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「アリーチェ。ここ、うるさいのね。」

メリーチェは食堂について開口一番にそう言った。

確かに食堂では学生たちがおしゃべりしながら食事を楽しんでいる。

だが、うるさいというほどでもない。

普通に食事をしながらしゃべっているだけだ。

「そう?さあ、空いている席に座りましょう。」

「え、ええ。勝手に座って良いのかしら?」

キョロキョロとしながらメリーチェは席に座った。

席を案内する使用人がいないことが不思議なのだろう。

席についてベルを鳴らすとすぐに食堂のウエイトレスさんが朝食を持ってやってくる。

「あら?食事は選べないのかしら?」

「申し訳ございません。こちらでは一種類しかお出ししておりません。」

そう、ここでは食事を選ぶことはできないのだ。

日替わりのセットしか選べない。

それが嫌な人は部屋での食事を楽しむか、家から連れてきた使用人に頼んで好きなものを作ってもらうしかない。

だから、この食堂には比較的金銭的にあまり余裕のない者が集まるのだ。

メリーチェは運ばれてきた朝食をまじまじと見ると一口口に運んだ。

「味は・・・まあまあね。」

「そうだね。」

可もなく不可もなくそれがこの食堂の味だ。

「・・・私にはちょっと多い量だわ。」

「だからメリーチェ様は細いんですね。もっとしっかり食べないと!」

朝食のことになると熱が入ってしまう私は、メリーチェにご飯を食べることの大切さを説いていた。

メリーチェは、それを鬱陶しいと思うわけでもなくただ頷きながら聞いていた。

「あ、あれはメリーチェ様じゃないの。」

「あら。しかも、みすぼらしい男爵の養子が一緒だわ。」

「まあ!養子ごときがメリーチェ様に取り入ろうとするだなんて。恥知らずもいいところね。」

「それだけ教養がないんじゃないのかしら?」

「ほほほ。そうね。」

食事が終わった人たちがこちらに気づいたのか、私たちを見てひそひそ話を始めた。

それもそうだろう。

大貴族であるメリーチェがここにいるのだから。

しかも貧乏男爵の娘と言われている私が一緒にいるのだ。

目立たない訳がない。

ちらりとメリーチェを見る。

だた、メリーチェはそ知らぬ顔で食後の紅茶を嗜んでいた。

私もメリーチェにならって周りの視線を気にしないように努めた。

すると徐々に人が減っていく。

相手にしないことで興が冷めたようだ。

「ああいう人たちの相手はしないことよ。気にしないこと、それが一番。ただ、実際に手をだされたらやりかえしましょうね。」

メリーチェは私にだけ聞こえるように言ってから優しく微笑んだ。

・・・。ほんとうにメリーチェってば悪役令嬢っぽくないなぁ。

どうして聖女様みたいに清廉に微笑むのだろうか。

「さ、行きましょう。」

メリーチェのその言葉で私たちは立ち上がって食堂を後にした。

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