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しおりを挟む「愛しい愛しい王子に会えたか?」
「……会えたわ。ロイド殿下は私だって気づかなかったみたいだけれど。」
夜明け前、約束通りに私はカルシファーの元へと戻った。
約束を違えてしまえば、私は泡となって消えてしまう。
まだやり残したことがあるので、今はまだ泡となって消えてしまうことはできない。
だから、私はカルシファーとの約束を守っている。
「そうか。で、あの約束のことは覚えているか?」
「……もちろん覚えているわ。」
カルシファーの言う約束とは、夜明け前にカルシファーの元に戻るという約束ではない。
もう一つ、私はロイド殿下に会いに行くためにカルシファーと約束……もとい取引をおこなった。
私としては祖国を裏切るような感じがしてとても抵抗感があるが、それでも、ロイド殿下に会いに行くためにはカルシファーと取り引きをしなければならなかった。
それに、カルシファーと取り引きをすることで、私がなぜ神の意に反して魔族の花嫁となったのかわかるのではないか、調査することができるからだ。
カルシファーと私の利害は一致している。そのためのカルシファーとの取引だ。
まあ、私の方が分が悪いような気はしているが。
「そうか。では、なにかつかめたか?」
「いいえ。昨夜はロイド殿下に会っただけでなんの収穫もなかったわ。」
「そうか。あんまりゆっくりしていてもいいことはないぞ?」
「……わかっているわ。私を条件付きとは言え、ロイド殿下の元に行かせてくれたんですもの。あなたとの約束は守るわ。」
「そうか。なら、いい。」
カルシファーはぶっきらぼうにそう言うと私に背を向けた。
私は去っていくカルシファーの背中をただただ見送った。
私はカルシファーが何を考えているのかよくわからない。私を再びロイド殿下に合わせてくれたのは感謝しているが、カルシファーは魔族だ。
簡単にカルシファーのことを信じてはいけない。
カルシファーは見た目は人間に似ているとはいえ、魔族なのだから。
人間よりも力も魔力も持った魔族なのだから。
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