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一章

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『・・・マユ!マユ、聞こえるっ!?』

突然、頭の中でマリアの声が響く。

『マリア、聞こえる。ごめん、迷子になりました』

念話でマリアに返答する。
私ってば、どうして今まで念話のこと忘れていたんだろう?

『まったく!念話も通じないし、心配したんだから』

『ごめん。って、念話が通じないってどういうこと?』

『私にもわからないわ。念話が通じないなんて今までなかったもの』

今までなかった?
なんで、念話が通じなかったのかしら。

『大丈夫?どこにいるの?なにかあった?』

『どこだかわからない。道が近くにはないわ。それに、ハーメルさんに会ったと思う、多分』

ピンクの卵をあげたのは、ハーメルさん。だからさっきの人はハーメルさんのはず。
断定出来ないのは、不思議なことにハーメルさんの顔を覚えていないから。
今だってさっき会ったばかりのハーメルさんの顔が思い出せない。
髪の色も瞳の色も容姿も思い出せない。全てが靄にかかっているようだ。

『ハーメルさん・・・?ピンクの卵を探していた人?』

『そう』

『顔が思い出せないわ。どうしてだろう』

困惑したようなマリアの声が聞こえる。
マリアもハーメルさんの顔を思い出せないの?どういうこと?
ハーメルさんっていったい何者!?

『ハーメルさん、なんだって?』

『ピンクの卵を返してくれたわ。大切に育てろって』

『・・・どういうこと?・・・ハーメルさんのことも気になるけれど、今はマユのことね。近くに何か変わったものはないかしら?』

どうやら、ハーメルさんのことは後回しにするようだ。
そうだね。まずは、合流した方がいいよね。
でも・・・

『マーニャたちはいたの?』

マーニャたちのことが気になる。
戻って来てくれているといいのだけれども。

『マーニャ様たちは、マユが茂みに入っていったのと入れ替わりに姿を現したわ・・・』

マリアはそう言って言葉を途切れさせた。
マーニャたちが無事でよかった。

『そう。マーニャたちが無事でよかった』

『・・・マーニャ様たちはマユがハーメルさんに会わせるために姿を消していたのかしら』

ポツリとマリアが聞こえるか聞こえないかほどの小さな声で呟いた。

『マーニャたちが?』

信じられないのだけれども。

『だって、タイミングが良すぎるわ。誰かが裏で糸をひいていたとしか思えない』

確かにタイミングはバッチリだよね。
マーニャたちがいなくなって、私が探しに行ったらハーメルさんに会うことになったんだし。私がマーニャたちを探しに行ったのと同時にマーニャたちが姿を現したっていうし。

『まさかね』

『そうよね、考えすぎよね』

それから私はマリアに自分がいる場所の目印を告げた。
近くから水の音がしたのだ。
音を辿っていくと、小さな滝があった。
そのことをマリアに告げたら、マリアも場所がわかったみたいで、その後すぐにマリアと合流することができた。
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