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【にゃんこ講座第一回】   

「まずは、僕たちを可愛がってくれる人間を見極めること。」

僕は一段高くなっているブロックの上に立ち、にゃんこ講座を始めた。
みんな聞いてくれるかな。
ドキドキしながら、話始める。

「人間はもれなく全て僕たち猫に対して良い感情を持っているわけではないということを念頭にいれておいて欲しい。僕たちが人間に危害をくわえなくても僕たちを気に入らない人間はいる。だから、まずは仲良くなる人間の見極めからおこなう。」

「どういった人間なら近づいても大丈夫なの?」

「それを見極めるのは難しい。気になる人間がいたらじっくり観察してみることをお勧めする。慎重に見極めて欲しい。一見僕たちに優しく接するようにみえて、危害を加えてくる人間もいるから、すぐには信用しないように。じっと見ていればわかるようになる。いくら優しくみえても、僕たちに危害を加えようとしている人間と僕たちを愛でてくれる人間は雰囲気がまず違う。これを見極めるのは困難だけど、じっくりゆっくり見極めてほしい」

「うーん。観察?適度な距離をもって?」

「逃げ出すことができる距離を保って観察しないと危険。人間は道具を使うから」

「わかった」

途中質問を交えながら、丁寧に教えていく。こういう人間は優しくみえても怪しいとか。こういう人間は僕たちを見るだけで危害をくわえてくるとか。
パターンを交えて説明していく。

「少しでも危害を加えそうだと思った人間をみたらすぐに逃げること。それから、この集会や会った猫たちに危険な人間の特徴を伝えていくこと。これは、僕たちが生き残るには重要なことだから、覚えておいてね」

「うん」

どうやら、皆素直に聞いていてくれるみたいだ。安心した。

人間を見極める。
危険な人間の特徴を共有する。これらは、重要な事柄だから、しっかりと覚えておいてほしい。

僕は今まで会ったことのある危険人物の特徴等を皆に説明していった。
それを、皆は真剣に聞いていてくれた。

今日は初回なので、講座はこれまでにする。次回からはもっと踏み込んでいこうと思う。

僕たちは猫だ。
猫は気まぐれだ。
だから、講座の時間が長ければ皆集中してきいてくれない。そのため、一回の講座は手短に終えるのがベストだ。

僕の第一回目の講座が終わり、リーダーがその後を引き継ぐ。

「新しい猫の目撃情報はあるか?子猫がどこかで寂しく鳴いたりしていないか?」

これはいつもリーダーが確認していること。新しい猫には、この集会のことを伝えて、可能であれば参加してもらう。
情報を伝達することは大切だ。
この日は特に、新しい猫を目撃したという情報はなかったので、次回の開催場所を決めて集会はお開きとなった。
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