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二章
2ー36
しおりを挟む「ほれほれ、座って座って。せっかく妻が昼食を作ったんじゃ。遠慮せずに食べていっておくれ。」
村長さんの声で思考が中断される。
あまり詮索されたくないかもしれないし、これ以上はユキさんについて考えるのをやめておこう。
もしかしたら、そのうち教えてくれるかもしれないし。
私たちは席に座った。
そこにユキさんが昼食を運んで来てくれる。
マーニャたちも専用の猫様専用テーブルに特性ごはんとミルクのセットが乗せられており、それをもぐもぐと一足先に食べていた。
相変わらず、クーニャはミルクから先にがっついているけれど。
また、マーニャのミルクも飲もうとするのだろうか。
「あれ?ご飯?」
マーニャたちを眺めていたが、目の前に置かれたご飯に目が釘付けになる。
この世界に来てからご飯を見たことがなかったのだ。
なので、この世界の主食はパンだとばかり思っていた。それなのに、目の前には真っ白く艶々と光っているご飯が置かれた。
「おぉ。マユ殿は食べたことがあるのかの?これは、妻の祖国で主食として食べられていた米というものだそうだ。」
「私のいた国でも米が主食でした。こっちに来てから米なんて見たことなかったから懐かしいです。うれしい。」
どうやらユキさんの祖国には米があるようだ。だとしたらこの米は輸入品なのだろうか。
「私も米を買いたいんですが、米はどこで買えますか?」
やっぱり日本人としては米が食べたくなる。こちらの世界のパンだって美味しいけど、ソウルフードでもある米はどうしても捨てがたい。
艶々と美味しそうに光っている米の魔力には逆らえず、入手方法を村長さんに確認する。
「うむ。朝市で時々売っていることがあるのぉ。でも、品薄のためそれなりの値段はするぞ。うちでも、米はたまにしか食べない贅沢品なんじゃ。」
「そうなんですか・・・。」
食堂で米を見ないのはそのせいか。どうやらこの国では米は貴重品らしい。
それに、食べなれない米を買う人もあまりいないのかもしれない。
そうすると、米はどうやらずいぶんと遠い国で作られているのだろうか。
「米ってどこの国で作られているんですか?」
「ん?この村では生育があまり良くなくてのぉ。ふたつ先の村で主に作っておる。」
「え?以外と近いですね。朝市にたまに出ているって話だったので、遠い国で作られているのかと思ってました。」
「そんなことはないぞ。ただ、需要がそこまで多くないからのぉ。作る人が少ないんじゃよ。50年前から作り始めたばかりだしのぉ。」
「そうなんですか。」
ん?
ということは、ユキさんはふたつ隣の村から嫁いで来たのだろうか。
まあ、いいや。
それより、目の前のほかほかのご飯が冷めないうちに食べることにしよう。
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