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本編
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しおりを挟む「かはっ・・・。」
トリードット先生は黒い霧が胸に突き刺さった瞬間に口から血を吐いてその場に倒れこんでしまった。
動かないところを見ると意識がないようである。
「「「トリードット先生っ!!」」」
アクアさんとメリードット先生と私の悲痛な声が重なる。
精霊に関して一番詳しいのはトリードット先生なのだ。
それに、ジェリードット先生とトリードット先生の様子も気になる。
無事・・・なのだろうか。
ここからでは、トリードット先生とジェリードット先生の安否がわからない。
二人の元に近づきたいがシルヴィアさんがこちらを睨んでいるので難しい。
「・・・っ!?私が悪いんじゃないわよ!トリードット先生が私の精霊の卵を邪竜呼ばわりするからいけないのよ!私のせいじゃないわ!私のせいじゃないわ!!」
シルヴィアさんも自分の精霊の卵が人を攻撃したことに混乱しているのか、両手で頭を押さえながら首を横に振っている。
その瞬間、シルヴィアさんの真っ白い精霊の卵のヒビがさらに大きくなった。
「いかんっ!孵化するぞ!!」
そう叫んだのは誰だったか。
誰かが叫んだのと同時に卵の殻がはじけ飛ぶ音が聞こえてきた。
途端に辺りが真っ黒に染まる。
自分の手を顔の前に持ってきても自分の手が目視できないほどの闇だ。
それと同時に寒気が私の身体を襲う。
ガタガタと身体が震えだし、立っていられなくなる。
『ぐぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』
これまで聞いたことがないほど低い叫び声が聞こえてきた。
まるで地の底から声がでているような恐ろしい叫び声だ。
叫び声を聞いていると耳が痛くなってきて、めまいまでしてくる。
当然起き上がるような気力もなく、その場に力なく横たわることしかできない。
そうして私は、この世界が混沌に支配されてしまうのだと直感的に感じた。
「きゃあああああああああ!!!!!どうして!どうしてなのよ!!私が育てたのにっ!!こっちにこないでちょうだい!!!」
耳をつんざくような悲鳴が聞こえてくる。
これはシルヴィアさんの声だろうか。
耳が正常に機能していないのか、シルヴィアさんの声がエコーがかかったように聞こえてくる。
「いやっ!いやっ!!いやっ!!こないでちょうだいっ!!こないでったら!!こないでよ・・・。こないで・・・。ああああああああああああ!!!」
一際シルヴィアさんの声が大きくなり、その声が絶望に染まっていく。
一体なにがおこっているのだろうか。
真っ暗な闇の中ではなにも見えない。
ぐちゃりっ。
何かが潰れたような音が聞こえてきた。
それと同時にシルヴィアさんの叫び声も聞こえなくなった。
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