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三章
3ー9
しおりを挟む「なっ・・・。」
『マーニャも混ざるのー。』
『クーニャも!!』
『・・・無理。』
ドアを開けてみると目の前の光景に開けた口が塞がらなかった。
マーニャもクーニャも混ざりたいとばかりに飛んでいってしまったが、ボーニャだけはただならぬものを感じたのか関わりあいになりたくないと思ったのか、部屋に引っ込んでしまった。
ちなみにプーちゃんは『我のトマトが・・・。』と涙をダバダバと玄関先で流していた。涙がどんどん地中に吸い込まれていく。
「いてっ・・・。」
「きゃあっ・・・。」
「コケッコーーーーッ!!!」
「ピィィ!ピィ!!」
『『きゃはははははははっ。』』
なんだか地獄絵図のようである。
先ほど山の近くで倒れていた二人が畑に不法侵入していたのである。
それを見つけた鶏さんとヒヨコさんが二人に嘴で猛攻撃を受けている。
二人ともトマトを食べようとしたようで、トマトの木の下が一番酷い。
鶏も不法侵入者を検知して、嘴で二人を突いているのだが、時たま狙いを外してなのか、それともわざとなのかトマトの実を突いているようだ。それに侵入者の二人もトマトを手から離さないものだから、トマトの汁があたりに飛び散ってしまっている。
あーあ。トマトの汁って一度服につくとなかなか落ちないんだけどなぁ。
しかも、トマトの枝に服を擦ってしまうと色が服についちゃうし。
男の人は知らないけど、あの女性の服けっこう高そうなんだよねぇ。どこかのブランド物っぽいし。
「た、助けてくれ・・・。」
「ちょっと、やめてってばっ・・・。」
必死に鶏さんに抵抗をしている二人だけど、鶏たちは全く攻撃をやめようとしない。
それどころかそこにマーニャとクーニャも加わって、盛大に猫パンチを繰り広げている。
これって不法侵入してトマト盗もうとしたから自業自得でいいんだよね?
『我のトマト・・・我の・・・。』
プーちゃんはトマトが滅茶苦茶にされていることによって精神がおかしくなってしまったようだ。ゆらりと立ち上がると、ふらふらしながらトマトの木に向かっていく。
『マーニャ様、クーニャ様、鶏どもどいてくれ。我が落とし前をつけてやる。』
プーちゃんが低く呟くと雷鳴が聞こえてきた。
マーニャたちはそれを感じて鶏やヒヨコとともに家に非難した。
私も慌てて非難をする。
非難せずにマーニャたちの攻撃が止んで「助かった。」と思っている侵入者二人は、その場でホッとしたように弛緩してへたり込んでいた。
「そこにいると危ないですよー。」
いくら侵入者でも人は人だし、一応声はかけておく。
もしかしたら今からなら逃げることができるかもしれないし。
まあ、プーちゃんがトマトを台無しにした人たちを許すとは思えないけれども。
『よくも我のトマトを・・・許さぬ!!』
ピカッ!
ドドーンッ!!
「あ、プーちゃん自分でトマトにとどめさしてる・・・。」
プーちゃんの怒りが爆発し、畑に居る侵入者二人に向かって特大の雷が落ちた。
もちろん、そばにあるトマトにも雷が落ちたのは言うまでもない。というか、畑中に雷が落ちたけれども。
もうもうと辺りを土煙が覆う。
そこから現れたのはトマトを見て愕然としているプーちゃんだった。
『複雑だ・・・。我の渾身の力が篭った雷でトマトがまったく無傷なのだ。トマトが無傷なことを喜ぶべきか・・・。』
またしてもトマトは無傷であったらしい。
先ほどつぶれてしまったトマトは熟れたトマトだけだったようだ。
トマトすごい生命力だな。
まあ、畑に植えてある作物全部無事だったけど。
もう意味分からないこの畑。
って、そうでなくて侵入者はどうなったのだろうか。
いくら侵入者でも殺すまでの悪いことをしたわけではないし。
そう思って目を凝らして家のドアから畑を見るとプーちゃんの近くに黒焦げの物体が二つ転がっていた。まだかろうじて息があるのかピクピクと動いているが、遠目からでは男女の区別もつかないほどの損傷具合だ。
「あっちゃー。」
畑に侵入してトマト泥棒をしただけで瀕死の状態である。きっと何もせずに放置しておけば死んでしまうだろう。といってもこの状態で助けられるのかも疑問だが・・・。って、助けられるじゃん。
「プーちゃんその人たちヒマワリの下に運んで!!」
呆然としてトマトを見つめているプーちゃんに命令する。
なんとなく雷で黒焦げの人怖くて触れないし、ここは元凶のプーちゃんにお願いする。
プーちゃんは半分放心しているからか素直にヒマワリの傍に二人を運んでくれた。
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