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第60話

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「マリアッ!!」

 ヒューレッドは崩れ落ちて痙攣しているマリアを抱きかかえる。

「あらあら。見せつけてくれるわね。ヒューレッド様は私のものなのに。でも、いいわぁ。聖女候補のマリアを蘇生したのが誰だかわかったからそのくらいは大目にみてあげるわ。」

「マリア!マリア!!」

 マリアは意識を失ったのか、手足をだらんと弛緩させヒューレッドの身体の上に倒れ込んだ。呼吸音も荒く全力疾走をしたかのように脈が速い。

「うふふふふ。ねえ、マリア。あなたを蘇生したのはやっぱりあのアルビノの女だったのね。そう。やっぱりそうだったのね。ねえ、マリア。あの女は聖女として覚醒したのかしら?覚醒したのよね?だから、あの女はマリアを蘇生することができた。そうよね。そうなのよね?あの女が私より先に聖女として覚醒したから、私が聖女として覚醒できなかった。そうよね?そうなのよね?忌々しいわ。あの女が。私、とっても怒っているのよ。あの女の所為で渡しの聖女としての力が覚醒しなかった。そうよね?絶対にそうよ。そうなのよ。アルビノなのに。できそこないなのに。あの女がいるせいで、私は本物の聖女になれないの。ねえ、とっても悔しいわ。私、とっても悔しいのよ。」

 マリルリの言葉にヒューレッドはドキッとした。
 マリルリの言葉はまっすぐにセレスティアに向けられている。マリルリが内に秘めるとてつもない憎悪をセレスティアに向けているからだ。
 セレスティアの居場所をもしマリルリが知ったら、すぐにでもセレスティアを亡き者とするであろうことはヒューレッドにも想像できた。なにせマリルリは過去に聖女候補のマリアを亡き者としているのだから。

「ねえ、ヒューレッド様ぁ?あなたが私のものになっても、あの女が生きている限り私は安心できないの。そうなのよ。私は安心して聖女を務めることができないの。ねえ、わかるでしょう?私はあの女に生きていてもらっては困るのよ。だって、この国に聖女は二人もいらないのよ。一人で充分なの。わかるでしょう?それに、聖女は一国に一人しか産まれないのよ。あの女が聖女として覚醒してしまったからには、あの女が生きているうちは私は本物の聖女になれないのよ。わかるでしょう?ねえ、わかるでしょう?わかるわよね?わかってくれるわよねぇ?」

 どこか狂ったかのようにマリルリは心のうちを吐露する。
 マリルリから逃げたヒューレッドにあえてマリルリの心のうちを吐露している。それは、マリルリが話している相手がヒューレッドだと認識していないのか、それともなにか思惑があってのことなのか。
 ヒューレッドはマリルリの考えがわからずに、マリアを抱き留めたままその場から動くことができなかった。


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