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第三章

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春兄は私を幸せにしてくれるの?
凪と一緒に?

でも、私、前世も幸せだったんだよ。
春兄がいて、凪もいてくれたから。
凪との別れはとても辛くて、苦しくて、悲しくて、なにも出来なかった私が嫌いだった。
凪を守れなかった私が嫌いだった。

「私は、凪にも今度こそは幸せになってもらいたい。幸せになって、今度こそ天寿をまっとうしてほしいと思っているの」

もう、あんな酷い別れ方はしたくない。
あんな辛い思いはしたくない。

「華……ありがとう。でも、僕は前世でも幸せだったんだ。華と会えたから。ずっと華といられなかったことは悔いだったけど、でも華と出会えなかったら僕は幸せという感情を持つこともなかった」

「でも、凪のあんな死に方、私はっ………………!!」

私は凪の腕をぎゅっと握る。
もう、離れたくない。
ずっとずっと側にいて欲しかったの、凪。
短い間だったけど、私は凪に会えて本当に幸せだった。

「気にしないで。あれは僕の運命だったんだ。でも、またこうして出会えた。それだけでいいんだ」

「凪っ!!私は幸せだったんだよ。凪と一緒にいることができて。短い間だったけど、本当に幸せだった」

「うん。ありがとう。嬉しいよ」

凪は私を抱き締めると、背中にまわした腕でポンポンと私の背中を軽く叩いた。
前世では触ることの出来なかった凪の体温を感じて、心がポカポカと暖かくなる。
凪の鼓動の音が微かに聞こえてくる。
ああ、生きているんだぁ。なんてしみじみ思ってしまい、勝手に涙が出てくる。
前世では生きている凪に触れることもできなかったし、鼓動の音を聞くこともできなかったから。
凪が生きていてくれることが、ただただ嬉しい。

「あのね……春と僕は華を幸せにしたかったんだ。だから、華をこの世界に送り込んだ。だけど、手違いがあってね…………」

凪はそこで言葉を途切れさせた。
なんて言って良いか考えているようだ。
手違いってなんだろう?

「……手違いって?」

「……華とは違う人間の魂をこの世界に送ってしまったこと。それにより華はヒロインのアンナになれなかった………………」

「今のアンナはこの世界に来るべき予定ではなかった?」

「そう、僕たちの事情に巻き込んでしまったんだ」
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