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三章
3ー37
しおりを挟むスーちゃんは寝てばかりのとてもおっとりとした精霊だった。
精霊が産まれた気配を感じて、ピーちゃんが挨拶にやってきたが、寝ていたスーちゃんは全く起きなかった。
寝てばっかりで大丈夫なのかというほど寝ている。
マーニャたち猫もよく「寝る子」と書いて「猫」と呼ぶというように言われるほど寝ているが、その比ではないほどに寝ている。殻をやぶって孵化したときくらいしか、スーちゃんの目が開いている時をみたことがない。
うん。
まだスーちゃんは産まれたばかりだし、寝る子は育つというし。
縦ではななく横に育たなければいいけど。
『スーちゃんおねむなの!クーニャも一緒に寝るのー!』
クーニャはそう言って私のベッドでスーちゃんと一緒に眠っている。
まあ、ご飯の時には必ず起きてきて大好きなミルクを所望する。
精霊も増えて我が家は今日も賑やかです。
チュンチュンチュンチュン・・・。
朝になり、窓の外から鳥の鳴き声が聞こえてくる。
起きなくっちゃと、ベッドからゆっくりと起き上がる。
毎朝の週間として、朝起きると冷たい水をコップ一杯飲むことにしている。
今日もベッドから置きだして、マーニャたちが寝ている横を通りすぎてキッチンに向かう。
「うぇえええ!!!」
部屋からキッチンに出て呆然とする。
寝る前は部屋から出るとすぐにキッチンがあったのに、今はキッチンに辿り着くまで広い空間が広がっている。
三畳ほどしかなかったダイニングキッチンが10畳ほどに広がっていたのだ。
これで炬燵を置けるようにはなったけど、なんでこんなに早く出来上がっているの!?
っというか、昨日寝る前まではなんともなっていなかったよ、ここ。
慌てて家の中を見回すと、私の部屋の隣にもう一つ見知らぬドアがついていた。
まさかして、ここは・・・。
ゆっくりとドアを開くともう一つの部屋が出来上がっていた。
中の広さは私の部屋と同じくらいだ。
ベッド等の家具は配置されていないのでとても広く感じる。
このドアも昨日の夜にはなかったものだ。
寝ている間にリビングが出来上がっていて、部屋も一つ出来上がっているなんてとっても不思議だ。
っていうか、明らかにキッチンが移動しているんだけど・・・。
というか、壁に継ぎ目が見当たらないんだけど。
ものすごい技術を持った大工さんがいるものね。
普通、増築するとその部分がわかるものなのだが、全く持って見分けがつかない。
まるで、建てた当初からこの間取りでしたといわれても、疑わないほどに。
「ありえないわ・・・さすが異世界だわね。」
異世界だからの一言で済ませていいのかわからないけれども・・・。
まあでも、家も広くなったし部屋も追加されたし、これで炬燵が心置きなく使えるわ。
リビングに炬燵を運び設置しようとしてはたと気付く。
「・・・こたつ布団がまだなかったんだった。」
炬燵が高級な品物で炬燵がある家が数えられるほどしかないこの世界。
果たして炬燵布団は簡単に手にいれることができるのだろうか。
昨日、ザックさんのところに行った時に雑貨屋でこたつ布団が手に入るか聞いておけばよかった。トホホ・・・。
取りあえず、広いリビングに炬燵を設置する。こたつ布団はないけど、テーブルとしても使えるからよしとする。
その代わりに今までダイニングで使用していた2人用の小さいテーブルと椅子は新しく出来た部屋に運ぶ。
朝からいい運動をしてしまった。
それからマーニャたちが起きてきてご飯の催促をしたので、みんなにご飯を提供した。
ちなみに、スーちゃんは、まだ夢の中だ。ご飯食べなくて大丈夫なのだろうか。
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