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二章
2ー90
しおりを挟む待ちに待ったオークション日当日。といっても今日がオークションだって知ったの昨日なんだけどね。
結局、猫耳はまだ私の頭の上に健在である。今日もピコピコと猫耳が動くので本物の猫耳である。
今日は鑑定士さんが宿まで迎えに来てくれるとのことなので、宿の部屋にいる。
鞄の中には本日のオークションで追加出品する予定の化粧水が30本入っている。
マーニャたちをオークション会場に運ぶためのバスケットも準備済みだ。
できれば、オークション会場が宿から近い場所だったらいいんだけどな。その方がマーニャたちの負担も減るし。
プーちゃんは縮んだままの姿で一緒に来ることになっている。縮んでいれば蛇そのものにしか見えないしね。手足生えてるから蜥蜴?
まあ、どっちでもいいか。目立たなければ。
朝食も食べて出掛ける準備もして、もういつでも出発できるぞ!って時に、部屋のドアがノックされた。
鑑定士さんが来たのだろうか?
「はーい。今、開けますねー。」
日本に居たときと同じく、宿の部屋には内側からかけられる鍵がついている。
やっぱり日本人としては鍵をかけないとなんとなく不安なので、部屋にいるときでも鍵をかけている。
「こんにちはー。今日はよろしくお願いします。」
ドアを開けて、相手の顔を見ないままペコリとお辞儀をする。
相手が動揺する空気を感じた。
「え?」と想い、顔をあげる。
「どうしたんだ?その猫耳。」
そこには鑑定士さんではなくて、ザックさんがいた。そういえば、宿について別れてから今朝までザックさんに会っていなかったということに今ごろ気がついた。
ザックさんの目は私の頭についている猫耳に固定されている。そんなに凝視されるとなんだかいたたまれない。
どうせ、似合ってないとか思ってるんだろうな。
「自分で作った化粧水飲んだら猫耳が生えてきてしまったんです。って、あんあまりジロジロ見ないでくださいね。」
「別に減るわけじゃないんだし、見たっていいじゃないか。」
「減ります!私の心がすり減ります!この年で猫耳だなんてすごく痛い人みたいじゃないですか。あまり人に見られたくないんですよ。」
ザックさんは私の猫耳に視線を固定したまま動かない。それどころか、ザックさんの手が私の猫耳に触れようと伸ばされてくる。
触れられる前に両手で耳をガードすると、寂しそうなザックさんと目が合った。
「猫耳、さわりたかったんですね・・・。」
「可愛い。よく似合っているから恥じることはない。」
「はぇ?」
ザックさんの口から「可愛い。」だなんて言葉が聞こえてきた。空耳だろうか。
「似合っている。誇るといい。」
いや、誇ってもしょうがないと思うんだけど。
ザックさんは私の必死のガードのおかげか、猫耳をさわるのを諦めたようで、手を下に下ろした。
「それより。どこか行くのか?」
「はい。今日、オークションがあるんです。化粧水を出品するので、せっかくだから王都にいる間に行ってみようと思って。」
「ん?今日はオークションの定期開催の日ではなかったはずだが・・・。」
「え?日付、間違えた?」
ザックさんの言葉にピシリと固まる私。確か、昨日の話だと今日がオークションの日だって鑑定士さん言ってたのになぁ。
私の聞き間違いだったのだろうか。
「今日でぇ~あってますよぉ~。」
「え?」
私とザックさんの会話に割って入ってくる声がして、驚いて声がした方に視線を向ける。
そこにはマリアと同世代くらいの一人の女の子がいた。
「マユさんですねぇ~。いつもぉ~変なものを~送ってくれてぇ~ありがとうございますぅ~。鑑定士のぉ~ベアトリクスとぉ~いいますぅ~。よろしくぅ~お願いしまぁすぅ~。」
って、鑑定士さんだった。
なんとなく想像していた鑑定士さんと違った。想像上の鑑定士さんは、20代後半のいけいけなお姉さんかと思ってたんだけども、目の前にいるのはよくて10代後半の美少女だ。身長も低めだし、私と同じく身体に凹凸がないので少し親近感がわく。
「マユです。よろしくお願いします。」
「今日は、臨時開催ですか?」
ザックさんがベアトリクスさんに確認する。
臨時開催?
「はい~そうなんですぅ~。今日はぁ~化粧水がぁ~出品されるのでぇ~臨時でぇ~開催しますぅ~。ザックさんもぉ~いかがですかぁ~?商品はぁ~マユさんがぁ~作成したぁ~化粧水だけですけどぉ~」
「へっ?」
今日のオークションの出品物は化粧水だけ?私の作った化粧水のためだけにオークションが開かれるの!?
なにそれ、なんかいたたまれないんだけど!!
「昨日~お知らせしてぇ~今日開催なのにぃ~もうオークション会場にはぁ~200を超える人たちがぁ~集まってぇ~いるんですよぉ~。はあぁ~、せっかくぅ~鑑定士権限でぇ~臨時オークションを~開いたのにぃ~人がこんなにぃ~来るなんてぇ~計算違いもぉ~いいところですぅ~。私がぁ~化粧水ほしかったのにぃ~。」
いやいやいや。
ベアトリクスさん、残念そうに呟いているけど、それっておもいっきり職権濫用だよ。
っていうか、化粧水39本しかないのに200人以上人が集まっているって化粧水ぜんぜん足りないじゃない!!
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