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第47話
しおりを挟むヒューレッドはマリアにお金を借りて、フワフワが所望した串焼きの肉を購入した。というか、串焼きの屋台の列にマリアとヒューレッドは仲良く二人で並んで購入したというのが正しい。
どこで何があるかわからないから、二人一緒に行動した方が良いとの判断だった。
「お肉~♪良い匂いなの~。早く早くぅ~。」
フワフワは購入したばかりの串焼きを見て、目をキラキラと輝かせている。もちろん、フワフワの分の串焼きは味付けなしで特別に焼いてもらったものだ。
香辛料がフワフワにとって良いものだか悪いものだかヒューレッドには判断がつかなかったということもある。
「はいはい。ちょっと待ってて。」
そう言って、広場のベンチにマリアと並んで座ったヒューレッドは、買ったばかりの串焼きを取り出し自分の口に入れた。
「あーー!!ヒュー酷いっ!フワフワのお肉!お肉食べたのー!!」
串焼きがヒューレッドの口の中に吸い込まれたのを見て、フワフワが抗議の声を上げる。
「はいはい。でも、まだフワフワは歯が生えそろってないから、堅いお肉は食べれないでしょ。今、かみ砕いて柔らかくしてるから。ちょっと待ってて。」
「お肉っ!!肉汁っ!!美味しい肉汁をヒューに盗られたっ!!盗られたのぉ!!」
ヒューレッドが歯が生えそろわないフワフワのために、串焼きを噛んで柔らかくしていると、フワフワから更に抗議の声が上がった。
その声を聞いて、ヒューレッドは「確かに……。」と後悔した。
美味しい肉汁はヒューレッドの口の中だ。フワフワに渡ることはないだろう。
フワフワに渡るのは美味しい肉汁が搾り取られた肉の滓だけだ。フワフワが怒ることも仕方のないことだと、やっとヒューレッドは思い至った。
だが、歯が生えそろっていないフワフワに串焼きを与えるのは噛み切れないため、喉に詰まらせる危険もある。
「あははっ。そうね、お肉は肉汁が美味しいものね。ねえ、あんたさ、その子ほんとに歯が生えそろってないの?」
ヒューレッドとフワフワのやりとりを側で見ていたマリアが笑いながら声をかけた。
「むっ。今朝はまだ歯が生えそろっていなかったんだが……。」
「そう。でも、その子魔獣なんでしょう?しかも、セレスティア様から借りてる特別な魔獣なんでしょう?魔獣の子は生育が早いと聞くわ。朝、生えそろっていなかった歯も、もしかしたらもう生えそろっているかもしれないわよ?」
「……そうなのか?」
朝見たときはフワフワの歯は生えそろっていなかった。それがたった数時間で歯が生えそろうものなのだろうか。ヒューレッドは不思議に思い、フワフワをまじまじと見つめる。
「そんなことより、美味しいお肉が食べたいのー!!」
フワフワは見つめられるよりも早くお肉が食べたくてヒューレッドに催促する。
「そういえば、朝はカタコトだったフワフワの言葉がはっきりしているような……。」
ヒューレッドは今になってから気がつく。
朝のうちはフワフワは単語をいくつかしかしゃべらなかったような気がする。それなのに、今はどうだろうか。流暢にしゃべっているではないか。
「……成長が早い、か。なあ、フワフワ、歯を見せてくれ。そしたらお肉をすぐにあげるから。……オレが一口食っちゃったけど。他のも食べたいの買ってやるから。」
「お腹空いたんだから、早くするの-。」
フワフワは文句を言いながらも、ヒューレッドに向かって口を大きく開いた。
フワフワの口の中を覗き込むヒューレッド。
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