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本編
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しおりを挟むランティス様・・・。
なんてあっけなかったのかしら。
全ての黒幕はランティス様だったということよね。
つまり、もうすべては平和になったと思っていいのよね。
「あ・・・。ああ・・・。どうして、どうして私、まだ生きているの・・・。」
ホッとした空気が漂ったのもつかの間、シルヴィアさんの困惑したような声が聞こえた。
そうか。
シルヴィアさんは自分が不老不死になったということは知らないのか。
だから、殺されたはずの自分が生きていることが不思議でならないのだろう。
混乱しているシルヴィアさんの様子はとても哀れに思えた。
「シルヴィアさん・・・。」
「あっ!エメロード嬢・・・。なんで・・・。」
シルヴィアさんは私の顔を見るなり恐怖に引きつった声をあげた。
そしてずりずりと後ろに引き下がる。
「シルヴィアさん・・・?」
私は不思議に思ってシルヴィアさんを凝視した。
「やだっ!見ないで・・・。見ないで・・・。」
シルヴィアさんは髪を振り乱しながら頭を押さえて首を横に振り続ける。
まるで壊れた人形のように。
いったいシルヴィアさんはどうしてしまったのだろうか。
死の恐怖で気が触れてしまったのだろうか。
「ふむ。邪竜の気に飲まれたのだ。邪竜の気の中で絶望を永遠と見せられていたのだろう。」
プーちゃんはそう言って痛ましいものを見るように目を細めた。
精霊王も同じようにシルヴィアさんのことを見ている。
「・・・治らないんですか?」
「無理じゃ。心に傷を負っているゆえ、妾では治すことはできぬ。もちろんプーちゃんでも無理じゃ。」
「うむ。全治全能の我に唯一できないことなのだ。」
心の傷・・・か。
「邪竜はそのものの一番怖がっているものを幻で見させるのじゃ。きっとあの者はエメロードのことを怖がっていたんじゃろ。」
「えっ?私が怖い?シルヴィアさんが?」
どうして?
むしろシルヴィアさんは私を目の敵にしていたのに。
「そうね。彼女はエメロードちゃんが怖かったのね。だから、エメロードちゃんに不必要に絡んだのよ。そうしていないと自分の心が壊れそうだったから。」
アクアさんも精霊王と同じことを口にする。
私が怖いとはいったいどういうことなのだろうか。
「あのね、エメロードちゃんは光なのよ。とっても眩しいの。だからランティスもエメロードちゃんに固執した。シルヴィアはエメロードちゃんの光が欲しかった。それと同時に自分が持っていないその光を恐れたのよ。きっとシルヴィアの中ではエメロードちゃんに会うまでは自分が一番凄いと思っていたのね。でも、それが違うことに気づいた。」
「それで恐れをなしたのじゃ。それがエメロードがシルヴィアから絡まれた原因じゃ。」
私が・・・すべての原因?
私は自分の両手を見つめた。
「人間は脆いのだ。脆くてとても儚い。ゆえに嫉妬をする。」
プーちゃんがどこか遠くを見て呟いた。
嫉妬・・・?
シルヴィアさんは私に嫉妬していたのだろうか?
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