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二章
2ー11
しおりを挟む錬金釜の蓋をそっと開ける。
今度はマーニャが手を出さなかった。
ソロッとマーニャの方を見ると、マーニャはソフィアさんが用意したと思われるネズミのおもちゃにご執心のようで、蹴ったり齧ったりしてひたすら遊んでいる。
少し拍子抜けした気分だ。
「あ、なんか普通っぽいね」
「本当ですね。普通の化粧水みたいですね」
マリアとソフィアさんが練成された化粧水をそれぞれ手に取ってしげしげと見つめている。
どうやら今度こそ普通の化粧水のようだ。
数もそのまま10個しか出来ていない。
普通に化粧水の練成が成功したようだ。
念のためこちらも鑑定をしてみる。
【化粧水
肌を整える化粧水】
うむ。
どうやらごくごく普通の化粧水のようである。
増えるわけでもなければ飲めるわけでもない。
やっぱり「美味しくなあれ」と思って魔力を込めていないからだろうか。
「鑑定結果も普通に化粧水だった。特別な効果もないみたい」
「そう。やっぱり「美味しくなあれ」ってのと、猫様たちが関係しているみたいね」
「練金釜に猫様の魔力かぁ。猫様にそんな能力があったなんて知らなかったわ」
「私も知らなかった。きっと、マーニャ様たちが特別なのよ」
あれ?
普通の猫様が触ったくらいじゃ何も変化しないのかな。
「もしかして、猫様が錬金釜に触った実績ってないの?」
「ないわね」
「聞いたことないですねぇ」
マリアもソフィアさんも即答である。
「この国の猫様比率は高いからきっと錬金釜に触る猫様もいるとは思うんだけどね、全くそんな噂は流れてこないわ」
「そうなんだ。マーニャたちが特別なのかな?」
「そうでしょうね。きっと。もしくはマーニャ様たちとマユの魔力が混ざった場合に効果が付与されるのか・・・」
どうやら普通にしていては出来ることがない化粧水だったようだ。
もう少し検証してみたいな。
今度は、普通の化粧水を作成したときにマーニャ達に手伝ってもらうとか。
飲める化粧水を作成したときにマーニャ達に触らないでおいてもらうとか。
「ねえ、もう少し検証してみてもいいかな?」
「いいわよ。私も気になっていたし。ソフィアさん、錬金釜借りれる?」
「ええ。どうぞ。でも今日は今からだと遅くなっちゃうからまた明日にしたらどうかしら?」
ソフィアさんの言葉で私とマリアは窓から外を眺める。
いつの間にか外は真っ暗になっており、空にキラキラといくつかの星が瞬いていた。
「ありゃ。いつの間にか時間が経っていたんだね。帰ってマーニャたちにご飯をあげなきゃ」
「ふふっ。もしかして、マーニャ様がここに来たのって、お腹が空いたからかな?」
ネズミのおもちゃで遊び疲れたのかマーニャはネズミのおもちゃを抱いて丸まってスヤスヤと眠っていた。
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