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二章
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しおりを挟む「プーちゃん王都まで乗せて行ってくれないかな?」
プーちゃんの背中に乗ったことがあるけれど、馬車よりは快適だった。馬車よりは。
気を抜いたら落ちそうにはなったけど、馬車よりは揺れが少なかったし。
プーちゃんもマーニャたちが背中に乗っているのならば、安全に飛行してくれるだろう。
ただ、ずっと飛び続けるのは大変だろうけど。
「ダメかな?マーニャたちを背中に乗せて王都まで行かない?」
『ふむ。我も王都まで行っても良いが、マーニャ様にくれぐれも畑の作物を守れと言われてる。まずは、マーニャ様にお伺いをたてなければならぬ。』
あら。マーニャが畑の作物のことをプーちゃんに頼んでいてくれたのね。
マーニャったら気がきく。
って、さっきからバスケットの中で暴れているんだった。
私は慌てて馬車まで戻るとバスケットの蓋を開けた。
すると飛びでてくる、マーニャにクーニャにボーニャ。
でも、馬車の揺れに参っているのか、あまり元気がない。
バスケットから出てきたものの地面にへたりこんでしまっている。
「にゃあ………。」
マーニャが息も絶え絶えといった風に小さく鳴いた。
もちろん、なんて言っているのかわからない。でも、プーちゃんはマーニャがなんと言ったのかわかったみたいだ。
『マーニャ様、それほど辛かったのか。我が王都まで快適に送りとどけてやろうではないかっ!』
どうやら、マーニャから許可がおりたようである。マーニャから頼られたことが嬉しかったようで、プーちゃんがとても張り切っている。
どうやら、王都までプーちゃんが連れて行ってくれそうだ。
よかった。
馬車よりはマシだよ。
ザックさんに突っ込まれるまでは、そう思っていた。
「ダメだ。竜に乗って行ったら王都が混乱する。」
ぐっ。
それも、そうか。
このキャティーナ村の人たちはだいぶプーちゃんに馴れたようだが、初めてプーちゃんを見た人は軒並みビビってたからなぁ。
これが王都となると大騒ぎになるかぁ。
むぅ。
快適な王都までの旅が出来るかと思ったのに。
「………にゃあ。」
「………ふにゃぁん。」
「………はぁ。」
マーニャたちもプーちゃんに乗って王都に行けないとわかって落ち込んでいる。
って、ボーニャか、溜め息ついたの。猫でも溜め息をつくことがあるんだねぇ。初めて知った。
『マーニャ様たちが落ち込んでいるんだ。王都が混乱しようと我の知ったところではない。我は行くのだ!』
「えっ!プーちゃん穏便に!!」
流石プーちゃん。マーニャたち命なだけある。王都が混乱してもいいと宣った。
まあ、プーちゃんにしたら人間世界のことなんて元々どうでもいいのかもしれないが。
「はぁ。」
あああああああっ!!
ザックさんが呆れて溜め息をついているよ。
「その莫大な魔力で王都まで私達を転送することは出来ないのだろうか?」
「あっ!そっか。プーちゃんどう?」
プーちゃんに乗って行くのではなくて、プーちゃんの魔力で王都まで転送してもらう方法があったか。
ザックさんて頭の回転が速いんだと、思わずザックさんを見つめてしまった。
『マユのトマトを食べているからな。我に不可能はないっ!!』
おお!流石プーちゃんだ。
いつもはヘタレなのに、やるときはやるんだななんて見直してしまった。
が、この選択を私達は後悔することになるのだが、今はまだ知らない。
ただただ、私もマーニャたちも王都まで馬車に乗らなくてよくなるという安心感しかなかった。
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