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一章
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しおりを挟む泥だらけでへたっているところに朝から元気いっぱいのマリアがやってきた。
「あははっ。プーちゃんに締付けられてたから力が入らないのよ」
「プーちゃんったら・・・。立てる?」
マリアはそう言って、私に手を差し伸べてきてくれた。
私は泥にまみれた手でマリアに触れるのを躊躇する。
「でも、私の手汚れているから・・・」
「気にしないで」
強引に私の両手を掴んで立ち上がらせてくれた。
マリアのお陰でなんとか立ち上がり、家の中まで入ることができた。
その頃には、身体のしびれも回復しており、一人でシャワーを浴びることもできた。
「マリア、ありがとう」
私はシャワーを浴びて着替えを済ませてマリアの待っている部屋に戻る。
マリアは木の椅子に腰掛けてのんびりと紅茶を飲んでいた。
この紅茶どこから持ってきたかというと、なんとマリアが持参したとのことだ。
この家に紅茶の類がないことに気づいているなんて流石だ。
「気にしないで。ああ、プーちゃんなら外でクーニャとボーニャにお説教されてるよ?」
「ああ・・・あの子たちったら」
「マーニャはさっきプーちゃんにお説教したことで気が済んだみたい。ご飯を食べてマユのベッドで寝ているわ。早起きして疲れたのね」
私はマリアの指差す方を見た。
すると、私の部屋のベッドの上でマーニャが大の字で寝ているのが見える。
規則的に上下しているお腹が可愛くて撫で回したいような気分になる。
しっかし、クーニャもボーニャも私のためにプーちゃんをお説教してくれるだなんてなんて可愛い子たちなんだろう。
やりすぎなきゃいいけど。
「プーちゃんも極端なんだよねぇ」
「そうだね。まだ人間と暮らすことに慣れていないからプーちゃん自身も試行錯誤しているのでしょうね」
「ずっとダンジョンにいたんだもんねぇ」
しみじみとプーちゃんについてマリアと語る。
プーちゃん悪い子じゃないんだよね。
いろいろと足りないだけで。
「まあ、マーニャ様たちがいろいろとプーちゃんに指導しているみたいだから、少しずつ良くなっていくでしょ?」
「そうだね」
「それにしてもプーちゃんなんでマユを締め上げることになったの?」
締め上げたっていうと私が悪いことしたみたいじゃない。私、悪いことしてないよ。
マリア言葉のチョイス間違ってるような気がするんだけど。
とにかく、私はマリアにプーちゃんが何故私を締付けたのかを説明した。
「わかったわ。原因はトマトにあったのね。で、マユが推測したことだけど正しいわ。トマトには水分よりも日光が必要よ。プーちゃんがそれを認識しているのなら、少しずつ美味しいトマトになるでしょうね」
「よかった・・・」
どうやら推測は当たっていたようだ。プーちゃんをガッカリさせずに済みそうだと一安心する。
作物を作るのも大変だ。
ただ、植えて水をやればいいってだけではないみたい。
作物にあった栽培方法をしないと美味しくないだなんて、難しいけどやりがいはあるわね。
「いろいろと試行錯誤をしてみると美味しいものができるかもね」
マリアはにっこりと笑ってそう告げた。
どうせ作るのなら美味しいものの方がいいものね。
時間もあるし、いろいろ試してみようと思った。
「それはそうと、今日の森への散策は、どうする?」
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