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しおりを挟む「ま、まあ。そうでしたかしら。私も魔族の花嫁に選ばれたことに驚きましたから、その辺りのことがすっぽり抜け落ちておりましたわ。」
アリス嬢はキョロキョロと視線を彷徨わせながらそう答えた。
「……儀式が始まる前に気づけば、セレスティーナを失うことはなかったのに。」
悔しくてオレはギュッと唇を噛みしめた。
セレスティーナが魔族の花嫁に選ばれたことに混乱せずに、もっと冷静になっていればセレスティーナを失うことはなかったはずなのに。なぜ、あの時オレはセレスティーナが魔族の花嫁に選ばれたことを素直に真に受けてしまったのだろうか。
後悔してももう遅い。
これからは後悔しないように冷静に行動しなければ、と胸に誓う。
セレスティーナを取り戻すために。
「……ロイド様。私、失礼いたしますわね。また参ります。」
アリス嬢はそう言って私から離れていった。
私はアリス嬢が離れていったことにホッとため息をついた。
アリス嬢が側にいると、なぜだか身体の調子が悪くなるのだ。それに、どうしてもオレにはアリス嬢がセレスティーナを陥れたように感じてしまう。
☆☆☆☆☆
「巫女が亡くなったか……。」
皇帝陛下は椅子に深々と座りながら大きなため息をつき顔を顰めた。
「はい。そのようにございます。」
フォン宰相は皇帝陛下の前に膝まづき恭しく頭を下げる。
「セレスティーナが魔族の花嫁に選ばれたというのは巫女の嘘であったということだな。」
「……断言はできませんが、巫女が何かしらの嘘をついたというのは確かでございましょう。巫女は神の意思と異なることをすれば神によって罰せられてしまいますゆえ……。ゆえに、巫女が嘘をつくなど誰も思いませんでした。」
「そうだろうな。巫女が自分の命をかけてまで嘘をつく理由がない。私も巫女は嘘をつかないものだと信じ込んでいたよ。」
皇帝陛下はそう言って重いため息をつく。
国を統べる者が容易く他社の言葉を信じるとは……。と自責の念にかられて。
「魔族の花嫁が必要という話も鵜呑みにしてきたが、もしかすると魔族の花嫁は必要ないのかもしれんな。そうは思わないか?」
皇帝陛下は確かめるようにフォン宰相に問いかける。
フォン宰相はしばらく考えたあとに諾と答えた。
「……はい。ですが、確かめるには国を危険にさらす可能性が高くございます。ですから歴代の皇帝陛下様も、魔族の花嫁という制度が不要かもしれないということを深く追求しなかった可能性がございます。」
「そうだな。下手をしたら魔族に約束を破ったとして侵攻される恐れがあるものな。」
「はっ……。」
「しかし、此度の巫女の嘘は重大だ。魔族の花嫁に選ばれたセレスティーナは皇太子妃だったのだからな。誰かが皇太子妃の座を狙って、巫女と結託したのかもしれんな。そう思わないか、フォン宰相?」
皇帝陛下は鋭い視線をフォン宰相に向けた。
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