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二章

2ー77

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獣人の街から街道に出るまでは行きと異なりゆっくり歩いて移動した。

まあ、マーニャたちが食べながら歩いていたので、必然的にゆっくり歩くことになってしまっただけのことだが。

 

「ザックさん、プーちゃんお待たせいたしました」

 

「ああ」

 

『マユ殿、良い匂いがする。我にくれるのか?』

 

プーちゃんってば私が持っている食料に早速気づいたらしい。

目がキラキラと輝いている。

プーちゃんって食べることが好きだよなぁ。

ちなみに、マーニャたちはそれぞれ手に持っていた分は食べ終わってしまっている。

串に関してはそこら辺にポイッと捨てるわけにはいかないので回収してある。

マーニャもクーニャもボーニャもそれぞれ串を持っていた手を、まだ舐めていた。

まだ、お腹が空いているのかな?

 

「プーちゃんの分もザックさんの分も買ってきましたよ」

 

私はそう言って、鳥の串焼きと魚の串焼きを二人に見せた。

屋台から購入してここに来るまでに少し冷めてしまったけれども、それはしょうがない。我慢してもらおう。

 

『おお!これ全部我が食べて良いのか?』

 

「ダメ。ザックさんと私の分も含まれてます」

 

『ううむ。ちと、少ないのではないか?』

 

プーちゃんはトグロを巻いて、ジィーッと串焼きを見つめている。

まあ、確かにプーちゃん大きいからこれじゃ足りないと思うけどね。

でもね、予算がね。

そんなになかったりとか。

そもそも、プーちゃんはキャティーニャ村でお留守番の予定だったから、プーちゃんの食費のこと全く考えてなかったんだよねぇ。

まあ、キャティーニャ村を出る前に化粧水代としてユキさんから200万ニャールド貰ったからまだお金はあるっちゃあるんだけど。

宿代が思ったよりかかって25万ニャールドだった。

残り175万ニャールドあれば王都まで行って十分に帰ってはこれるだろうけど。

今回串焼きも一つ300ニャールドでそれぞれ10本ずつ買ったから6000ニャールドかかっているし。

まあ、でもまだお金あるからいいかなぁ。

また化粧水を作って売れば一つ2000ニャールドくらいにはなるだろうし。

王都から帰って来てから化粧水作りまくればいいか。

 

「何が食べたいかわからなかったからね。取り合えず小腹を満たして?」

 

『うむ。仕方ないな』

 

「私の分まですまない。お金は払う」

 

「あ、いいんです。今回は私のおごりで。それに私たちさえいなければもっと旅は順調だっただろうし、高い宿代払うことはなかっだろうし」

 

そうだよね。

普通5万ニャールドの宿に止まらないよね。

あれってザックさんに取って痛い出費だったんじゃなかろうか。

マーニャたちが宿勝手に決めちゃったしなぁ。

 

「良い宿だった。串焼きはお言葉に甘えさせてもらう」

 

「はい。どうぞ。マーニャ達は串焼きもっと食べる?」

 

既にマーニャたちは串焼きを1本ずつ食べているけど、もっと食べるかな?

串焼きを見せながら確認すると、

 

「「「もう、お腹いっぱいー」」」

 

三匹とも同じ返事が返って来た。

そして、三匹とも馬車に乗り込んで、横になっている。

どうやらお腹が満たされたことで眠くなったらしい。

トロリとした目がこちらを向いていた。

って、ここで寝ちゃったらまたお話する前に猫の姿に戻っちゃうんじゃあ・・・。

起きたときにボーニャがまた泣き出しそうで怖いなぁ。

 

「もう、寝るの?少しお話しない?」

 

「んー。寝るのー」

 

「眠いのー」

 

「寝させてー」

 

三匹の答えはNOだった。

仕方ない。

マーニャたちと話すためにさっさとスキルを取得すればいいんだよね。

がんばれ、私。

 

ザックさんとプーちゃんにとりあえず串焼きを一つずつ渡して、私も一つずつ食べることにした。

鳥の串焼きは残り4本、魚の串焼きは残り7本。

どうやってわけようか。

 

マーニャたちは串焼きを美味しい美味しいと言って食べていたが正直私には物足りなかった。

素材の味が生きていて美味しかったんだけどね。

濃い味付けになれてしまっている私からすると、ほぼ味付けをしていない鳥も魚も物足りなかった。

ただ、魚は新鮮だということがわかるほど臭みがなかったし、鳥もぷりぷりとしていて美味しかった。

プーちゃんも満足していたが、ザックさんは正直満足しているのかどうかわからなかった。

美味しいも何も言わなかったし。

結局串焼きは私が魚を2本と鳥を1本。

ザックさんが魚を2本と鳥を2本。

プーちゃんが魚を3本と鳥を7本食べた。

うん。プーちゃん残飯処理係決定だね。

 

「じゃあ、王都に向けて出発しよう」

 

『でも、どうやって行くのだ?』

 

「あれ?まだ場所がわからなかったの?」

 

「ああ。すまない」

 

『うむ』

 

どうやらプーちゃんもザックさんもまだ王都の場所をつかめていなかったようである。

って、私も王都の場所がどこだかわからないけれど。

私はプーちゃんとザックさんに馬車での移動日数とプーちゃんがいう移動日数が違うのではないかということを告げた。

どこくらい違うのかはわからないけれど。

すると、ザックさんもプーちゃんも「なるほど!」と頷いていた。

意外と二人とも気づかなかったらしい。

 

「それなら、まずここから北に4日くらいのところにある場所に行ってみよう」

 

キャティーニャ村からここまでが南に3日だったから、それより1日多い4日北に進んでみる。

そうすれば、そこがどこだか判断がザックさんになら付けられるとのこと。

キャティーニャ村からその街までの距離が分かれば自ずと王都までの距離もわかるだろうと。

まあ、そのためには複数回転移をしなければならないが。

プーちゃんもそれには賛同してくれて(というか、賛同するしかなかった)のでマーニャたちが馬車で寝ているうちにさっさと移動することにした。

できれば今日中に王都に転移してしまいたいし。

 

『では、いくぞ』

 

「ああ」

 

「よろしくね、プーちゃん」

 

獣人の街から北へ4日の場所にいざ転移。

 

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