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三章

3ー63

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貸し切りとなっている店の奥に入ると、そこにはねこまんまを美味しそうに頬張るパールバティー様と、ダンさん特性猫用ご飯を器に顔を埋めながら食べるトラ柄の猫がいた。ご飯と言っても猫が食べるので実際にお米は入っておらず主に肉や魚などのたんぱく質で作られている。

ダンさんは猫の栄養学にも詳しいらしく、猫の好みに合わせて栄養バランスのいいご飯を提供してくれる。

どうやらこのトラ柄の猫はお肉が好きなのか、牛肉とささみがメインのご飯を食べている。しかも、器に直接口をつけて食べるのが不慣れなのか、時折口の周りをペロペロしたり、口の端についた食べかすを前足で綺麗にしながら食べている。

もちろん、器の外まで食べかすが巻き散らかされている。

それにしても、パールバティー様が食べているねこまんまが実に美味しそうだ。

おかかベースのご飯なのだろう。

少し汁っ気があるが、鰹節のいい香りがこちらまで漂ってくる。

・・・って!!

「女王様っ!!?」

気品のあるその佇まいはどんな格好をしていても女王であるというオーラを醸し出している。

まあ、格好もキャティーニャ村には似合わない真っ赤なドレスを纏っているからわかりやすいんだけどね。

それにしても、パールバティー様って美味しそうにねこまんまを頬張るのね。

もぐもぐと口にねこまんまを含んでいる姿はいつもの威厳が少しだけ薄れるような気がして親しみやすい。

「もごもご・・・ごっくん。まあ、立っていないで座りなさいな。」

「し、失礼しますっ!」

ちゃんとにねこまんまを飲み込んでから女王様は私に席に座るように促した。

私は女王様の目の前の席に座る。

「ここのねこまんまは美味しいわよ。食べていったら?」

「はっ!しかし、今日はマーニャたちと皆で一緒にご飯を取る約束なんです。私はお茶だけで・・・。」

「あら。ねこまんまも食べて、マーニャ様たちとも一緒にご飯を食べればいいじゃない?」

ふあっ!?

このお方は私に二回夕食を取れと申しますか。

何様ですか、貴女は。

ってこの国の最高権力者である女王様でしたね。はい。

「・・・そうします。すみません、サラさん。ねこまんま一つお願いします。」

「鰹節マシマシでね。」

私が注文をするとすかさずパールバティー様が付け足した。

「え・・・?」

「美味しいわよ。鰹節。」

そう言って何事もなかったようにもう一口ねこまんまを口に運ぶ。

口に入れた瞬間に美味しそうに微笑むのも忘れない。

トラ柄の猫はお腹がいっぱいになったのか、しきりに右手で自分の顔を洗うかのように拭っている。

途中で、手の甲をペロっと舐めるのも忘れない。

うぐっ・・・。可愛い。

そのペロッと除くピンク色の舌がとっても可愛い。

また、顔を拭うときに目を瞑るのも可愛くて仕方がない。

「その子、気に入ったのかしら?」

「あ、はい。とっても可愛い子ですね。」

思わずじぃーーーっと猫を見つめていたら、パールバティー様がそれに気付いたようで声をかけてきた。

私ったらパールバティー様が目の前にいるのに、猫をじっと見つめてしまうだなんて、なんて失礼なことをしてしまったんだろうか。

「トンヌラというのよ。」

「そうなんですね。トンヌラちゃ・・・ん?トンヌラ?」

トンヌラという名前、どっかで聞いたような気がする。

えっと、なんだか可哀想な人の名前だったような気がしたけれど・・・。誰だったっけ・・・?

「ふふふ。貴女も会ったことがあるでしょう?」

私も会ったことが・・・ある?

この茶色いトラ柄の猫に?

ふむむっと過去の記憶を遡る。

茶色いトラ柄の猫。茶トラの猫。

確かに会った。

可愛い猫だと思ったものだ。

でも、その後なんだか衝撃的な事柄があったような・・・。

「あ!!失礼男!!」

そうだそうだ。

裸を見られたからお婿に行けないって泣いてた人だ。

しかも、ベアトリクスさんだったらいいとかなんとか言って。

巨乳好きの失礼男だ。

「にゃ!!にゃーーーー!!」

失礼男と呼ばれたことに怒りを感じたのか、なにやら「にゃーにゃー」言っているが、私猫語わからないもん。

何を言っているかわからないから痛くもかゆくも無い。

ただ分かっているのは、その鳴き声が可愛いってことだけ。

猫って不思議だね。

怒っていようとも可愛いんだから。

「トンヌラ。あまり失礼なことを言ってはダメよ。また魚になるわよ。」

うふふ。と微笑みながらパールバティー様が言うと、カチンッとトンヌラが固まった。

そのまま、大人しく椅子の上に飛び乗り顔を埋めて丸くなってしまった。

「魚になるのがよっぽど堪えているのよね。ふふっ。魚の姿になると皆にキャーーーって言われて逃げ出されるのが辛いみたいよ。」

そりゃ、逃げますって。

だって、ただの魚じゃなくて、魚に手足がついていて二足歩行するんだもの。

気味悪がって逃げるのが普通だ。

「まあ、トンヌラのことは置いておいて。マユさん、あなたまた面白い化粧水を作ったわね。」

「あ、あはは・・・。」

もしかして、それを言いたいが為だけにこのキャティーニャ村までやってきたんじゃないだろうな。

「ねえ、もっと面白い物ないのかしら?」

「もっと、面白いもの・・・とは・・・。」

これは、新しい化粧水を作れといるのだろうか。

そういうことだろうか。

「そう。例えば、最近ヌメリン草が大量に採れるようになったそうねぇ?」

思わずビクッと身体が震えてしまった。

にっこりと笑っているが、パールバティー様のオーラは凄みを増していく。

「ねえ?ヌメリン草を使って何かを作成したのかしら?」

 

 

 

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