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第一章

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「ごきげんよう。レイン様」

「ごきげんよう。アルメディア様」



教室の中にはまだほとんど誰も来ていなかった。

珍しい。

いつもなら半数以上はもう来ているのに。



近くの席のレイン様に挨拶をして、自席に座る。

レイン様は冷静沈着なクーデリア伯爵家のご令嬢だ。

席も近いこともあって、よく話す。

この学園にきて、一番仲のよい令嬢だ。



「ねえ、なぜ今日は皆様いらっしゃらないのかしら」

「あら、ご存じないの?アンナ嬢がやらかしているのよ」

「アンナ嬢が?」



レイン様に聞けば、ヒロインちゃんが何かをやらかしたらしい。そのため、大半の生徒が野次馬と化しているとのこと。



「今日は何をなさったの?」



ヒロインちゃんが何かをしでかすのはいつものことだけど、年のため確認してみる。



「マクロン・ナルニエール様に朝から突撃したそうよ」

「まあ。あのナルニエール様に?」

「ええ。来るもの拒み、去るもの追わずのナルニエール様に抱きついたそうよ。そのお陰で、ナルニエール様が絶対零度の笑みを浮かべているそうよ。でも、そんなことおかまいもせずに、アンナ嬢が付きまとっているそうなの」

「それは、まあ、なんというか。アンナ嬢は勇気があるお方なのね」



マクロン様の絶対零度の笑みをみて、平然としているなんてすごい。

マクロン様が怒っていらっしゃると、視線だけで人を殺せそうなのに、それに怯まないヒロインちゃんすごい。



「あら、噂をすれば」



大勢の人の足音が近づいてくる。

その中からは、ワントーン高いヒロインちゃんの声がする。



「マクロン様。マクロン様のお好きな食べ物はなにかしら?私、頑張ってつくってくるわ」



「・・・」



「マクロン様?照れていらっしゃるの?そうよね、マカロンが好きだなんて、恥ずかしくて言えないのかしら?可愛いよね、マカロン。美味しいよね、マカロン。」



「・・・(怒)」



「良いわ。恥ずかしくて言えないことわかっているから。ふふ。可愛いのねマクロン様ってば。明日、美味しいマカロン作ってくるね。楽しみにしててね」



ああ、怒ってる。怒ってる。

っていうかヒロインちゃん地雷踏みすぎ。

マクロン様はマカロンが大好物なんだけど、マカロンの見た目のかわいさと甘さから、大っぴらには言えないと思っている方なのだ。

それを、ズバズバと口にだしあまつさえ皆に聞こえるように「マカロンが好き」だなんて、言うなんてマクロン様の地雷踏んでるわ。



乙女ゲームのマクロン様だって、マカロンが好きだってことをずっと隠していて、好感度が80を越えると「実は・・・マカロンが好物なんだ」って照れながら教えてくれる。

その照れた顔のスチルがまあ、乙女たちには人気だったけど。



それほど、人に知られたくないことをこうもヒロインちゃんに拡散されるとは。

ご愁傷さまです。



というか、ヒロインちゃん、なにがしたいんだろう。

てっきりアレキサンドライト様目当てだと思っていたのに、マクロン様にまで近づくなんて。

しかも、マクロン様には嫌われてい様だし。



ほんと、ヒロインちゃん何がしたいんだろう。



「レコンティーニ嬢。おはよう」

「ごきげんよう。ナルニエール様。」



うん。

私に対する朝の挨拶は普通だ。

後ろで、ヒロインちゃんが私を睨んでくるけど。
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