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三章
3ー44
しおりを挟む結局、昨日は庭にある完熟しているトマトをすべて精霊たちに提供するまでトマトを切り続けることになった。
トマトを切ることで体力を消耗してしまった私は、結局、乳液を昨日のうちに確認することができなかった。
「今日こそは、乳液を確認するわ!」
意気込んで、朝食もそこそこに錬金釜の前に立つ。
錬金釜の蓋を手にとり、開けようとして辺りをキョロキョロと見回す。
「あれ・・・?」
いつもだったら、錬金釜の蓋を開けようとするとプーちゃんやマーニャたちが飛んでくるのに、今日は来ない。
なんだか少しの物足りなさを感じながらも錬金釜の蓋を開ける。
錬金釜の中には10本の乳液が鎮座していた。
その中の1本をそっと取り出す。
化粧水と同じような入れ物に入った乳液は白濁色をしていた。
見た目はごくごく普通の乳液と同じだ。
後は、効果が気になるところだ。
以前、効果を確かめずに化粧水を飲んでしまって猫耳が生えてしまったことがある。
そのことを教訓に、乳液を鑑定してみる。って、あの時も化粧水鑑定したんだけどねぇ。私の鑑定レベルが低くて効果までわからなかったんだよね。今回も、効果まではわからないのかな。
また、鑑定士さんに見てもらうしかないのだろうか。
「ふえええ!!!」
乳液の鑑定結果は普通じゃありませんでした。
今回は化粧水と違ってプーちゃんやマーニャたちの魔力が込められていないのに。
あのヌメリン草が原因なのだろうか。
恐るべし、ヌメリン草。
ね、念のため王都の鑑定士さんにも見てもらおう。
この効果が本当なのか確認する意味もあるし、もしかしたらまだ私の鑑定レベルじゃ見れないこともあるかもしれないし。
いそいそと転送ボックスに乳液を1本入れる。
『はろ~!マユさんってばぁ~また変なものを~作ったわねぇ~!ってこれってぇ~ヌメリン草がぁ~必要じゃないですかぁ~。ダメですよぉ~ヌメリン草はぁ~絶滅危惧種だからぁ~採取禁止なんですよぉ~。』
すぐに鑑定士さんから連絡がきた。
しかも、やっぱりヌメリン草は絶滅危惧種だから採取禁止だった。
昨日絶滅危惧種じゃなくなったんだけどね。
まだ、鑑定士さんまで情報は行っていないのかな。
「ヌメリン草、絶滅危惧種じゃなくなりました。えっと、ヌメリン草を1つ転送しますね。確認してみてください。」
私は、証拠としてヌメリン草を1つ転送ボックスに入れ、鑑定士さんに送った。
『ちょっとぉ~これはぁ~なんなんですかぁ~!!ヌメリン草のぉ~レア度がぁ~最低ランクまでぇ~落ちてるわぁ~!!これはぁ~採取してもぉ~問題はぁ~なさそうだわねぇ~。はぁ~また上司にぃ~報告しなきゃ~いけなくなったわぁ~。で?マユさん~何を~やらかしたらぁ~ヌメリン草がぁ~絶滅危惧種じゃ~なくなるんですかぁ~?』
「うっ・・・。」
あ、あれ・・・?ベアトリクスさんったら何故私がヌメリン草の大量発生に関わっていると断定しているんだろうか。まだ、私が何かをしたなんて言っていないのに。
『私にはぁ~報告義務がぁ~あるんですぅ~。教えてぇ~いただけますかぁ~?』
「あ、あはははは。気付いたら急に増えてたんです。」
『そんなバカなことありませんよぉ~。何をしたんですかぁ~?』
「だ、だから気付いたら急に増えてたんです。」
ヌメリン草に喋りかけて触って戻ってきたら増殖してたなんて言えない。それに、森の湧き水をかけたら喋るようになっただなんて、私の口からは言えない。
『はぁ~。教えてくれないんじゃぁ~仕方ありませんねぇ~。こちらでもぉ~独自にぃ~調査しますねぇ~。でもぉ~、これでぇ~ヌメリン草を~使ったぁ~調合がぁ~可能になりましたねぇ~。ヌメリン草がぁ~使用できなくてぇ~調合できなかったぁ~薬や化粧品もぉ~あるのでぇ~有益ではぁ~あるんですよぉ~。』
「あはははは。よ、よかったんじゃないの?」
『そうですねぇ~結果オーライですかねぇ~。で、乳液のぉ~鑑定結果ですがぁ~。オークションにぃ~出しますかぁ~?』
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