしなきゃいけないことがあったような・・・?
パールバティー様が待っていてくださるから、早く思い出さなければ。
早く早くと急かせば急かすほど、思い出せなくなってくる。

「マユさん?まだ決まらない?」

じれったくなったのか、パールバティー様が急かしてくる。
そうだよね。
女王様だし、忙しいよね。
でも、なにか大切なことがあったのに思い出せないのだ。

「あの・・・少し時間をください。」

「まあ、いいわ。報酬が決まったら教えてちょうだい。」

パールバティー様はそう言って踵を返した。
って、トンヌラさん忘れているよ!
トンヌラさんはまだ玄関の横で仰向けに倒れていた。
この短時間じゃ乱れた呼吸が元に戻らなかったようだ。
トンヌラさんは、パールバティー様が行ってしまったことに気がついて立ち上がるが、まだ疲れが残っているようでふらふらとしている。

「にゃ、にゃー・・・。」

トンヌラさんは、なにかを訴えるようにこちらを見て泣いているが、何を言っているのかわからない。
おかしいなぁ。
猫様の下僕スキルでもれなく猫の言っている言葉がわかるはずなのに。
やっぱりトンヌラさんは元が人間だからわからないのかなぁ。

「にゃにゃにゃーー・・・。」

トンヌラさんは何かを訴えるように、キッチンに向かった。そうして、コンロの上に飛び乗る。

「あ、危ないよっ!」

火はついていないが、間違って火でもついてしまったら火傷をしてしまう。
慌てて、コンロの上のトンヌラさんを抱き上げる。

「にゃー・・・。」

手足をジタバタさせながら、私の手から逃げだそうとするトンヌラさん。
その瞳は今度は蛇口を見つめている。

水・・・?
水が飲みたいのだろうか。

器に水を汲みトンヌラさんの前に差し出す。だが、トンヌラさんは首を横に振る。
どうやら水が飲みたいわけではないらしい。

・・・はて?

・・・ん?

火に水?
あ、お湯ってこと!
なるほど。
そういうことか。

私は鍋に水をはり、コンロにかけた。
火をつけるのももうお手のものだ。
すぐにお湯が沸いたので、鍋を手にトンヌラさんの元に向かう。
すると、トンヌラさんは嬉しそうに飛んでやってきた。

「にゃー。」

「待って!まだ熱いよ。ちょっと水でうめるから待って!」

慌てて水を追加してぬるま湯を作る。そこに、トンヌラさんは飛び込んだ。

ボンッ。
ピキッ・・・。

「きゃああああああああ!!!!!」

トンヌラさんは全裸で人間の姿に戻ったのでした。
思わず叫んでしまったのは仕方ないと思う。

「にゃ、にゃー・・・。」

焦ったようなトンヌラさんの鳴き声が・・・。ん??鳴き声?あ、あれ?
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