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第8話
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侯爵家で晩餐会が開かれる日の朝、私は庭の東屋にある椅子に腰掛けていた。今日着ていくドレスを選んで貰うため、クリスを待っているのだ。
そばに控えているロザリーはその手にクリスが好んで食べるプチトマトを持っている。クリスはお魚やお肉よりもなぜか庭に植えてあるプチトマトを好んだ。お魚やお肉だって猫の健康を考えて味付けはせずに火を通すだけにしているのだけれども。
「今日は遅いですね。」
「そうね。いつもはもう来ているはずなのに。」
ドレスをクリスに選んでもらおうとしたのに、今日に限ってクリスがなかなか姿を現さない。いったいどうしたのだろうか。
猫という生き物は気まぐれな生き物なので、毎日同じ場所にいるとは限らないがいつも同じ時間にこの東屋に姿を現していたというのに。
「今日はこないのかしら?」
「珍しいですね。」
それからしばらく待ってもクリスは現れなかった。代わりにいつもは見ない白猫がとことこと私の方に近づいてきた。
「まあ、珍しい子だわ。初めて見る子ね。」
私は近づいてくる白猫に笑顔を向ける。白猫は上品に身体をしならせながらゆったりと私の元に近づいてくる。そうして、私の前に立ち止まると私を見上げて「にゃあ。」と一声鳴いた。
どうやら何かを訴えているようだ。だけれども、白猫の様子からするに急をようするものではないようだ。鬼気迫るような感じではないからだ。
「どうしたのかしら?」
「にゃあ。」
白猫はもう一度鳴いて何かを訴えている。そうしてあたりをキョロキョロと見回した。私も白猫の目線を追うようにあたりを見回すが特になにも見当たらない。ロザリーも同じようで不思議そうな顔をしている。
「・・・・・・プチトマト食べる?」
特にあたりには何もないようだし、もしかしたらお腹を空かせているのかもしれないと思いクリスに用意したプチトマトを差し出してみる。しかし、白猫は首を傾げるばかりで食べる気配がない。
やはりクリス以外の猫はプチトマトを好まないのだろうか。
「にゃあ。」
白猫はもう一度鳴くと踵を返してしまった。どうやら私の対応がお気に召すようなものではなかったようで、興味を無くしたようだ。いったいあの白猫は何を告げに来たのだろうか。
「あ、クリス。今日は遅かったわね。」
白猫が姿を消してしばらくしてから、黒猫のクリスが駆け寄ってきた。そうして、私の足に飛びついてくる。まるで「遅れてごめんね」と言っているようにも見えた。
私は足にすりついているクリスをひょいと抱き上げる。クリスはゴロゴロと喉を鳴らしながら、私の胸元に頭をこすりつけている。それはいつも通りのクリスだ。
「ねえ、クリス。今日は侯爵家で晩餐会があるの。その晩餐会に着ていくドレスをクリスに選んで欲しいのだけど、いいかしら?」
私はクリスにそう問いかける。すると、クリスは不思議そうに首を傾げた後に「いいよ」というように「にゃあ。」と返事をした。
そばに控えているロザリーはその手にクリスが好んで食べるプチトマトを持っている。クリスはお魚やお肉よりもなぜか庭に植えてあるプチトマトを好んだ。お魚やお肉だって猫の健康を考えて味付けはせずに火を通すだけにしているのだけれども。
「今日は遅いですね。」
「そうね。いつもはもう来ているはずなのに。」
ドレスをクリスに選んでもらおうとしたのに、今日に限ってクリスがなかなか姿を現さない。いったいどうしたのだろうか。
猫という生き物は気まぐれな生き物なので、毎日同じ場所にいるとは限らないがいつも同じ時間にこの東屋に姿を現していたというのに。
「今日はこないのかしら?」
「珍しいですね。」
それからしばらく待ってもクリスは現れなかった。代わりにいつもは見ない白猫がとことこと私の方に近づいてきた。
「まあ、珍しい子だわ。初めて見る子ね。」
私は近づいてくる白猫に笑顔を向ける。白猫は上品に身体をしならせながらゆったりと私の元に近づいてくる。そうして、私の前に立ち止まると私を見上げて「にゃあ。」と一声鳴いた。
どうやら何かを訴えているようだ。だけれども、白猫の様子からするに急をようするものではないようだ。鬼気迫るような感じではないからだ。
「どうしたのかしら?」
「にゃあ。」
白猫はもう一度鳴いて何かを訴えている。そうしてあたりをキョロキョロと見回した。私も白猫の目線を追うようにあたりを見回すが特になにも見当たらない。ロザリーも同じようで不思議そうな顔をしている。
「・・・・・・プチトマト食べる?」
特にあたりには何もないようだし、もしかしたらお腹を空かせているのかもしれないと思いクリスに用意したプチトマトを差し出してみる。しかし、白猫は首を傾げるばかりで食べる気配がない。
やはりクリス以外の猫はプチトマトを好まないのだろうか。
「にゃあ。」
白猫はもう一度鳴くと踵を返してしまった。どうやら私の対応がお気に召すようなものではなかったようで、興味を無くしたようだ。いったいあの白猫は何を告げに来たのだろうか。
「あ、クリス。今日は遅かったわね。」
白猫が姿を消してしばらくしてから、黒猫のクリスが駆け寄ってきた。そうして、私の足に飛びついてくる。まるで「遅れてごめんね」と言っているようにも見えた。
私は足にすりついているクリスをひょいと抱き上げる。クリスはゴロゴロと喉を鳴らしながら、私の胸元に頭をこすりつけている。それはいつも通りのクリスだ。
「ねえ、クリス。今日は侯爵家で晩餐会があるの。その晩餐会に着ていくドレスをクリスに選んで欲しいのだけど、いいかしら?」
私はクリスにそう問いかける。すると、クリスは不思議そうに首を傾げた後に「いいよ」というように「にゃあ。」と返事をした。
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