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第11話
しおりを挟む猫の魔獣に導かれるがまま夜道を歩き続ける。不思議なことに月がいつもより明るく感じられ、暗い夜道でも歩きやすい。まるでヒューレッドの行く道を月が照らしてくれているようだった。
「にゃあ。」
猫の魔獣に導かれるがまま道なき道をヒューレッドは歩き続ける。もうどれくらい歩いただろうか。夜が明けるのか、空が白んできた。何時間も歩いているはずなのにヒューレッドには不思議と疲労感がない。それどころか、歩くスピードが上がっているような気がする。
「にゃあ。」
「なあ。このままどこまで歩き続けるんだ?」
「にゃあ。」
「ごめん。おまえの言葉がオレにはわからない。」
「にゃあ。」
猫の魔獣は何か言っているように思えるが、ヒューレッドは猫の魔獣が何を言っているのか理解ができなかった。
猫の魔獣は王都から離れた街道にある脇道に入っていった。人が一人歩く幅しかないような細い道だ。普通の人は見逃してしまうだろう。
「こんなところに入るのか?どこに行くんだ?」
「にゃあ。」
ヒューレッドはどこに向かうのか不思議に思い、先を行く猫の魔獣に聞いてみるが、猫の魔獣は「にゃあ。」と鳴くだけだった。
聖女マリルリの手から逃れるために、一刻も早く国から出たかったが、目の前にいる猫の魔獣とここで別れるのは名残惜しいような気がした。それに、ヒューレッドには猫の魔獣がヒューレッドをどこかに連れて行こうとしているように思えるのだ。
王都は離れたし、少しくらい寄り道をしてもいいかと、ヒューレッドは猫の魔獣に続いて細い道に入っていく。
道は細く長くくねくねと曲がりくねりながら続いている。そして、どんどんと森の中に分け入っているようだ。だが、不思議とヒューレッドは恐怖を感じなかった。ただ、森の中は空気が澄んでおり、ヒューレッドは新鮮な気分を味わっていた。
「にゃあ!にゃあ!」
しばらく猫の魔獣の後についていくと、急に猫の魔獣が何かを訴えるように強く鳴き声を上げた。そこは、細長い道が開けている場所であり、木でできた小さな小さな家が建っていた。その家のドアの前で、猫の魔獣は家の中に向かって鳴いているようだ。
「おまえの家なのか?」
ヒューレッドは確認するように猫の魔獣に確認するが、猫の魔獣はヒューレッドの問いかけに答えることはなく、ただ家の中に向かって鳴き声を上げていた。
「クロ?帰ってきたの?マリルリの獲物は無事に逃げられたかしら?」
猫の魔獣が家のドアの前で鳴いていると、ドアがゆっくりと開かれた。そして、一人の少女が姿を現した。少女はヒューレッドの姿など見えないようで、ヒューレッドの姿には目もくれずクロと呼ばれた猫の魔獣に話しかけた。
少女は珍しい銀色の髪をしていた。光の加減で少し青みがかっているようにも見えるなんとも神秘的な髪だった。そして、透き通ってしまうのではないかというほど白い肌をしていた。
ヒューレッドには少女がまるでこの世のものだとは思えなかった。
「精霊……か?」
「誰!?」
ヒューレッドが少女に見とれながらふいに疑問を口に出すと、少女がやっとヒューレッドがいることに気づいたようで、勢いよく振り返った。
少女の透き通る赤い瞳がヒューレッドを射貫いた。
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