32 / 65
第二章
31
しおりを挟む
一瞬だけ浮上した意識だったが、またすぐに意識を失ってしまった私が次に目を覚ましたのは、寮の自室だった。
パチパチと何度が目を瞬きさせる。
あれば夢だったのだろうか・・・。
考えるように思考を巡らせたとき、部屋のドアが開き、水差しを持ったリザが入ってきた。
視線だけをリザに向ける。
身体は力が抜けたように動かないのだ。
「・・・リ・・・ザ」
喉がカラカラなのか、声が掠れてしまった。
リザが目を丸くして、小走りに近寄ってくる。
「アルメディアお嬢様!目が覚めたんですね。よかった・・・。よかった・・・」
いつもは冷静なリザの目から涙が溢れ落ちる。
どうやら、リザをとても心配させてしまったようだ。
リザの手を借りて、寝ていた体をベッドに座る体制に変更する。
そして、リザから水差しからコップに移し変えられた水を受け取り、飲む。
どうやらよほど喉が乾いていたようで、あっという間に水を飲み干してしまった。
「アルメディア様。アルメディア様がお好きなリンゴもございます。いかがですか?」
そう言って、リンゴを口元まで持ってきてくれる。
リンゴは大好きだ。
よく、春兄が剥いて食べさせてくれたのがリンゴだった。
春兄はリンゴをウサギ型にしてみたり、星形やハート型にして食べさせてくれた。
私を膝に乗せて。
小さい頃からだったし、他にしゃべる人なんていないから、リンゴの食べ方は膝に乗って食べるものだと思っていた頃もあった。
今思うととても恥ずかしい。
「食べる。リザ、食べさせて?」
「わかりました」
昔の記憶を思い出して、甘えたくなってしまったから、迷わずリザに甘える。
覚えば病気になったときはいつもリザに甘えていた気がする。
これも、きっと前世からの癖かしら?
リザにリンゴを食べさせてもらいながら、どうやって私がここまで帰ってきたのかをリザに訪ねた。
「アレキサンドライト様が気を失っているアルメディア様をお姫さま抱っこで運んできました。なにがあったのでしょうか、アルメディア様。アレキサンドライト様はとても辛そうな表情をなされておりました」
「春兄・・・ごめんね。私が思い出すことを拒絶したばかりに辛い思いをさせて。でも、まだ思い出すには辛すぎるの。」
「アルメディア様?何かおっしゃいました?」
「いいえ。なんでもないの」
私の独り言をリザが聞いていたらしい。小さな声だったのになんて、なんて地獄耳な・・・。
パチパチと何度が目を瞬きさせる。
あれば夢だったのだろうか・・・。
考えるように思考を巡らせたとき、部屋のドアが開き、水差しを持ったリザが入ってきた。
視線だけをリザに向ける。
身体は力が抜けたように動かないのだ。
「・・・リ・・・ザ」
喉がカラカラなのか、声が掠れてしまった。
リザが目を丸くして、小走りに近寄ってくる。
「アルメディアお嬢様!目が覚めたんですね。よかった・・・。よかった・・・」
いつもは冷静なリザの目から涙が溢れ落ちる。
どうやら、リザをとても心配させてしまったようだ。
リザの手を借りて、寝ていた体をベッドに座る体制に変更する。
そして、リザから水差しからコップに移し変えられた水を受け取り、飲む。
どうやらよほど喉が乾いていたようで、あっという間に水を飲み干してしまった。
「アルメディア様。アルメディア様がお好きなリンゴもございます。いかがですか?」
そう言って、リンゴを口元まで持ってきてくれる。
リンゴは大好きだ。
よく、春兄が剥いて食べさせてくれたのがリンゴだった。
春兄はリンゴをウサギ型にしてみたり、星形やハート型にして食べさせてくれた。
私を膝に乗せて。
小さい頃からだったし、他にしゃべる人なんていないから、リンゴの食べ方は膝に乗って食べるものだと思っていた頃もあった。
今思うととても恥ずかしい。
「食べる。リザ、食べさせて?」
「わかりました」
昔の記憶を思い出して、甘えたくなってしまったから、迷わずリザに甘える。
覚えば病気になったときはいつもリザに甘えていた気がする。
これも、きっと前世からの癖かしら?
リザにリンゴを食べさせてもらいながら、どうやって私がここまで帰ってきたのかをリザに訪ねた。
「アレキサンドライト様が気を失っているアルメディア様をお姫さま抱っこで運んできました。なにがあったのでしょうか、アルメディア様。アレキサンドライト様はとても辛そうな表情をなされておりました」
「春兄・・・ごめんね。私が思い出すことを拒絶したばかりに辛い思いをさせて。でも、まだ思い出すには辛すぎるの。」
「アルメディア様?何かおっしゃいました?」
「いいえ。なんでもないの」
私の独り言をリザが聞いていたらしい。小さな声だったのになんて、なんて地獄耳な・・・。
1
お気に入りに追加
2,114
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
モブはモブらしく生きたいのですっ!
このの
恋愛
公爵令嬢のローゼリアはある日前世の記憶を思い出す
そして自分は友人が好きだった乙女ゲームのたった一文しか出てこないモブだと知る!
「私は死にたくない!そして、ヒロインちゃんの恋愛を影から見ていたい!」
死亡フラグを無事折って、身分、容姿を隠し、学園に行こう!
そんなモブライフをするはずが…?
「あれ?攻略対象者の皆様、ナゼ私の所に?」
ご都合主義です。初めての投稿なので、修正バンバンします!
感想めっちゃ募集中です!
他の作品も是非見てね!
転生令嬢はやんちゃする
ナギ
恋愛
【完結しました!】
猫を助けてぐしゃっといって。
そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。
木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。
でも私は私、まいぺぇす。
2017年5月18日 完結しました。
わぁいながい!
お付き合いいただきありがとうございました!
でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。
いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。
【感謝】
感想ありがとうございます!
楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。
完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。
与太話、中身なくて、楽しい。
最近息子ちゃんをいじってます。
息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。
が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。
ひとくぎりがつくまでは。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
もふきゅな
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる